「ハロー、ユーラシア」:世界=地球認識の転換
Posted at 21/12/22 PermaLink» Tweet
12月22日(水)曇り
今日は冬至。朝はゆっくりとやってきて、夕闇は足早にやってくる。しかし今日は不敗太陽神の復活の日、今日から日が伸びると考えて前向きな気持ちでやろう。
福嶋亮大「ハロー、ユーラシア」第三章を一通り読んだ。表題は「新しい大東亜共栄圏」、それをもたらすのはもちろん日本ではない。中国である。節構成をメモしておくと、1地理学と地政学、2エピデミック/エンデミック、3クローズド・システムの認識論、4新しい大東亜共栄圏、5、大陸における儒教の復興、61930年代の諸問題の再来という構成になっている。基本はどちらも(というかこの本全体が)「世界をどう認識するか」の問題なのだけど、3までは欧米や日本における議論の展開について、4以降は現代中国の「あたらしい世界認識」について、といえばいいだろうか。
「地理学と地政学」ではフランスの人文地理学=アナル派歴史学者のリュシアン・フェーブルの思想、昭和研究会の蠟山政道などの「協同主義」の思想とドイツの地政学者・ハウスホーファーとその日本への紹介者である飯本信之に連なる「生存圏」の思想とを対比的に描き、地理学的な世界認識論の類例として二つ挙げている。
大東亜共栄圏思想に回収されてしまった戦前の地政学や地域主義(アジア主義などだろうか)を上書きして出てきたのが梅棹忠夫の「文明の生態史観」であったというのはなるほどとは思う。軍事的観点、或いは諸民族の連帯といった政治性の強い視点が脱色・脱臭されて生態学的な観点から再提出されたのが「文明の生態史観」であったということだろう。
「エピデミック/エンデミック」で指摘されているのが病気には流行性(エピデミック)な疫病と、風土性(エンデミック)な風土病があると。そして「宗教という現象は人類の精神構造において、病気の裏返しの現象であるという見方も成り立つ」という指摘がなされていて、おそらく私が読んだ時にはへー面白いなくらいですっ飛ばした部分なのだが、現在のコロナ状況で再見すると非常に説得力を感じる一節になっているなと思った。そうなると宗教もエピデミックな宗教(世界宗教)とエンデミックな宗教(民族宗教)があるというのももちろんアナロジーではあるのだが説得力があるように思われた。
「クローズド・システムの認識論」では第一次世界大戦後の「地」をめぐる認識の新しい潮流、フェーブルの人文地理学やハウスホッファーの地政学、ウェゲナーの大陸移動説など様々な「世界」それも物理的存在としての「地球」について考える学問が台頭し、そのいずれもが地球を有限なシステム、「未踏の地が無くなった」全体として捉える捉え方が台頭したということを言っていて、またそのいずれもがそれを動かす原動力をヨーロッパの人的な力とは別のものと考える考え方が出てきた、という指摘はなるほどと思う。歴史的にも戦間期はヨーロッパ中心の世界からアメリカや日本、共産化したロシアといったヨーロッパ外の存在の影響が大きくなっていったわけで、それらの諸学がヨーロッパ中心主義へのアンチテーゼ、それも後に主流になるものでもあったというのは説得力があった。
後半の3つの節は中国の新しい思想について述べられていて、このほうが主に著者が書きたかったことだろうと思うのだが、中国という古くて新しい異世界の台頭を考えるためにその前の世界認識の枠組みを示したということなのだろう。
私自身もここまでは知っていることを違う形で整理してくれたという感じなのだが、後半の中国の思想の新思潮については全然知らなかったので、いろいろと思うことがあった。長くなったので今日はここまでにするけれども、中国は今思想的にも我々の知らなかった新しい時代に入りつつあるということを感じたということは書いておこうと思う。
昨日から弟が来ていて、家の中に他の人がいるという感じを久しぶりに味わっているが、一人で全部やるのとは違う感じというのは楽ではあるなと思う。
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