近世農村と現代の番地について
Posted at 20/09/27 PermaLink» Tweet
日本の地方制度というのは律令制度の国郡里制とか荘園制、国衙領を私有化した知行国制、また荘園制と知行国制を最終的に解体した太閤検地、江戸時代前半の大規模な新田開発等については中等教育で出てきて語られるのだが、中世の郷などについてはあまり語られず、近世農村の成立である「村切り」についてはあまり語られてなくて、明治初期の地方制度の再編も版籍奉還・廃藩置県については語られるが明治初年に行われた大規模な近世農村の統合や市町村制度の施行などについてはあまり具体的に語られない。
実際に地域を歩いてみると、江戸時代に成立した近世村落が地域社会の基盤になってることを強く感じるのだが、江戸時代の農村の地域ごとに異なる生活等についてはあまり知られていなくて、今色々調べていると面白い。
長野県諏訪地域では例えば今の諏訪市四賀は
1873年(明治7年)10月13日 - 筑摩県諏訪郡上桑原村・赤沼村・飯島村・神戸村が合併して四賀村となる。
1876年(明治9年)8月21日 - 長野県の所属となる。
1889年(明治22年)4月1日 - 町村制の施行により、四賀村が単独で自治体を形成。
1941年(昭和16年)8月10日 - 上諏訪町・豊田村と合併して諏訪市が発足。同日四賀村廃止。
(Wikipediaによる)
とあり、近世農村の四ヶ村が合併して成立したことがわかる。現在使われている番地はこの四賀村全域に一律にふられていて、住所は「諏訪市四賀4444番地」みたいになるのだが、実際の地域社会は例えば公民館は「赤沼地区公民館」みたいになっていて、江戸時代の旧村落が今でも重要な位置を占めている。
しかし例えば三重県伊賀市旧壬生野村では
1889年(明治22年)4月1日 - 町村制の施行により、川東村・山畑村・川西村・西之沢村の区域をもって阿拝郡壬生野村が発足。
1896年(明治29年)4月1日 - 所属郡が阿山郡に変更。
1955年(昭和30年)1月1日 - 西柘植村と合併して春日村が発足。同日壬生野村廃止。
となっていて、「壬生野」が大字ではなくその下の例えば川東が大字となり、番地も「川東222番地」みたいになっている。
ということは番地がふられたのは明治7年と明治22年の間ということだろうか。地租改正が明治6年に始まり、地券台帳が作られ、それが明治17年に作られた土地台帳に引き継がれたとのことなので、その辺りで番地が完全にふられたということなのだろう。また明治18年に登記法が成立したのでこちらで完全にふられたということかもしれない。土地台帳は昭和35年に廃止され、登記簿に移し替えられたのだという。
そう考えてみると、現代の「番地」というものは明治17年ないし18年当時の地方自治体の単位をいまだに引きずっているということになるのだろう。これは住居表示の進んだ地域でも同じことで、例えば東京でも登記簿上は「東京都江東区南砂1丁目555番地」などと住居表示とは違う番地が記されるわけで、本籍地もこれに倣う。これはおそらく当時の「砂村新田村」などを単位に振られた番地なのではないかと予想される。
この辺のところはもう少し調べてみないとはっきりとは言えないが、大体こんな感じだったのではないかと思う。
ついそこに突っ込んでしまったが、本来描きたかったことは江戸時代の村制度が今のような全国一律のものではなく、非常に入り組んで屋上屋を架されていったもので、フランス革命前のアンシャンレジーム時代の地方制度のような感じで、まさに江戸時代は日本のアンシャンレジームであった、みたいなことを書こうと思ったのだが、ちょっと長くなってきたのでこれくらいにしておこうと思う。また機会があったらその辺も書く。
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