日本の現代の困難を招いた根源かもしれない大平正芳という魅力的存在
Posted at 21/11/29 PermaLink» Tweet
11月29日(月)晴れ
昨日は体力を使うことをした割にはあまりよく眠れなかったので、今日はなんだかあまり色々できなかった。支払いに行ったのと車一台タイヤ交換に行ったくらい。あとりんごの注文をしようと思ったのだが行こうと思った先が月曜休みだったことがわかり、結局出かけなかった。タイヤ交換の帰りに書店に寄って「新・信長公記」8巻を買い、ついでにイオンに行って夕食の買い物をして、帰ってきて少し休んで早めに食事をしてネットなど見ていた。
最近大平正芳という人に興味が出てきて関連の本を少しずつ読んでいる。彼が総理大臣だったのは昭和53年から55年まで、私が高一の冬から高三の初夏までだったので、私が高校時代の総理大臣という感じだ。
彼は一般消費税の導入を図って総選挙で敗北し、福田赳夫との40日抗争やハプニング解散での急死など、どちらかというと政局がらみで記憶していた人なのだが、大型消費税を導入しようとしたという意味で現代の大型間接税に依存した財政構造や行政改革や産業構造の転換など、現代の困難をもたらしたネオリベラリズム的な様々な政策の先駆者という面がある。
一方で巨大な財政出動の「日本列島改造論」で土地高騰や狂乱物価をもたらした田中角栄の「盟友」であり、官主導の高度経済成長路線の典型である「所得倍増計画」の池田勇人が創設した「宏池会」の後継者でもあるわけで、この路線は宮澤喜一の「資産倍増計画」や岸田文雄の「新自由主義からの脱却」へと引き継がれてもいる。
一方で田園都市構想などの都市計画も提唱し、また福田赳夫の全方位外交・人命尊重外交(ダッカ事件の「命は地球より重い」が典型)から対米重視政策(モスクワ五輪ボイコットなど)に転換し、(これはアメリカが人権外交のカーター政権から新保守主義のレーガン政権に交代したということも大きいだろう)一方で中国を訪問して対中親密化を図り、それでいて靖国神社には参拝して「A級戦犯あるいは大東亜戦争というものに対する審判は歴史がいたすであろう」と発言したことなどが記憶に残っている。
こうした知的な側面、現実主義的な側面を持つ一方で、熾烈な権力闘争においては強引なまでに権力にこだわり、自民党を破りかねないほどのところまで行って福田との関係を修復不可能なところまで悪化させ、ついには自分自身が病に倒れて亡くなってしまうというくらいに不器用なまでに権力に執着したところがとても奇異な印象を持っていた。
当時の高校生としては「政治家の権力闘争、ヤダヤダ」くらいの印象しかなかったのだが、今となってはなぜそのような行動を取ったのか色々と関心はある。こうして書いてみても巨大なブラックボックスのような人で、個人的に知遇を得た人から聞いた話では、うちわの研究会などではあの有名な「あー、うー」というようなセリフは一言も言わなかったそうで、実にクレバーなよく切れる人だったらしい。
明治43年生まれというのは私の祖母の2歳上なのだが、大正生まれの田中・中曽根を除けば当時の派閥の領袖は皆明治生まれで、戦前からすでにキャリアを持っていた人たちだった。まだ教養というものが生きている時代の人なので、良くも悪くも人間の幅が広かったということなのだろう。
大平という人を研究することは恐らくは現代の失敗の理由を考察する上で大事なことなのだが、人間的な魅力がある人が政治家として日本に貢献するとは限らないのはなかなか如何ともし難い。戦前も城山三郎の「男子の本懐」に取り上げられた魅力的な濱口雄幸と井上準之助が金解禁政策を断行して戦争の時代の扉を開いた昭和恐慌をもたらしたことなども想起される。
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