政府は日本をどういう国にしていきたいのか
Posted at 21/05/26 PermaLink» Tweet
政府は日本をどういう国にしていきたいのか
今朝の地元紙を読んでいたら六月に策定する政府の「経済財政運営の基本方針」(骨太の方針とかいうアレね、小泉内閣からのこの言い方はどうもあんまり好きじゃないけど)の骨子案が示された、という記事があった。
記事を読んでいるだけなのでその範囲でしか想像はできないけど、「経済成長の原動力」として「地方創生」「子育て支援」「グリーン社会実現」「デジタル化加速」の四つがあげられていた。原動力と聞いてお、そんなものがあるのかと思ったが、内容を読んで本気で言ってんのかと思った。
「環境政策」と「デジタル化」は菅政権の基本的なウリだと思うが、それで経済成長ができるというのは考え方がよくわからない。
「地方創生」のためには最低賃金を全国一律に1000円に引き上げ、「都市部に偏在する人材」を地方に呼び込むのだという。賃上げが必要だということは当然なのだが、それを全国一律にするのはまさに絵に描いた餅だろう。地方に人がいないのは給料が低いからというよりは地方に仕事がないからであって、最低賃金を引き上げるだけなら韓国のように混乱を招くだけのように思われる。実習生制度を改革して最低賃金に揃えなければ、制度を悪用して低賃金で働かせる事業者が増えるだけのような気がする。この辺りは当然定住外国人問題にもつながるわけで、「差別的な取り扱い」が無くならなければ治安に悪影響が出るのは当然なのだが、その辺りの配慮はあるのだろうか。何よりも、地方に「仕事がある」状態を再び作り出すことの方が先決であって、その辺りもどう考えられているのかよくわからない。
「子育て支援」の目玉はどうも「こども庁」の創設のようだ。今までの議論を聞いていると厚生労働省の保育に関する業務や文部科学省の義務教育までの業務を召し上げる方向になっているようだけど、「教育」という観点から「子育て」という観点に移行させ、しかも義務教育の内容を削るような発言も出ていたりするから「子ども」は育つかもしれないが「人間」が育てられていくのかどうかどうにもよくわからない。「教育」を辞めさせようとしているのかというような気持ち悪さも感じる。文部省と厚労省の就学前児童をめぐる対立を利用して内閣府が業務を吸収する漁夫の利を得ることを目指している感もある。気持ちが悪い。
環境政策では「グリーン社会の実現」を目指すために民間投資やイノベーションの喚起を明示するとあるが、グリーン社会というものがまずよくわからないのだけど太陽電池パネルの大量設置による環境破壊やEVや水素車への投資を促進する税制や補助金制度を設けるということだろうか。お金の話が初めて出てきたがそこにお金をかけることでさらに他の分野が削られていくのではないかという気がしてしまう。
デジタル政府の確立というのはまあやるのは構わないし、業務の電子化は進めていくべきだと思うが結局は省庁の独立性を緩めて制度設計自体を上から指示できるような体制ができないとこれも推進は難しいだろうなと思う。個人の政治力だけではなく制度的に省庁に抑えが効く機構を作らないといけないと思うが、そこが勘違いした特権意識の強いエリートに握られたりすると余計おかしなことになるのでそこも難しいだろうなと思う。
とりあえず、読んでいる限りでは期待の持てる部分は全くないのだが、「上に政策あれば下に対策あり」という言葉もあり、これを読んでバカバカしいなと思いつつそれぞれの作戦を立てる人たちも多いんだろうなと思う。
この経済財政運営をの基本方針が出てくる前に財務省の財政制度等審議会の「建議」が出ているが、ここでは介護制度や医療制度、つまりは福祉制度全般に合理化と利用者負担を求めて社会福祉費を削減(とはいえ高齢化の進む中で社会保障費の膨張を抑えるという程度にはなるだろうが)し、財政規律を厳しくして財政健全化を、つまりは緊縮財政をより強めていこうという建議の内容になっているようだ。これは財務省設置法に「財政健全化」が明記されている以上その目的に沿って建議がなされているのだろうけど、しかしこのような未曾有のコロナ不況の中で財政健全化を求めるのは昭和5年の世界恐慌の中での金解禁に代表される緊縮政策で悲惨な昭和恐慌を招いた前例がどこまで考慮されているのかと思う。
昭和5年も東北の村で「娘身売りの際はご相談ください」という看板が村役場に出たとかの悲惨な状況の中で財閥は金の取引で大儲けをしたということで国民の反感を買い、軍部の勢力伸張を招いたわけだが、今回も自助努力のみを強調するビジネスエリートのネオリベ右翼や労働条件よりもポリティカルコレクトネスや環境政策に熱心なバラモン左翼は生活に困難な層や経営に苦しんでいる中小企業などに道場がなく、むしろ中小企業は潰せという方向に、また労働者は低賃金で使い倒せという方向に行っているわけで、出口が見えない状況に苦しんでいる人は多いだろう。
こういう中では、結局「頭を使ったやつが勝ち」という風潮になり、またそれを利用して信者を集めるオンラインサロンビジネスや実現可能性が低い夢のような提案をして自治体に救うインチキコンサルなど怪しい虚業が流行するし、取り上げようとばかりする政府が渋々金を出す目玉政策に人が群がるわけで、その中には使い道に困って新型コロナ対策で配布された「地方創生臨時交付金」で巨大なイカのモニュメントを作ったりする例も出てきたりするわけだ。
自治体にばら撒く的な発想はおそらく本来は悪くないのだが使い道や使い方(年度を跨いで使えないなど)が変に規制されているために余計な買い物をすることになったり、そういう変な使い方の例が出てくるのはある程度はバグとしては仕方ないところはあると思う。製作費を支払うことによる経済効果もないわけではないのだから、意味がなくはない。
しかし、結局は政府が本当に必要なお金を各所に使わず緊縮ばかりを進め、妙な「選択と集中」により本当には必要のないところにお金が配られたりするからそこに人が群がるような現象が起きているだけで、人々の本業に活力が与えられるようなお金の使い方をもっとしていく、そしてそれをちゃんと国民に伝えていくべきだろうと思う。
なんだかんだ言ってもまだ日本は持ち堪えている、いややばいところも相当あるが目立った暴動や内戦や数千万人の人権弾圧や議事堂襲撃や過激派のテロなどは起こってないわけだからそういう国々に比べればマシなのだが、それは今までの貯金というか、根幹の部分がまだ回っているからだと思えるけれども、今までのシステムの中で悪いところを改善していくというより今まで支えてきた部分を削り取っていくような「改革」が多いような感じがするのは如何ともし難い。
以上、政府の「経済財政運営の基本方針」骨子案を記事で読んだ感想でした。
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