いつまでどんなふうに生きるのか/自分の独自性とは何だろう
Posted at 21/05/06 PermaLink» Tweet
昨日は連休の終わりの日で、そして子供の日、二十四節気でいえば立夏。夏が来た。当地では朝夕はまだ寒いことが多いが、ただはっきりと日が長くなっていて、特に朝は4時にはもう明るくなってきているから、自然と起きるのも早くなっている。若い頃ほど深くまで眠れないということもあるのだが、自分の体調などを考えてその辺りもうまくやれたらいいなと思う。
少し考えていたのは、いろいろやっているとどうも自分に自信がないというか不安な感じがすることが多く、それはどういうことなのかなと考えていたのだが、私はどちらかというとアバウトなところが大きいので、だいたいこんな感じでOKみたいなことが今になるとそういうところが痩せてきたのかなという感じがする。
言葉を変えていえば、若い頃には「そのうちなんとかなる」という根拠のない自信を持っていて、そのままどんどん生きていた。細かいところまでしっかり気をつけて建ててない家が数十年経って雨漏りをしてくるような、そんな感じなのかなという気もする。「そのうちなんとかなる」みたいな楽観的な「感じ」も、歳をとってくると「あとは衰えていくばかり」というまた根拠のない悲観的な不安に苛まれる感じになるということはあるのかなあと思ったり。
私は昔から本当に自分のことばかり、というか自分の内面ばかり考えて変なところで暗闘を繰り広げる、みたいなところが多かったのだが、最近は忙しくて自分の自我とか身体とかそういうものを相手にしている暇がないうちに、自分というものがよく見えなくなってきてしまった、みたいな感じがある。逆にいうと考えないでも動ける部分が大きくなってきたという感じがして、それは悪いことではないとも思うが、多分それだけでもダメなんだと思う。自分の状態が自分なりに受け止められていないと、すごく自分を見失った感じがする。
それではこのまま衰えて死んでいくのかな、みたいなことを考えてみると、どうもそう簡単に死ぬ感じもしない。まだ自分の中に燃料というかまだ使い切ってないものは相当残っている感じはする。
そういえば、若い頃からメンタルがやばいなと思った時にはそういうことを考えていたなあと思う。まあ本当にすぐ思考が行き詰まりに達しやすかったので、いろいろとやばい感じになったりはしたが、その時一つだけ決めたのが「自分からは死なない」ということだった。
これもまあ、そんなに深刻に考えたというよりは、若くて死ぬということは本当に痛くて苦しいことだろうなという感じがして、歳をとって100歳超えたりすると、本当に自然な感じで亡くなるのは何故なんだろうと思っていたのだけど、つまりは人間にはエネルギーみたいなものがあって、それを使い切らずに死ぬとそのエネルギーが苦しむために使われるが、使い切ってからだともう苦しむエネルギーがないから自然に死ぬ、みたいなイメージを持っていた。
そういう意味で、自分はまだエネルギーを使い切ってないから、使い切るまでは生きよう、と考えるようになってからは割とああまだ死ぬには早いな、みたいな感じで乗り切ってきたことは多かったなと思う。
最近はそういう自分にとっての基本的なこと、みたいなものをあまり考えなくなっていて、時々そういうところに戻らないと、自分の状態が掴みにくくなり、謎の不調みたいなことが起こるのだが、なるべく基本に帰って自分の状態を把握しようと思っている。なかなかそのモードになりにくいのもちょっと良くないなとも思うのだが。
まあ自分の生命観というのはそんな感じなのだが、人としてはまだエネルギーは余っているというか残っているので、そういうものはせいぜい世の中の役に立つように、まあ自分の身も保っていかなければならないが、使えればいいなと思う。まあ物理的な身体のメンテをちゃんとやってかないといけないなということが割と大きい。体の精神のメンテをしつつエネルギーを上手に使い切れるように、死ぬまで上手く生きていきたいとは思う。
多分「小林秀雄の政治学」を読んでいたせいというかおかげなのだけど、自分が感じていることの頼元の部分というか中心にある部分のことについて思い起こせた感じがする。そういう意味で、小林秀雄という人の文章は、自分にとって役に立つ補助線を引いてくれるなあという感じはする。最後は結局自分の世界になってしまうけど、小林の文章は自分にとってはそれに近い懐かしい感じがあるのかもしれないなと思う。
読んでいて気づいたしまた不思議だなとも思ったのは、小林秀雄という人の文章をちゃんと面白いと思って読み始めたのはおそらく30代後半のことで、まずは白洲正子が面白いと思ったことから関連する人のものを読み始めて行き着いた、ということだ。
私の父はとても本をたくさん読んでいる人で、ただ理系の人だったから社会科学や自然科学に関する本はたくさんあっても文学についてはあまり持ってなく、特に小林秀雄やその系統の人のものは家に全然なかった。ベートーヴェンを聞いたり文学の本もないことはなかったが、それは教養として聞いておかないといけないみたいな感じがあり、本当に自分にとってあるいは社会にとって役に立つ、というものとしては捉えていなかった感じがある。マルクスや知的方法論、コミューン論などの方が父にとってリアリティが感じられるものだったのだなと思うが、そういうものは自分なりに子供の頃から父の本棚のものを読んで吸収していた。ある時期から渡部昇一とか小室直樹が増えたが、だからそういうものも結構読んではいる。しかし小林秀雄はなかった。
今思うと時代的には小林秀雄を読んでいても不思議はない世代なのにどうしてなのかなとは思うが、やはり趣味嗜好がそういう方向ではなかったということなんだなと思う。「小林秀雄の政治学」を読んでいて丸山眞男が小林を攻撃し、また小林も明示はしないが丸山に反論しているのを読んでいると、要は父は丸山の方向に未来の可能性を見ていたのだろうなと思う。全く同じではないにしても。
自分はそういうものを吸収しつつも、やはりそれだけでは足りないものを感じていて、感受性というかアート的なものの方に中学生の頃から惹かれていたこともあり、そういう意味では父とは違う方向に行くのだろうなという感じはあった。しかしロールモデルとしては結果的には結構父の進路を踏襲した面があり、高校の教師をしたり年長になってからも子供に教える仕事をしたりしていたりはする。
この本を読んでいると、少なくとも父と比較した時にこの辺に自分の独自性はあるんだなという気はする。その違い、つまり自分の独自性というものをアートの方向に求めたり、新しい方向に求めたり、イデオロギー的に違うものを求めたりというのが今までの試行錯誤ではあるのだけど、小林とこの小林論を読んでいると腑に落ちるところが多く、改めて小林をじっくりと読み直すことが自分の方向性をより確かなものにしていくのではないかと思えてきている。
何だかんだ言っても数十年生きてきているので、その間に歩いてきた道をもう一度見直しつつ、この先の道もちょっと考えておこうと思ったりした。
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