「このマンガがすごい!2022」の掲載辞退と「意識の高いマンガ」

Posted at 21/12/11

12月11日(土)晴れ




「このマンガがすごい!2022」が12月9日に発売された。その中ではビッグニュースというほどのことではないんだけど、せっかくオトコ編13位に選ばれた作品が掲載辞退をしているということを知った。

それが気になってググっていて行きあたったのだけれども、この企画自体を「凄いマンガというより「売りたいマンガ」を取り上げてるよね」とか「上位の作品は意識高いヤツばっかだよね」みたいなことを言って批判している人が結構いるということを知って、ちょっと考えさせられた。
言われてみれば今年のオトコ編一位の「ルックバック」とオンナ編一位の「海を走るエンドロール」は両者とも「創作とは何か」みたいなことを問う作品でもあるので、「意識高い」と言えないことはないなあとは思った。後者は読んでいないので紹介されたあらすじ的なものを読んで判断しているわけだけれども。




良い意味でも悪い意味でも、マンガというものは「たかがマンガ」なのであって、「意識高いという批判」と「マンガ」というものを結び付ける発想自体が自分にはなかったので、ああそういうふうに思うのか、と思ったりした。私より若い人たちの中で、マンガというものの「権威」感みたいなものは私が思っているよりも高いのかもしれないなとかも思った。

しかしそれでは意識の低いマンガというのはどういうものを指してるんだろうと思うとよくわからない。なんだろう、いわゆるおたく好みのものということなのかなとか。萌え絵系のエロコメディとかBL系のものなんだろうか、と思ったり。ちょっとよくわからない。

マンガというのはある意味読む上での敷居の低さがいいわけで、「意識高い」とか言われちゃうと心外だろうなあとも思う。でも自分にとって、たとえば浅野いにおさんの作品とかは確かに意識高げ仁感じて、ちょっと敬遠してたりはする。だからそういうものがあるということは分からなくはない。

「このマンガがすごい!2022」とかのランキング本というものは、単なる売れ線アンケートだけで決めてるわけではないだろうから、「どういうマンガを推して行きたいか」ということは割と明確にあるだろうと思う。最近は順位をずっと下げていた「進撃の巨人」とか「大奥」とか今年終了した作品が復活して上位になってたりするのは、おそらく顕彰の意味もあるのではないかと思うし。

そう考えてみると、ひょっとすると、13位で掲載辞退した作品も、今年亡くなった大御所の作品なんじゃないかと思えてきたりした。今年亡くなった大御所と言えばさいとうたかをさんで、その作品は「ゴルゴ13」だったりすると、「13位のゴルゴ」とか平仄が合い過ぎるわけなんだけど。


ゴルゴ13(203) (コミックス単行本)
さいとう・たかを
小学館
2021-12-06


まあ結局のところ、ググった範囲では辞退した作品が何だったのかは分からずじまいだったので妄想をたくましくしていたわけなのだけどね。

マンガは基本的に楽しめばいいものなのだけど、売る方とすれば単純にそういうわけにもいかず、「こういうものを作りたい」というのはあるだろうから、そういうある意味での「意識の高さ」はこういうランキング本には必ず反映されるだろう。そしてそれが鼻につくという人も必ずいるだろうなとも思った。

TikTokでお勧め小説を紹介してた人が有名女性書評家に批判されてやめてしまったことなどがあったけど、これからの文芸、これからのマンガがどうなっていってほしいかというのは、マンガが好きな人、小説が好きな人それぞれにあって当然なのだよね。

だからなんだかんだとご託を並べる、もとい注文をつけるのもいい、というかそういうある意味闇の広がりみたいなものも「マンガや小説を読むという趣味」の広がりが生み出した巨大な沼みたいなもので、活性化したジャンルならそういう二次災害みたいな部分を当然生み出していくわけなんだけど、沼の闇に安住するだけじゃなくて、それぞれの人が積極的に推しを推したり批評したりしていくことが、自分が読みたいマンガや小説作品がより多くつくられて行くことにもつながっていくんじゃないかなと思った。

いろいろな意味でこういうジャンルが活性化していくといいな、と思うし、おそらく文句をつけてる闇のパワーがまた新しいものを生み出していくことにもつながっていくんじゃないかなとも思った。




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