日本はなぜ豊葦原瑞穂の国になれたのか
Posted at 20/11/04 PermaLink» Tweet
昨日は「土 地球最後のナゾ」の二章まで読んだ感想を書いた。十二種類の土の話が出てきたのでググりながら確認していこうとしたのだが、これがなかなか骨が折れて、とりあえず本書の内容とUSDAの分類を同定してみたのだが、第三章はまさにこの「各国の研究者で土に対する研究の仕方がバラバラ」という問題について書かれていて、やはりそうなんだなと思った。それに参加し、日本の研究を反映させていくことは重要なことだと私も読んでいて思った。
養える人口と土の質、降水量の関係も興味深い。養える人口密度が一番高いのが黒ぼく土(火山灰土壌)Andisolで、肥沃な土とされるチェルノーゼムMallisolの二倍以上になる。これは日本やジャワ島など湿潤地帯に黒ぼく土が分布しているためで、チェルノーゼムの地帯は雨量が少ないから人口を養えないという事情があるようだ。確かにマリソルが人口扶養力が最も高いならウクライナやアメリカ中西部、アルゼンチンあたりが世界で最も人口が多いことになるがそうはなってない。一方砂漠土でも大河が流れ灌漑が可能なエジプトでは人口が多いので、砂漠土でも水が供給され塩害が克服できれば多くの人口を養えるということになる。なるほどと思う。
日本の土壌は火山灰地なので酸性土壌だが、ここで多くの人口を養えるのはイネが作物の中で最も酸性に強いからなのだそうだ。そんなことは考えたことがなかったが、そういう偶然とイネという品種の渡来がなければ日本はこんなにも豊かな国にはなれなかったことは確実なので、日本が豊葦原瑞穂国と言われるにははっきりした理由があるのだなと改めて目を開かれた思いがする。
もう一つ大事なことは、土の「若さ」だということ。岩石が土壌になるためには風化が必要なのだが、風化が進みすぎると土地の栄養分(鉱物)が失われる。それが最も進んだ例がオキシソル(ラテライトなど)で、アフリカの熱帯雨林は降水量があっても五億年の歴史を持つ土壌が痩せていて、またその再生も千年に1センチのスピードなので、日本のように火山活動や河川の浸食、黄砂の飛来などによって常に土壌自体が更新され、百年に1センチのスピードで土壌が作られていく土地に比べると土地の生産力が弱いということがわかった。安定した大陸は地震は少ないが、日本のような地震の多い場所は逆にだからこその利点もあるということなのだなと理解した。149/215。
ここまで読んでくると、地理を理解するために土壌が重要なのはともかく、歴史を理解するためにも土壌を理解するのはかなり重要なことだなと理解してきた。考古学者だけでなく、歴史学者も土をいじると新たなパースペクティブが開けるのかもしれない。
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