リベラル左翼におけるマルクスの疎外論の影響/明治20年代の展開と現代思想としての封建主義
Posted at 21/03/17 PermaLink» Tweet
忙しくてなかなかまとまったものを読んだり書いたりできないでいる。最近の騒動に関連して、網野善彦氏やマルクスについての議論がツイッターで盛り上がっていたが、フェミニズムやマイノリティ問題に関する現代思想や運動の動向には、マルクスの疎外論がかなり大きな働きをしていることを改めて思ったので、その辺りのことも読んだり書いたりしていきたいのではあるが、まあ自分が保守思想を勉強していく上では敵となる思想ということでもあり、そういう視点から結構重要ではあるなと思う。
そういう意味でのマルクス思想の浸透度は日本ではかなり強いので、知らないうちにかぶれている場合もあるから注意が必要だ。マルクスについては表立っても最近は再び注目されるようになってきているが、そういう隠れたマルクス主義みたいなものにも充分気を付けていく必要はあると思った。
昨日届いた本をとりあえずあげておくと、西村茂樹「日本道徳論」(岩波文庫)、中野目徹「三宅雪嶺」(吉川弘文館人物叢書)、「岩波文庫解説総目録 1927-1996」の3冊。解説総目録はその後10年ごとに作られているのでもっと新しいものがあるのだが、とりあえずここまでの分だけでもかなりつかえるのではないかと思って古書で買った。
最近勉強していて「明治20年(1887)前後の日本社会の転回」というのがかなり大きな出来事だということを感じている。基本は明治初年以来文明開化・欧化主義が推進されてきたのが、帝国憲法(1889)・帝国議会(1890)直前のこの時期になってそれに反対する世論が高まってきている。それは国粋主義などといわれたが、より日本らしい国家社会にしたいというものだが、それは国権の伸張という面では政府とも一致する面があった。一方で明治18年に出た「小説神髄」で政治だけでなく文学の方向へ向かう書生・学生が出てきた、これは政治的自由だけでなく市民的な自由に対する憧れも惹起した。二葉亭四迷の「浮雲」が明治20年。
また一方で、庶民は江戸時代の庶民・農民が学校教育や徴兵等によって国家に取り込まれていったわけだが、特に明治23年に出た教育勅語の影響で、書生たちだけでなく庶民も「武士的精神」を共有するようになったという変化が指摘されている。この辺りはここ数回のうちのどこかで書いている。
戦前日本、近代日本社会の祖型がこの時期に作られたと考えて良いように思うが、この辺りが「明治精神」とか「伝統的な日本の思想」みたいなものとして意識されるようになっていったと考えられるのだろうなと思う。
日本の近代社会における「武士的精神」の重要性というのはここ数回のどこかで多分繰り返し書いてるが、考えてみたら呉智英氏が80年代から言っていた「封建主義」思想というのはこのあたりのことと関係あるなとようやく思い当たった。現代思想としての封建主義とでも言えばいいか。
なかなかうまくまとまらないが、現時点で考えていることをメモ的にまとめてみた。
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