日本人の国家意識、政治的自由と市民的自由、市民的自由と庶民的自由
Posted at 21/03/16 PermaLink» Tweet
いろいろ考えているうちに、日本人の国家意識というのは世界の中でかなり特殊なんじゃないかという気がしてきた。「明治精神の構造」の植木枝盛のところを読んでいて、自由民権運動の主張のかなりの部分がナショナリズム的なものだった、というところがどう考えたらいいか、ということがうまく整理できない感じ。
このこと自体は昔からそう思ってはいたのだけど、つまり「自由」を唱えはするがその「自由」は我々現代日本人が考える自由とどこか違うという感じがするということで、それについては本文中に、「政治的自由」は重視されたが我々が自由の本義として捉えているいわゆる「市民的自由」についてはあまり重視されていない、というところに一つのポイントがあるのだな、ということはあるようだ。
「自由」というのはあまりに基本的な概念なので、その言葉の意味の微妙な違いというのはかなり大きいことだと思う。
ただ考えていてわかったのは、「日本における自由の概念は、政治的自由から始まった」ということだ。これは幕末の志士以来の伝統というか、意識が継続したということだと思う。
だから新時代の一端の若者は政治論議を戦わせるのが良いことであったのが、その「政治的自由」が「市民的自由」に広がりを見せるのが「明治文学の勃興」で、一端の学歴ある学士が「小説」を書き始め、それが政治と並ぶ、いや政治以上の価値を持つということを発見ないし認識させた坪内逍遥の「当世書生気質」やその理論書である「小説神髄」によって「政治以外の価値」ないし「政治以上の価値」が多くの学生・書生に認識され、一気に文学熱が勃興した、ということを確か三宅雪嶺が書いていて、これが明治18年(1885年)のことなので、ここで一気に「教養」や「市民的自由」に対する関心が高まることになると考えていいのだろうか。これは文明開化や欧化政策に対する反対が高まる時期とも重なり、日本主義が現れるなど、つまりは啓蒙主義・文明開化・政治的自由民権だけでない日本文化の内的な広がり・深まりの時代が訪れた、と解釈していいのかなと思う。
日本の近代の国家意識というのは天皇の存在と対外独立、つまりは幕末に「尊王攘夷」という形で実現した形が大きく影響しているのだろうなと思う。
それ以前の歴史を追いかけて国家意識を問うていくのは多分今の時点では難しいことなのだけど、やはり信仰王権としての性格を持つ天皇の存在と、世界史の中での唐初期までの避難民的な中国朝鮮からの帰化人の流入と国際交流の途絶、宋銭の流入と蒙古襲来、東アジア倭寇世界と戦国日本、大航海時代とそれからの防衛策としての鎖国、植民地獲得競争の最盛期におけるペリー来航による開国、といった対外関係の危機意識の急激な爆発が招いた攘夷思想、それはいずれも「国家というもの」に関わる意識で、日本の保守思想には「日本を守りたい」という意識が強くインストールされたように思う。
政治意識の強さは、国家と自分を一体のものとして意識する意識の仕方に繋がるし、運命共同体的な意識にも繋がり、つまりは連帯感をいかに深めるか、みたいな話にもつながって、それが庶民への「民権」の付与という形に議論が進むのが自由民権の一つの特徴なわけだが、そういう意味では現代の政治運動の一般人の参加意識の問題とかなり重なってくるものがある。
だから我々が考えるような形での自由についての考え方が生まれたのは明治20年代であり、それも最初は十分な生活資力のある学生などに限られていたわけで、イギリス的に「保守主義は自由主義である」みたいな事態にはなかなかならない。ただ個人的には市民的自由のない思想に魅力は感じられないので、その辺りのところをどう考えていくかというのは大きな問題だなと思うが、日本人は実は下のものほど勝手をやる、日本に来た外国人が日本人の女中や庭師などを雇うということを聞かずに勝手にやって困る、みたいな話は昔から多くて、「市民的自由」はなくても「庶民的自由」みたいなもの広範に存在したりしたわけで、これはおそらく江戸時代からそうだったのだと思う。
その庶民が武士的意識に目覚めていくのがやはり明治20年第以降、みたいなことを先日書いたけど、そのターニングポイントは後でもっと考えてみたいと思う。
まあ今日はアイデア帳みたいなものだが、時間も無くなったので考えて書くのもこのくらいにしておきたい。日本人の国家意識、政治的自由と市民的自由、市民的自由と庶民的自由、みたいなところが新たに考えるテーマになりそうだ。
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