護送船団方式
Posted at 21/12/01 PermaLink» Tweet
12月1日(水)雨→曇り
昨日は色々用事を片付けていたのでそんなに色々本を読んだりはできなかったのだが、「護送船団方式」という言葉についてちょっと色々調べて面白かったことを書いておく。
意外に思ったのだが、「護送船団方式」という言葉が世の中に現れたのは1979年のことらしい。この言葉は戦後大蔵省を中心にして、預金者保護のため、銀行・金融機関が潰れないように様々な規制や指導を行って守っていたことを指すけれども、日本が経済大国になりつつある中で、このようなやり方で金融機関を保護してきたことによってことなかれ主義がはびこり国際競争力が生まれず、その反省に立ってこうしたやり方を批判する言葉として「護送船団方式」という言葉が生まれたらしいということだった。
戦後は50年間銀行の倒産はなかったが、戦後最初の倒産が兵庫県の第二地方銀行、つまり無尽から転換した相互銀行が地銀化した銀行の一つ「兵庫銀行」だったのだと。これはすでにバブル崩壊により不良債権積み上がり、経営問題が表面化していたところに阪神大震災に直撃され、1995年8月に倒産(破綻処理され)した、ということのようだ。当たり前だがバブル崩壊が金融システムに与えた影響はかなり大きい。
しかしそれでは護送船団方式はどのように成立したかというと、淵源は昭和2年の金融恐慌に遡るらしい。金融恐慌は大正12年の関東大震災ののち、企業を保護するために手形を保障して「震災手形」という不良債権が出回り、その処理をめぐって起こったものだった。この金融恐慌によって問題になっていた台湾銀行は休業に陥り、東京渡辺銀行は倒産し、「華族の銀行」と言われた十五銀行が事実上倒産して、主に多くの公家華族が資産を失い、彼らの家宝が大量に市場に出回ったことは、白洲正子を読んでいて知った。
こうした金融恐慌によって銀行倒産が起こると不利を受けるのは一般の預金者であるため、それを保護するための体制が戦前戦後を通じて作られていって、それがのちに「護送船団方式」と呼ばれるものになったということのようだ。
ちなみに十五銀行は事実上倒産し、頭取の松方巌公爵(松方正義の息子)は私財を投げ出し爵位を返上したが、形式上は存続してのちに帝国銀行(帝銀事件で知られる)に受け継がれ、それが三井銀行になったと。十五銀行のマークは桜で、それが三井にも受け継がれ、太陽神戸と合併した後に「さくら銀行」になったのは、このモチーフが受け継がれたものらしいとか。
つまり「護送船団方式」は昭和二年の金融恐慌をきっかけに形成が始まり、敗戦と復興、経済大国化を経てバブル経済とバブル崩壊によって終焉を迎えたものであった、ということになるのだろう。
金融とか財政というものはわかりにくいけれども、このように歴史的な経緯を捉えると少しは具体的なイメージを持てるなと思った。
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