みんなが幸せであるということ
Posted at 21/04/06 PermaLink» Tweet
しばらくブログを書けなかったので、今日はまあ雑観的というか、あまり論理的でないことを書いてみようと思う。
フェミニズムやら障害者やら様々な話がTwitterのタイムライン上を賑わせて、今日もまた関係者の謝罪があったりメジャーリーグで活躍した投手が帰国したのは子供に対するいじめがあったからだという報道をみたりして、人の幸せというものを改めて考えてしまうことは多いのだけど、実際のところ何が人の幸せなのかということはわからないと言って仕舞えばそれまでだけど、とりあえず住む場所があってご飯をちゃんと食べられてきちんと眠れて交流できるコミュニティがある、くらいのことは最低限あった方がいいというくらいのことは幸せの条件としては言えると思う。
何主義とかそれ主義とかいろいろ主義はあるけど、じゃあなんでそれ主義なのか?と問うと必ずしも「人々の幸せ」がその条件ではなかったりすることもあってそれはちょっと驚いたりする。それはアダム・スミスの「神の見えざる手」という概念が割と鍵になっていて、「個人が幸福を追求することで全体が良くなる」といういわば信仰のようなものがあるからそういう考えも肯定されるんだろうなと思う。
しかし戦後の日本というものはそういう考え方で設計されては来なかったから、「優秀で勤勉な人たちが割を食っている」というこれもまた信仰のようなものが生まれて、再配分を否定する思想が正当化されるようになってきた。ネオリベラリズムはその典型だけど、「優秀な女性が割を食わない」ことを金科玉条とするフェミニズムもまた、他のポリコレ思想とともにそれを正当化する思想として機能しているのが現在の状況なんだろうと思う。
「みんなが幸せになるのが正しい」というのは割と私の中には当たり前のこととしてあって、もしみんなが幸せになるのなら共産主義だっていいのだが、共産主義ではみんなが幸せにはならないということは歴史的に証明されてしまっているわけで、だから共産主義は歴史上の大失敗だったと思うのだよな。それはもう、冷戦崩壊時点より遥か前、スターリン独裁の時点で既にダメだったことはわかっているのだが、巧みな宣伝と現体制への憎悪がそれを見る目を曇らせてきた。
ではなぜ大失敗だったかというと、つまりは理性というものを盲目的に信仰しすぎた失敗、ルソー的な設計主義的な思想がもともとダメだったからだと考えるわけで、つまりは「みんなが幸せになる」のが実現しやすいのが保守主義的な方向性なんじゃないかなあと思うわけだな。だからアメリカでは保守主義に分類される大きな政府を否定する思想は基本的に私は支持できないし、政府の役割は一定は必要だと思う。
ただこれは確認はしておきたいのだけど、共産主義体制の方が幸せという人は一定数はいるのだよね。例えば今でも中国に毛沢東時代の方が良かったという老人はたくさんいる。つまり、「全ての人を不幸にする体制」というものも原則的にはない。クメールルージュとかはほとんどそれのような気はするけど、支持者の実態がよくわからないからなんとも言えない。ミャンマー国軍が自国民を虐殺しているのも、国軍を支持する人たちがいるからだろうと思うし。
北朝鮮が崩壊して韓国に併呑されても、現在の特権階級以外でも、北朝鮮時代の方が良かったという人は多分結構出てくると思う。もちろんそれは、現在の北朝鮮やミャンマーのあり方が正しいということではない。どんな「間違った体制」でも、それなりにやっていける、ないしはそれに順応して幸せに生きられる人はいるということだ。それを非難しても仕方がない。
日本の江戸時代でも、戦後歴史学の貧農史観が強かった頃は、庶民はひどい暮らしをして搾取されていたみたいなことばかりが強調されていたけど、実際にはそこで楽しく暮らしていた、近代以後よりも幸せだったかもしれないみたいなことは、「逝きし世の面影」などで主張されていたりもする。こどもがこんなに生き生きしている国は他になかった、みたいなことを書いてる外国人とかがいたが、池で遊んだりトンボを追い回したりする子供は現在では田舎でもいなくなってきているわけで、どちらが「生き生きした顔をしている」かはどうかなと。まあ生き生きした顔をしてればいいというものでもない、という主張もあり得るけど。
白洲正子も書いていたが、戦時中のいつ死ぬかわからない時代の方が、戦後の混乱期よりも不思議な明るさがあった、というのだよな。それはそれでわかる。もちろんだからまた戦争すべきだ、とかそういうことは全然違うわけで。
話がちょっと違う方向にだいぶずれてしまったが、やはり私としては「みんなが幸せな社会」がいい。それを「一人残らず幸せにする」というのは無理だろうと思うしそこまで社会や国家がやろうとすると逆に弊害が出てくるというのも今日いろいろと出てきて入るけれども、「最大多数の最大幸福」だけではちょっと不十分な気もするし、まあその辺は政策的な技術論の問題ではあるのだろうと思う。
まあその辺になるとまたセルフヘルプと公的扶助のバランスとかいろいろ出てくるが、つまりは「みんなが幸せな社会をみんなが支える」ということなんだろう。社会を批判する前にそういう「今現在、実際に誰が何をどう支えているのか」をちゃんとみていくということが重要なことだろうと思う。権利の実現のためには現実的な裏付けが必要なのだから。
まあとりあえず今日はそんなところかな。感覚だけでなく理屈の話も結構多くなってしまったけど。
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