好きなマンガを勧めるということ(今の一推しは「推しの子」であるわけだが)
Posted at 21/01/14 PermaLink» Tweet
好きな作品を勧めるということ
私は時々、マンガについて書くことがある。以前は、小説などについても時々書いていた。それは読んだ感想をきちんと言葉にしておきたいから書いているというのが本当のところで、その作品を勧めているというわけでは必ずしもない。
作品が好きかどうかというのは、実は私はあまり考えていない。面白いかどうかはもちろん考えているし、あるいはその作品にひかれるかどうか、ということももちろん考えている。好きだなと思って読んでいた作品も、途中から連載で読むのが大変になってくる場合も結構ある。しかしそういう作品も、後になって続けて単行本等で読んでみるととても面白かったりもするので、「好きだ」とか「面白い」という判断は難しいなと思う。
どの作品がお勧めですか、と聞かれたらその人の好みを考えてこれはいいんじゃないかな、ということはあるけれども、よく知らない人にお勧めを聞かれてもなかなか答えにくい。自分がいいと思っている作品を勧めても相手に刺さらない場合もあるし、布教したいと思うことも昔はなくもなかったが、最近ではそれほど強い気持ちで推すこともない。
もちろん知らず知らずのうちに入れ込んでいる作品も結構あるし、その作品が突然連載中止になったりするとそれはショックがある。近年では去年の週刊少年ジャンプの「アクタージュ」の連載中止・単行本発売中止がそうだったし、最近でいえば月刊少年マガジンの「さよなら私のクラマー」がこれからというところで連載が終わり、ちょっと納得できない思いがある。
書いている間に思い出してきたが、今一番推しであるのはヤングジャンプ連載の「推しの子」で、これは原作の赤坂アカさんと作画の横槍メンゴさんの良いところが両者出ているとともにストーリー展開が上手いし、またそれだけでなく連載のそれぞれの回の収め方、次回への繋げ方などが王道を踏んでいて、読んでいて非常に安心感がある。
週刊誌連載マンガというのは基本的に一回が19−20ページで、最近のマンガの精密な描写、細かい展開、比較的大きなコマの多用などの傾向から言うとどうしても一回であまり話が進まない感じになっている。しかしこの作品はそういうものを踏まえながらも一回だけを読んでもきちんと「読んだ」感が残る構成になっていて、そういうきちんとしたところもこの作品の魅力なんだろうなと思う。もちろんそれだけでなく言葉の使い方が上手い、それぞれのキャラクターの描写において表情がとても魅力的であるなど、いろいろな魅力はあるのだが。
連載で読んでいると辛いが単行本で読むと面白いというのは要するに連載だと話がぶつ切れになっている感じになるのが単行本でまとめて読むとちゃんと話が繋がってくるということにあるわけで、そういう作品は本当は「進撃の巨人」のように一回の連載が50ページを超える月刊誌で読んだ方が読みやすい可能性はある。「ワールドトリガー」がジャンプから月刊誌の「ジャンプスクエア」に移ったのはそういう意味があるのかもしれないと思う。
ただ、週刊誌だからこそ毎週読むことで興味がつながるということもあるので、そこら辺はなかなか難しいところなんだろうなとも思う。
マンガというものは、誰でも読めるように思うけれども必ずしもそうではなく、作品の作りというか文法みたいなものも時が経つにつれて変わってきているところもあるし、定型的な文法を守っている作品の方が読みやすいという面もあるが、逆に破格の文法が使われている方が読み手にとって刺激的に感じる(その代わり読む人を選ぶ)ところもあるので、勧めるというのもなかなかそんなに簡単な行為ではないなと思った。
勧めるという行為は、自分の好きなものを語る、というのとはやはり違い、一段高いところから見なければならないところがある。そのためには自分はなぜこれが好きなのか、ということがわかっていた方がいい。まあ、よくわからないけど気になる、だから他の人にも読んでもらって感想を聞きたい、ということもあるのだが、それは推薦というよりは要望というようなものだ。しかし、要望に見せかけて推薦するというテクもまああり得るので、「勧めるということ」についてもちょっと考えてみたいと思う。
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