私と文学と歴史とか
Posted at 20/12/21 PermaLink» Tweet
しばらく間が空いたので少し書いてみる。
いろいろ忙しいということもあるけど、その間にそれなりにいろいろ読んではいたのだけど、あまりこれをこう書きたいというところまで中身がまとまらなかったので、今日は割合どうでもいいことを書こうと思う。
子どもの頃の自分のことを考えてみると、今では割と意外だが物語的なものに夢中になっていた。幼稚園の頃読んだものでは小川未明の「赤い蝋燭と人魚」とか、ポーの「赤死病の仮面」とか割と怖いものが印象に残っていて、「みどりの指」とかも好きだった。小学校中学年からは「ナルニア国ものがたり」にどハマりして、本当に何度も読み返した。ホームズや「ドリトル先生」も好きだったが、ナルニアは本当に私の空想を膨らませてくれた。
一方で私が夢中になったものは、地図と宇宙だった。地図はやはり高学年くらいで読んだ堀淳一「地図の愉しみ」がとても面白く、これもかなりハマった。宇宙はちょうど1年生の時がアポロの月着陸で、おそらくはそこから関心が広がり、宇宙の果てはどうなっているかとかを考えるような子どもだった。そこから自然に星新一とか眉村卓とか子ども向けのSF小説にもハマっていったように思う。
歴史が好きになったのも小学校高学年で、学校の図書館にあった子ども向けの日本の歴史本を何度も読み返した。特に古代が好きだった気がする。今思うと割と皇国史観的な内容の本で、楠木正成とか北条時宗とかが英雄だったように記憶している。
歴史というものはロマンとしての扱い方と実用的な扱い方があるが、それが教育に応用されると歴史を通して美しい日本人の精神を教えよう、みたいなものが一方ではあり、また一方では虐げられてきた民衆や女性の歴史を教えよう、みたいなものがあって、まあどちらも歴史をネタにして自分たちの思想を注入しようという面では同じなのだが、そのイデオロギー的な扱いが正しいみたいにいう人も多く、なかなか面倒だ。
数学者の岡潔が教育は数学と歴史だけでいい、みたいなことを書いていたが、その歴史というのは楠木正成や北条時宗の澄んだ心を教えることが大事、みたいな意味での歴史で、でもまあそういうものと捉えられていたからこそ歴史は魅力的だったのだろうなとも思う。
まあそういうわけで基本私はロマンとかファンタジーみたいなものがやはり好き、というかまあそういう世界に住んでるみたいなところはあって、そういう自分を客観的にみるのがまた面白いという感じがあったりする。
サブカル的な文脈が面白いのはそういうものを一度解体して再構築するみたいなところがあるからで、ある種の知的遊戯としては相当面白いなとは思う。
イデオロギー的なものも面白くないわけではないが、やはり大事なのはファンタジーとかポエジーというようなものなんだろうなと思う。
物語を論じるためには物語をたくさん知っていることが大事なのだが、私はまあ必ずしもそんなに知ってるわけでもない。好きな物語には没入するが、そんなでもない物語は必ずしも読んでなかったりするので、その辺は論じるのにあまり条件がよくないなとは思う。
私は児童文学から文学に進むときにかなりつまづいた感があった。いわゆる文学が面白くなかったからだ。中一の時にモーパッサンの「女の一生」を読んでこれは無理だと思ったのが挫折の始まりという感じ。それでも教科書に出てくる作品や試験問題に出てくるような作品は割と読んだのだが、世の中にはもっと面白いものがあるはずだとしか思えないものではあった。
ただ、文学をまともに読んでない、というのは結構自分としてはコンプレックスになったところはあって、その分歴史をちゃんとやろうと思ったのだが、歴史も学問としてやればそれは物語ではないから、まあ中途半端になってしまったところはあるなと思う。
文学に回帰したのは30代後半に白洲正子を読むようになってからで、そこから小林秀雄も読み始めたが、これは高校の頃読んで珍紛漢紛だったものがその年になって読んでみるとかなりよくわかるのが面白いなと思った。
人生のさまざまな場面で、たとえばキリスト教について勉強したり、また仏教について勉強したりして、この人たちはこういう考えだとかでもそういうのより古事記の考え方、感じ方の方が好きだなと思ったり、自分なりに古典も好き嫌いで感じるようにしていて、そうすると色々なものが「いい感じ」なのか「気持ち悪感じ」なのかと捉えながら読めてきて、やはりそういう「自分なりの感覚」みたいなものがないと小林秀雄とかは読みにくいのではないかと思った。
誰か一人の作品を全集で全部読む、というのをやってみようと思って、やってみたのがプーシキンなのだが、プーシキンは私はかなり好きだ。最初に読んだのは「大尉の娘」で、全集を古本屋で全巻買い、それから詩を読んだり「スペードの女王」とかの短編を読んだりして、プーシキンという人がそれなりにわかった感じはしたのだけど、彼はやはりロマンとかファンタジーとかポエジーとかを考えると天才だなと思うし、それからロシア文学をいくつか読んだけど「カラマーゾフの兄弟」とかを読んでもまあすごい作品だなとは思うがめっちゃ面白いという感じでもなかった。
なんというか、好みというものは根本的には変わらないものだなと思う。それが何か自分が求めているものと近い場合には、特に変わらないのだろうなと思う。
特に言いたいことがあって書いてるわけではないのでまとまらないけれども、「いわゆる文学」が目指すような人間の実相を捉えようとするような作品よりも、こんな面白いことがある、こんな素晴らしいことがある、というような話の方が好きであることは、子どもの頃からあまり変わってないなあというふうには思った。
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