福嶋亮大「ハロー、ユーラシア」を読んでいる/中国という存在を考えることによるヨーロッパの相対化
Posted at 21/12/21 PermaLink» Tweet
12月21日(火)晴れ
昨日は早く寝たので朝は4時過ぎに目が覚めたのだが、入浴したりゴミを出したり色々していたらもう6時40分になった。この季節は朝は暗い(明日が冬至かな)ので結構遅い時間になってもまだ早いような気がしてしまい、後で慌ててしまうと言うことも時々ある。今朝は少しじっくり風呂に入りすぎたせいかちょっとほわほわしている。外は零下なので油断すると危ない。
福嶋亮大「ハロー、ユーラシア」読み始めた。地球の有限性という現代的なテーマをカントはすでに考えていた、という話は面白いなと思った。カントもそうだが18世紀の啓蒙主義の人たちはロマン的な物語性みたいなものを排して身もふたもない現実をしれっと見せるようなところがあるなと思う。逆に19世紀になるとそこに様々な物語を潤色して世界をまた近代という物語の闇に引き込んでいくような感じがした。啓蒙思想はenlightenmentフランス語ではlumiereというけれども、要は光を当てるということで、光を当てたのは「中世の闇」だったはずなのだけど、19世紀以降の自由主義と国民主義がまた再び新しい夢幻の世界を作り出した感じはする。
21世紀の現代はまた新たな啓蒙の時代なのかという感があり、地球環境問題にしろポリティカルコレクティズムにしろ「価値観をアップデート」しろという強制的な啓蒙的思想改造を強要する勢力が力を持っているのは、魔女狩りなどの時代の移行期に現れる集団的な適応障害の現れなのかもしれないとも思う。
あと、ペストと新型コロナを比較したところを読んでいて、もともと「悪魔」というのはそういう疫病を表象したものなのかもな、ということを思った。大鎌を持った人々を刈り取っていくようなペストの悪魔に比べて、新型コロナはどこにいるのかよりわかりにくい。透明な透き通った死の女神みたいな、そんな感じに表象されるのかもしれないなとかそういうことを考えたりした。
また、中国がヨーロッパのような国際社会になっていたら、という問題提起も面白いなと思う。このことは私も元々考えてはいたが、ファンタジー的な想像力の範疇から特にはみ出るようなことでもなかったから、あまり真剣に検討してはいなかったのだけど、歴史上多くの国々が併存した時代は短くはないわけで、そうなっていたら大陸と日本との関係もまた違ったものになったのではないかという問いはなるほどと思った。
米中対立について書いているところは、トランプ政権期に書かれたらしくその分古い感じはするが、米中が突っ張りあってオラオラをやっているという図式自体は変わっていない。ただソ連の共産主義がヨーロッパに起源を持つが、中国の権威主義は自国の歴史に根ざし、その点で地中海世界以来の国際社会の概念に中国は挑戦しているのではないかという指摘は私も感じるところはあるなと思った。
とりあえず第二章まで読んだのだが、最後に梅棹忠夫の「文明の生態史観」が出てくる。中国やロシアのような第二地域と日本やヨーロッパの第一地域との対比、という話である。この見方は地政学でいう海洋国家と大陸国家の対比とも重なるが、前者が文明史的な見方なのに対し後者は軍事的・国際政治的な見方で、その辺の乖離がある。現在の中国における台湾や香港と中国政府との対立を第一地域と第二地域の対立と見る、というのは面白いと思うが、まだその先は読んでないのでわからない。
次の章で日本が唱えた大東亜共栄圏と現在の中国の一帯一路構想、また文明の生態史観と地政学の違いなども論じられているようなので、また読んでから書きたいと思う。
今まで、ヨーロッパという存在を相対化するのに、アメリカとソ連という後継者でありながら似て非なる文明を持って行ってきた感じはするが、中国という全くルーツの異なる文明がようやく本格的にヨーロッパ文明との衝突を始めたことでより深く相対化した考察ができるだろうなと思うし、また日本という存在も過去と現在、未来にどのような可能性があったかということもより深く考えられるように思った。
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