「MMT=現代貨幣理論」と経済学者の「部族ごっこ」
Posted at 21/06/28 PermaLink» Tweet
4時ごろ目が覚めて、いろいろ考え事をしたり入浴したりしていたが、車で出かけてセブンでジャンプとヤンマガとスピリッツとコーヒーを買い、街の中を運転していたらだいぶ気持ちが落ち着いてきた。いろいろとうまくやろうとして頑張っていたけれども、それはなかなか必ずしもいい方の目に出なかったりして、なかなか難しいなと思う。今後どういうことが起こるのかがちゃんと予想できれば対策も立てられるが、そういう予想というのをしても仕方ないなと思っていた面があり、多少は予想も考えに入れてやるべきことを考えて行った方がいいかもしれないとも思ったり。大局を考えるのも余裕というものは必要だなと思ったり。
現在の気温は17度。そんなに寒いということもないはずだが、何となく薄寒くて少しストーブを入れ、膝掛けをしてFMの「音楽の泉」モーツァルトを聴きながら買いている。グルダが1980年に録音したソナチネがマスターテープが行方不明になり、それを録音した録音技師が個人的にダビングしてあったカセットテープがその技師の死後発見されて、今我々が聞くことができるようになった、という話が面白かった。
昨日から井上智洋「MMT 現代貨幣理論とは何か」(講談社選書メチエ、2019)を読んでいるが、今まで類書で読んだのとは違うというか、経済学者が書いたものはやはりそうでない人の解説書とは視点とか説明の原理が違うなと改めて思っている。
MMTの理論的なイメージは漠然としかつかめていなかったのだけど、貨幣の価値に関して「金属主義」という考えがあり、それが20世紀初頭のクナップの「貨幣国定説」によって「国家による法的な強制力が貨幣の価値を担保している」という考えが起こり、MMTはその「貨幣国定説」の一種である「租税貨幣論」、貨幣が価値を持つのはそれを使って税を納めることができるからだ、という理論に基づいていると。これは以前も読んだけれども、その例として「モズラーの名刺の逸話」が取り上げられていて、これはなるほどと思った。
租税が貨幣価値を生むというのはそう目新しい議論ではなくて、MMTが新しいのは「租税の目的は財源の確保ではなく貨幣価値の保証にある」という主張なのだそうで、確かにこれは従来言われてきた常識的な考えからはかなり離れている。まだその辺のところはしっかり理解できているという感じはしないのだが、この辺は歴史学的に見ても労働地代・生産物地代から貨幣地代への変革、日本で言えば地租改正と幣制改革、松方財政から銀(金)本位制・日本銀行の創設に至る改革と関わってくるし、この辺りは高利貸し資本による土地の集積や寄生地主性の成立など社会関係としては見てきたけれども貨幣制度という観点からも見直してみると興味深いなとは思った。
インフレやデフレ、特にハイパーインフレの問題などもよく議論されるけれども、貨幣理論というものも少し読んでみてもよく分からず投げ出してきたことが多かったので、この機になるべく掘り下げて考えてみたいと思った。
また、経済学者の学派の系譜を簡単に素描してあって、現代の主流派経済学は新古典派とニューケインジアンであり、非主流派がポストケインジアンとマルクス経済学だ、というのはへえっと思った。簡単に言えばニューケインジアンとポストケインジアンがそんなに激しく対立しているということを知らなかったということなのだが、MMTを含むポストケインジアンが注目されると主流派が全力で潰しにくる、というのはやれやれと思う。
以前オフ会で経済学者の方々と話をしたことがあったのだが、経済学者はなぜあんなに罵倒し合うのかと聞いた時に、キョトンとしてそういうものじゃないですかと言われたのがちょっとびっくりしたことがあった。それは他の分野から見れば異常な感じがするが、政治学など他の政策科学もそういうところがあるから、より権力に近いところにいる学問というのはそのようになりがちなのかもしれない。著者の井上氏はそういう様子を「部族ごっこ」と呼んで批判しているというが、井上さんのいうように党派性にこだわるのは学者としてあるべき姿ではなく、何が真実であるのかを徹底して考え抜くべきだ、というのはその通りだと思う。
ネットで見ていても、経済学クラスタみたいな人たちは他派の主張を罵倒しあっていて、そういうところが他の人たちが経済学を敬遠する一つの理由になっていたり、逆に好戦的な人たちが経済学の議論に参入しようとしたりしているのをみると、やはりちょっとなんとかしてもらえないかという気はする。
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