「僕のヒーローアカデミア」:「神の時代」「人の時代」そして「最高のヒーロー」

Posted at 21/04/03




堀越耕平「僕のヒーローアカデミア」のアニメ第5期が始まった。私は熱心な視聴者というわけではないけれども、漫画の方は割合初期から追いかけていて、またたまたまだが第1話が掲載されたジャンプを買っていて気付いた時に保存するようにしたので、今でも持っている。連載が始まったのが2014年なのでもう7年目になり、話数もジャンプ2021年17号で307話まで来ている。単行本も4月2日に最新30巻が発売された。「鬼滅の刃」など2016年組が先に終了してしまった中で、ジャンプでは1000話を超えた「OnePiece」、ここ数年休載している「HUNTERxHUNTER」に次いでの長期連載になっている。


 

その「ヒロアカ」もついに306話で「終章開幕」となっていて、この物語も終わりが近いことを告げた。「ヒロアカ」という作品については「鬼滅の刃」ほど考察はしてきていない、つまりストレートには理解してこなかったところも多いのだけど、基本はアメコミの世界をジャンプに持ち込んだ、という感じに理解していた。スーパーヒーローの「オールマイト」は主人公・緑谷出久にとっては神のような存在。それが、小さい頃からのライバル=友人である強烈な「個性=能力」を持つ爆豪勝己が襲われた時に「助けて」という顔をしていたと感じ、思わず体が動いて助けようとしたことをきっかけに、オールマイトに「後継者」に選ばれ、その力「ワンフォーオール」を継承し、オールマイトの出身校であるヒーローアカデミア=雄英高校に入学することになる。

この「ワンフォーオール」は、この「ヒーロー世界」において「悪」の根源である「ヴィラン」の最大の巨魁である「オールフォーワン」と戦うために、「オールフォーワン」の弟から発して代々受け継がれてきた能力であることが明らかにされる。これは私は今日気づいたことでおそらくネットを調べればもっと詳しくわかることなのだが、主人公デク(出久)の「ク」は9代目ということであり、8代目のオールマイトの本名は「八」木俊典、7代目は「ワンフォーオール」の後継者とされた死柄木弔の祖母・志村「菜奈」と、数字がついている。今まで名が明らかになっている後継者は他には五代目がいるが、この人物も万縄大悟郎(黒鞭の能力者)と「ゴ」の音がついているので、それは間違いないと思う。

この能力の継承に関しては継承者の肉体の一部、髪の毛などを取り込むことでなされるという設定になっていて、この設定の究極の方向は「進撃の巨人」なのだが、それはまた「進撃の巨人」について書く機会があったら書くべきことのような気がするのでまたその時に書きたいと思う。

ヒーロー社会が続く中でも悪は消えず、オールマイトは「平和の象徴」として戦い続ける。日本人にとって
「象徴」とはつまり天皇のことであり、すなわち「現人神」でもあるわけで、つまりは人間世界に現れた「神」としてオールマイトは平和を守り続けてきたわけである。

しかし、初代ワンフォーオールの兄、ということは数百年も前の人間であるオールフォーワンは「顔」を失いながらも「個性=能力」と協力者のマッドサイエンティスト(志賀丸太=その名に731石井部隊を想起させるという馬鹿げたクレームがつき、殻木球大と変更させられた)の力で生き続け、再びオールマイトと戦うことになる。この戦いでオールマイトは勝利したもののそれ以上の活動継続が困難になり、引退を表明する。「神の時代」は終わったわけである。

神が去った後のヒーロー界でナンバーワンの座に着いたのはデクの同級生の父・「エンデヴァー」だったが、エンデヴァーは卓越した力を持つが本当には絶対的な存在ではなく、オールマイトに常にコンプレックスを持っていた。つまりエンデヴァーは「神」ではなく「人」であり、その「人」であることがさまざまな悲劇、特に「家庭の悲劇」をもたらしたことが明らかになってくる。エンデヴァーがナンバーワンの時代ということは、つまりは「神の時代」が終わり、「人の時代」が始まったということを意味するわけである。

エンデヴァー=轟家の悲劇は陰惨なものなのだが、それはこの稿の主題ではないので、また書く時があったら改めて書きたいと思う。

「神の時代」はどんなに強大なヴィランが現れても、最終的にはオールマイトがなんとかしてくれる、という安心感があったのだが、「人の時代」になるとヴィランは強大化し、さまざまな悲劇が生まれてくる。特に死柄木とそのバックであるオールフォーワンは着実にその野望を実現していき、死柄木率いるヴィラン連合はヒーローアカデミアの教師たちをも巻き込む形で戦線を拡大して多くの犠牲者を出し、オールフォーワンを脱獄させ、ヒーロー社会を瀕死の重傷に、あるいはヒーローが全く市民から信頼されないという意味では崩壊状態に追いやってしまう。

その戦いの中でデクは死柄木が「オールフォーワン」の呪縛に取り込まれていて、その呪縛から逃れたがっている、「救けを求めている」顔をしていることに気づいてしまう。

「救けたい人を救いたい」というのが常にデクの原動力であったわけだが、その「想い」を歴代の継承者たちにも認められ、また戦いの最中に「ワンフォーオール」の秘密が露見したこともあり、デクはヒーローアカデミアを離れて戦うことになる。

というところが現在までの展開な訳だけれども、つまりはこの「救けたい」というデクの思いは、「神の時代」「人の時代」に続く「第3の時代」を生み出していくであろうことは十分に予想されるわけで、これが終章であるということが、これが悲劇に終わるのかハッピーエンドに終わるのかは別にして、デクが「最高のヒーローになる」物語であることはとても納得できる展開になってきた。

デクがどういうタイプの「最高のヒーロー」になるのかはこれから明らかにされるわけだけど、最終章がどれだけ続くのかはわからないが、「最高の物語」を期待したいと思う。

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