日本を再生するためには(1)

Posted at 21/11/28

11月28日(日)

少しはものを考える余裕が出てきた感じがあり、とはいえ他にも片付けることがたくさんある中でものも考えていかないと何もやれることがなくなるなというのがあってそうしている面もあるし、また「新自由主義を終わらせる」と宣言して政権を取った岸田内閣の方向性がどうも心許ないということもあって、日本の近代史、少なくとも戦後以来の政治や経済を少し振り返って見たほうがいいなという感じがあるからということはあるのだろうと思うが、ちょっとその辺のことについて考えたことをメモ的に書いてみたい。

自分が学生時代には、「ルポ・ヨーロッパNow」みたいな感じで「世界はどうなっているか」のような本がよく読まれていた。私などもそのような視点から世界に興味があり、「世界」を知りたいと思っていた。

今考えてみると、そのような「世界を知る」というようなことも、日本は日本としてそれなりにうまく行っているという前提があって初めてそれでは世界は、というような見方で見られたのだと思う。

しかし、現代はそうではなくなってきている。日本は根本的にうまく行っていない、と感じている人は多いだろう。そのような現代においては、そのような視点から「世界を知る」という余裕はなくなってきている。

欧米では、という視点も余裕がある時にはプラスアルファとしてこうしていけばより良くなるかも、と思えたが、現代ではそういう「文化・制度輸入業」の人たちの詐欺案件ではないかという警戒心がより強くなってきている。彼らの「欧米では」「北欧では」は、その社会自体が抱える問題の深刻さは無視されていることが多く、良い面だけを伝えて日本社会を変えようとしているところが多く、改革を迫ってより会社を窮地に追い込む悪徳コンサルタントのように感じられるところが多い。

「世界のどこかにうまく行っているところがあり、日本もそれを真似すればうまくいく」というのはリベラル派に共通した考え方だと思うし、欧米の学問を日本に輸入する人文系の大学業界もそうした一般の無意識的な考え方に支えられて営業が可能だった面がある。

だが、「どこかにうまく行っている先例があり、それを導入すれば日本でもうまくいく」というようなことは現在のような経済が収縮した局面では難しいだろう。そんな根拠の薄弱なことを広く支持を集めることは難しいし、それを試行錯誤しながら試しているうちに、世界の潮流はまた変化してしまい、また新しい文化社会コンサルが「〇〇では」と新しい提案をし、そうやっているうちに日本は疲弊していってしまうだけではないかと思う。

それよりは日本がなぜ発展できたのかということを、少なくとも戦後、あるいは明治維新、古くは中世にまで遡って考えて、そこから知見を拾い出すことが、日本を再生させるよすがになり得るのではないかと思う。

日本の経済が現在のようなGDP世界第3位という規模になった直接のきっかけは、1960年台の高度経済成長にあると言っていいだろう。そしてそれを支えたのは池田勇人内閣が1960年に示した「所得倍増計画」にあったと考えるのは、そう外した考え方ではないだろう。

池田内閣の所得倍増計画の要諦は、

・鉄道・港湾など社会資本の整備
・重化学工業など生産性の高い産業への労働人口の移動
・自由貿易と生産性向上による輸出競争の勝利
・文教政策に積極的に取り組み科学技術を振興
・産業構造の転換に伴う失業への手当と社会福祉の拡充

ということだったと思う。この辺りは今考えても当然のことなのだが、いわば典型的なケインジアン的な財政政策でもあるといえる。国家が主導して社会資本を整備し、労働人口を農業から国際競争力を持てる輸出産業に移動させて、その比較的安価な労働力で生産性を向上させて安価な工業製品を世界に輸出することで経済競争に勝利し、(当時はメイドインジャパンというと粗悪品の代名詞のように捉えられていた)その間に科学技術を発展させてトップレベルの製品を作り出す能力を育てるという、現代の新興工業国や中国がやっているようなことを発展途上国として世界に先駆けて実行することで日本は経済大国になっていった。

一方で雇用保険や社会福祉を充実させていくことで国民全体の生活水準を上げ、国内消費も喚起して国内総生産を向上させていくことにより、輸出産業よりもむしろサービス業の生産性が高まり、多様なサービスが提供される快適な社会に日本はなっていった。

なんか書き出したら随分スケールの大きな話になり、ちょっと出かける前に簡単に書くというような話ではなくなってきたので、これは(1)としてまた余裕のある時に続きを書こうと思う。

いろいろなことを書いてきたけど、結局自分が今一番関心があるのは「日本を再生する」ということなんだろうなと思う。国際環境も社会環境も厳しくなる中で、日本に暮らす日本人が一番暮らしやすい、生きていてよかったと思えるような状態にすることが、多分日本を再生するということなんだろうと思う。そのための基盤はやはり多くの人に十分な所得があるということだと思うし、その辺のところからまた考えていきたいと思う。

続きはまた書こうと思う。

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