ウィルスについて読んでいる:2

Posted at 21/08/05

「京大おどろきのウィルス学講義」読んでいる。第3章「そもそも「ウィルス」とは何?」までなんとか読了した。ここまで読んで、ウィルスというものがどういうものか、少しはわかってきた感じがした。
専門外の勉強というのはどうしてもなかなかきっかけがないとできないけれど、東日本大震災の時は原子力発電所について結構勉強してみたのだが、結局あまりよくわからない感じだった。最低限のことは自分ではわかったつもりだけど、でも実際にどうなのかはよくわからない。

今回は、この本の第3章を、わからないところを時々ググったりしながら、また下のサイトと照らし合わせながら読んで、自分なりには結構理解した感じがする。一番よくわかったのは、自分がいかにウィルスについて知らなかったかということだ。そういう素人に対して、第3章の宮沢さんの説明はわかりやすく、説明も手際がいいなと思った。


ただ、思ったのは、ウィルスが動物から人間に感染したり、それが変異して病原性をもったりすることは取り立てて珍しいことではないし、ウィルス学的には全く新しい未知のウィルスとはいえないから取り立てて騒ぐには値しないという主張は、ちょっとどうかなと思った。これは以前から宮沢さんの主張に対しては感じていたのだけど、ウィルスに対してはきちんとその性質を理解して対処すればいい、というのはその通りなのだけど、そうしたら感染は絶対防げるというのは違う、というか「そういうことをしない人たち」というのが必ず一定数はいるし、注意はしてもしきれない人、また高齢者や子供などそういうことをやろうとしてもできない人はいるのだから、注意すればいいから騒がなくていい、ということにはならない。

これはどんなことでもそうだが人間は完全ということはないのだから、その不完全な行動をする人間というものの感染のリスクをいかに減らすかが大事なわけで、その辺りはウィルス学というよりも人間行動全般を前提とした感染症学の提言の方が現実的には有効になるのは当然だろう。

知ったことをとりあえず列挙しておく。

ウィルスには7種類あると。一本鎖DNAウィルス、二本鎖DNAウィルス、二本鎖RNAウィルス、一本鎖RNAプラス鎖ウィルス(コロナウィルスはここに属する)、一本鎖RNAマイナス鎖ウィルス、一本鎖RNAプラス鎖逆転写ウィルス(レトロウィルス)、二本鎖DNA逆転写ウィルス。

当然ながら、生物の細胞にあるDNAは二本鎖であり、それが転写されてできるRNA(リボゾームに情報を伝えるメッセンジャーRNAなど:ファイザーなどのコロナワクチンはこのmRNAの性質を利用している)は一本鎖なのだが、ウィルスの世界はDNAが一本鎖だったりRNAが二本鎖だったり、自分が知っている生物学の知識と全く異なることが多くてすごい世界だなと思った。

新型コロナウィルスは宿主細胞が持っているACE2という受容体(タンパク質)を手掛かりに吸着し、細胞内に進出する。細胞内ではタンパク質を合成するリボゾームに侵入し、自分が持っているRNAの情報でタンパク質を合成するわけだが、そのタンパク質の中にはRNA依存性RNAポリメラーゼというウィルスRNAを合成する酵素が含まれていて、この酵素が大量のRNAを複製する。それだけでなくウィルスを構成するスパイクや外郭のタンパク質も合成され、それが組み立てられて新しいウィルスが大量に生まれ、外に排出されるという工程を辿る。

この工程の中で細胞に侵入したウィルスはRNAだけになり、ウイルスが消滅してしまうように見える時期があり、これを暗黒期というが、それは症状から言えば潜伏期間に当たり、大量のウィルスが排出されて初めて再び検出されるようになる、という過程を辿る。

つまり作られた新しいウィルスは全て人間の細胞内の物質を利用して作られたものであり、それがウィルスのRNAつまり人間の細胞にとっては偽の設計図によって作成されているということになる。

また、リケッチアやクラミジアなどの細菌と同じような症状を起こすウィルスがいるが、途中で暗黒期があるかどうかで細菌なのかウィルスなのかは見分けることができるのだという。

量的に地球上にどれくらいのウィルスが存在するかの例として挙げられていたのが、炭素の量で見ると、人類全体よりもウィルス全体の方が多くなるのだと。一個一個のウィルスは電子顕微鏡で見ないと見えない大きさだが、総量で言えばそのくらいになると。深海ではウィルスの量は少ないが、浜辺などで採集した海水の中には海水1mlに約1億個のウィルスがいるのだという。海で泳ぐことで、かなり大量のウィルス飲んでることはよくわかる。

逆にいえばそういうウィルスは基本的に人間に感染はしていないようだし、しかしウィルスは生物に感染しなければ増殖できないのだから恐らくは感染の対象となる生物がどのウィルスにも存在するのだと思われるが、そんなに簡単に採集できるウィルスでも、そのほとんどはまだ同定もされていないのだそうで、そういう意味ではウィルス学というのはめちゃくちゃ未知の領域が広いなと思った。

ウィルスの形状もまちまちだが、コロナウィルスはエンベロープという殻を持っていて、これはアルコールにより分解されると。理由はわからないが、100%のエタノールより70%のものの方が有効なのだそうだ。

分類学的にいうと、新型コロナウィルスの正式名称はSARS-CoV-2、SARSコロナウィルスの亜種。コロナウィルス科のオルソコロナウィルス亜科のベータコロナウィルス属。哺乳類に感染するウィルスとしては最大級のRNA配列を持っていて、3万個の塩基が並んでいると。ちなみにHIVウィルスは9千個。

新型コロナのRNAにはタンパク質がいくつもコードされていると。これがどういう働きをするのかはまだ解明されていないと。

ちなみに人間のDNAの塩基対の総数は60億個とのこと。減数分裂するから精子が30億個、卵子が30億個持ってて、新しい受精卵ではまた60億個の塩基対を持つと。

もちろん人間に比べればウィルスははるかに簡単な構造をもつ存在なわけだけど、その中ではコロナウィルスはかなり複雑な構造をもつものだということのようだ。

生物に侵入する際は細胞膜から入るわけだけど、植物は細胞膜だけでなく硬い細胞壁を持っているので普通は侵入できないのだが、植物は細胞壁を持っているので普通はウィルスに感染しないが、傷ができたり昆虫などの媒介生物がいる場合に感染するということのようだ。

SARSコロナウィルスは非常に毒性が強かったので宿主(つまり患者)の死とともにこの世から消え去ったが、新型コロナはそれほどではないので存在し続ける可能性が強いと。

カンボジアの死亡者数はトータルで1400人あまり。日本の死亡者数はトータルで15000人あまり。カンボジアの人口は1600万人ほどだから、死亡率はほぼ同じくらいか。カンボジアでは消化器系への感染になっているのではないかという説。

それから驚いたことなのだが、コロナウィルスの変異は少数のアミノ酸が組み替えられるだけの想像できる変異もあるが、類似した複数のウィルスの同時感染によって、1万個単位で塩基配列が組み変わってしまい全く新しいウィルス種が生まれる「リコンビネーション」という現象があるのだという。前者でできた種類がいわゆる「変異株」で、後者が「SARSウィルスから新型コロナへの変化」ということのようだ。

SARSウィルスは人間のウィルスとしては根絶したが、元の宿主であるコウモリで絶滅したかはわからないわけで、こうしたりコンビネーションも人間の体で起こるとは限らず、他の宿主で起こっていたとしたら調べようがない部分もあるわけで、こうした新たな病原性ウィルスがいつどのように生まれてくるかは全然予想もつかないというのが現状のようだ。

いろいろ書いたけれども、この内容は主に「京大おどろきのウィルス学講義」と上記の城西国際大学のサイトを読んで自分なりに理解したことと、そのほかググって出てきた情報をもとに書いているので、出典がもうわからないものもいくつかある。

まあ、素人がそうやって書いた文章であるということを前提にして読んでいただければありがたい。

それにしても、本当に世の中には知らないことが多いなと改めて思っている。


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