與那覇潤「平成史」:リベラルから見た「平成の意識のながれ」
Posted at 21/10/21 PermaLink» Tweet
毎朝起きた時にiPhoneのアプリで気温を見るのだが、今朝は4.3度でこれはかなり寒いなと思った。昨日は夜の時点ですでに10度を下回っていたからストーブをつけたのだが、このところめっきり毎朝毎晩ストーブをつけるのが当たり前になってきている。時間と気力とやる気がある時は外の草刈りをしたりしているのだが、草もめっきり勢いがなくなり、一度刈ったらもうあまり生えてこなくなっているのでやりがいはある感じはする。
與那覇潤「平成史」を読んでいるのだが、ようやく東日本大震災のところまできた。平成23年に起こったこの大災害は自然災害が多かった平成という時代の中でも間違いなく最大のものであるし、第二次世界大戦後に絞っても最大のものだったと言えるだろう。平成7年の阪神大震災も甚大な被害があって災害はすぐそこにあるとまざまざと感じさせられたものだけど、東日本大震災はその規模といい福島第一原発の事故を伴ったことといい現在に至るまで日本の政治・社会・経済に大きな影響を与え続けている。
読んでいると震災当時の有り様がまざまざと蘇ってくる部分があるのだけど、反原発デモの多発やTwitterやFacebookのいい意味でも悪い意味でもの存在感の大きさなどは記憶に新しいが、民主党政権内でのゴタゴタや当事者能力の不足のようなところはもちろん感じてはいたけれども、これを読んで初めて具体的にわかったようなところはかなりある。
平成という時代は昭和の頃に比べて自分自身が忙しくて社会や政治、あるいは流行のトレンドの有様に十分に気を配れない時期が多くて、今こういう本を読んでみてそうだったのかなと思うことが結構多く、その他の「平成史」を語る本も読んでみてもっと立体的に把握した方がいいところはありそうだと思った。
それにしても、もちろん昭和も問題は多かったけれども、平成はその比ではなかったなと思う。昭和の戦後が44年間、自分が生まれてからで27年間あって、平成が30年間なので自分の人生の中でもすでに平成の方が比率が高いのだが、昭和の戦後がなんだかんだいって明るかったのは基本的に経済成長の時代だったからだなと思う。平成はバブルの熱狂で始まり、その崩壊とその後の不況の深刻化から結局最後まで抜け出せなかった。阪神大震災の時にはまだ復興には十分可能な余力があったと思うけれども、東日本大震災からの復興はまだ途上だろう。その間にも豪雨災害など、日本中で災害が繰り返された。アベノミクスで少しは明るい兆しが見えたけれども、消費税増税後は格差の拡大がさらに深刻化するとともに「リベラルの自己責任主義化」、つまり「実質的なネオリベラリズム化」という事態が起こって社会の分裂自体が余計に進んでいる感じがする。
「平成史」が私が少し読んでみた他の本とは違う特徴があるのは、「思想史」「論壇史」という補助線が生きていて、そこから社会や政治を参照することでいわば「平成の意識のながれ」みたいなものが見えてくるところだろう。もちろんそれは與那覇さんからみた「意識のながれ」ではあるわけだけど、だからこそその記述に疑問をもったりハッとさせられたり調べてみようと思ったりさまざまに自分の思考活動自体を活性化させてくれるところがあるわけで、そういう意味でもこの本はよく書けていると思うしありがたい作品だなと思う。
與那覇さんのこの本は私などから見れば左に偏りすぎだとは思うが、それだけに「リベラルの集合的無意識の客観的自画像」みたいなところがあって、リベラルの上質な部分がその歴史の事態にどのように感じ、どのように向き合い、どのように対処してきたのかが見える部分があるなと思う。だから保守の人にもこういう平成史を書いてもらってその立場から見える平成を描き出してもらうとより参考になるなとは思うが、かなり大きな仕事であることは間違い無いなと思う。
昨日の記事では選挙のことなど時事的なことを取り上げたら少し書く感覚が変わってしまったところがあってなかなか文章を書く調子を整えるのは山あり谷ありなのだが、なんとかしっかり地に足のついた叙述を取り戻し、書いていきたいと思っている。
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