リベラルと保守の対立の起源
Posted at 21/03/04 PermaLink» Tweet
「明治史研究の最前線」を読んでいて、「自由民権運動」の論点という項を読んだのだが、この項の記述も自分が理解してきた自由民権の枠組み的理解という点では確認できたというところとそういう感じだったのかというところがあったのだけど、それよりは日本のリベラル、ないしは左翼自由主義の起源ということについて考えた。以下のところはざっくばらんな構想の段階の話なので、また本を読んでいくにつれて捉え方も変わると思うのだが、大体のイメージの流れとして書いておこうと思う。
日本のリベラル思想というのは今ではどちらかというと所得の再分配というよりも少数者の権利といった「意識が高い人たち」の思想という感じになっている。田中拓道「リベラルとは何か」(中公新書、2020)では主に「所得の再分配により貧しい人たちの自由を保障する」という考え方をリベラルしているので、その辺りが現在の日本におけるイメージとずれているような気がする。
こういう「意識が高い」人たちの運動はいつ頃から始まっているのか、と考えると、一番古くは尊王攘夷運動に遡るのではないだろうか。日本の危機に際し、日本が生き残るためにどうすべきかを意識した運動が、条約勅許と神戸開港による実質的な開国、王政復古による「天皇親政」政府の樹立によって運動が終結点を見るまで続く。攘夷が開国に終わったのは諸藩等の諸勢力が政治過程の中で徐々に攘夷の不可能と開国による利益を認識し、最終的に朝廷もそれに同意したからだが、その中で多くの志士や若者も西洋の学問を学びまた留学し、福澤諭吉の「西洋事情」などの啓蒙書も幅広く流通して政治体制や価値観等も含めて伝統的なものも再検討される中で新政府も樹立・運営され、また「自由」という新しい概念も学ばれていった。
つまり、「運動」が先にあってその中で「自由」が取り上げられていった、という理解である。
それが明治7年の「民撰議院設立建白書」に始まる自由民権運動につながる。この中で「自由」というものが目指すべき目標となったのがどの段階なのかなどがまだよくわからないのだが、基本的には「自由とは民権つまり民主主義である」という理解が強かったのではないかと思われる。民主主義と切り離して自由が考えられるようになるのは、かなり後になると思われるが、「個人主義」という思想が受け入れられにくかったからなのだろうなとは思う。利己主義との違いが分かりにくいという点もあるが、この辺りは色々考えることもあって本当にメモ的に止める。
つまり、この辺りのイメージ的なこととしては、尊王攘夷運動に始まる「意識の高い運動」のなかで「自由」が発見され、それが政治運営としての議会設置運動につながり、「自由民権運動」となって、士族民権から豪農民権、また幅広い地方にも民権思想が広まる。運動は一時過激化して支持を失うが、議会開設に備えた大同団結運動や三大事件建白運動などによって再点火され、保安条例で指導者が追放されるも第1回総選挙では民党の圧勝と言う結果をもたらし、議会政治が始まることによって区切りを迎える。
リベラルないし進歩派と保守派の対立というのも尊王攘夷運動の中の尊攘派と公武合体派の対立(この辺は要検討だが)にはじまって、常に分裂・統合を繰り返した民権運動と政党、その他諸勢力の対峙から脈々と、内容は変化しながらも現代に続いているという印象である。
私は政治的な問題に関しては基本的に保守なのだが、経済的な問題に関しては再分配をもっと図るべきという考えなので、そこに関しては「リベラル」に近いけれども、その立ち位置に関しても深めたいところは多い。今日は本当にメモ程度になったが、リベラルに対峙する保守の問題を日本において考えるためには、尊攘派あたりまでは遡る必要があるのではないかと思ったので備忘的に書き記した。
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