今年上半期に読み始めたマンガ(2):「久保さんは僕を許さない」「推しの子」「少年のアビス」「新九郎、奔る!」
Posted at 20/07/20 PermaLink» Tweet
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今年上半期に読み始めたマンガ、第2回。
「久保さんは僕を許さない」。ヤングジャンプ連載。2巻まで出ている。クラスでも全く存在感がなく、出席していても欠席にされがちな空気のような主人公に、クラスのアイドル的女子がちょっかいをかけてくる話。主人公は戸惑ってるが久保さんの方は目線はすぐ「にやーっ」とするけどすぐ絡もうとしてくる、という話。久保さんのお姉さんとか従姉妹とかも出てきて地味に面白い。地味で真面目な男子応援マンガみたいな感じだろうか。
「推しの子」。ヤングジャンプ連載。7月に1巻が出た。今年の作品の中で今のところベストワンだと思う。面白い。アイドルの息子に輪廻転生した主人公と、同じく双子の妹。第1巻はプロローグで16歳で母親になったアイとの話なのだけど、「アイドルとは何か」といった考察がなるほどと思わせ、プロローグという以上に面白かった。連載では子どもたちが主人公になるストーリーが始まっているが、まあ内容は読んでのお楽しみとした方がいいかと。芸能界マンガとしては少年ジャンプの「アクタージュ」があるけどこれは天才女優の話なので、「アイドルの子どもとしてルックスも人脈も英才教育も受けた」2人の話というのはどう展開していくのか、興味深い。原作が「かぐや様は告らせたい」の赤坂アカ、作画が「クズの本懐」の横槍メンゴと言う黄金コンビ。
「少年のアビス」。ヤングジャンプ連載。7月に1巻が出た。この作品は、まだ評価するのが難しいなあ。主人公は田舎の閉塞した環境の中で自分の将来を見通して死ぬことが希望になってしまう、と言う少年なのだが、そこに現れる女性たちとさまざまな関係を持っていく、と言う感じ。そう言う意味ではちょっと古風なところがある作品だなと思う。2020年にこの作品をやる意味がどこにあるのかと言うことも思うのだが、出てくる女性たちがちょっとそれぞれネジが外れているのがある意味魅力的。作品の方向がどこに着地するのか、今でもわからないところが不安定な感じで、そこもまた魅力なのだろう。
「新九郎、奔る!」。現在週刊スピリッツ連載。4巻まで出ている。連載が始まったのが2018年だが、今年読み始めた。主人公は北条早雲の若い時、伊勢新九郎盛時の時代。素浪人が関東の支配者になった、と言うのが私の若い時の早雲像だったが、この作品は最新の研究成果を踏まえて室町幕府・足利義政の時代の政所執事・伊勢氏の一族として描かれていて、応仁の乱前後の京都の武士たちの生活や所領での様子など、なかなか今までちゃんと描かれてこなかったことが描かれていてとても面白い。ツイッターで中公新書「応仁の乱」の著者・呉座勇一氏が話題にしていたのが読んだきっかけだった。歴史学者の目から見てもよく描かれていると言うことのようで、その辺りも興味深い。
今日の四編は全てヤンジャン・スピリッツという大手の青年誌の作品。「新九郎」は月刊スピリッツで連載されていたものが週刊に移籍になった作品。同じような例としては「恋は雨上がりのように」がある。ただ内容として、週刊連載に追われて描けるような内容ではないので、スピリッツのような休載を挟みながらの連載作品が多い週刊誌でないとなかなか厳しいものがある気はする。月刊誌は落ち着いてじっくり連載するにはいい媒体だと思うが、売り上げとしては週刊誌の方がいいのだろうし、どの社の雑誌も月刊やウェブ媒体で売れてきたら週刊に連載を移したり、週刊で勢いがなくなってきた、ないしは落ち着いてじっくり書いた方がいいとみなされた作品は月刊に移ったりウェブ媒体に移ったりする例が多い。
読者の側としては途中で打ち切りになるよりは媒体を変えても連載が続いた方が嬉しいと言う面はあるが、やはり都落ちのイメージ、逆に月刊から週刊に移ると上洛したようなイメージがある。単行本で買うにしてもまずは雑誌で読んでいる立場からすると媒体が移るのはあまり望ましくはないのだけど、まあその辺りは現実に仕方ないんだろうなとは思う。
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