東京駅ステーションギャラリーで『メスキータ展』/鈴木敏夫『天才の思考 高畑勲と宮崎駿』など

Posted at 19/07/02

日曜日、6月30日は東京駅ステーションギャラリーに出かけ、『メスキータ展』を見に行った。メスキータとはスペイン語でモスクという意味だけど、彼はオランダのユダヤ人で、おそらくはスペインから移住したセファルディなのだろう。彼の作品は版画とドローイングが多く、多くモノクロなのだが、描きこまれた世界の広がりが不思議で、こういうのは実物としては見たことはあるけど、アート作品としては見たことがないよなあと思うようなものが多い。特に人物描写にそういうものを感じる。

ステーションギャラリー自体に行ったことが初めてで、丸の内北口の駅舎の1階にあるのかと思ったら、二階にも三階にも展示室があって、というか1階はほぼ出入り口だけなのだが、展示が終わって出てきた二階の回廊からは丸の内北口のコンコースが見下ろせて、駅そのものもまた展示品のようだった。東京駅創建当時の壁や煉瓦も残っていて、文化財をギャラリーとして使っている贅沢なつくりだということをはじめて知った。こういうところだと知っていたら、もっと早く来たのにと思った。

メスキータという画家を知ったきっかけは『日曜美術館』でたまたまエッシャーを取り上げていた回を見たからで、アートシーンとはほとんど没交渉だったというエッシャーも絵は習っていて、その師匠がメスキータだった、ということから知ったのだった。メスキータは19世紀末から20世紀にかけて活動したユダヤ人だったが、ナチスに囚われ、最終的にはアウシュヴィッツで亡くなっているという。エッシャーらは連行された後のメスキータの家から彼の遺作を運び出し、そのために彼の作品が今日まで伝えられているのだそうだ。

エッシャーやメスキータを語るにはどうしてもそうした物語がついてきてしまうのだけど、そういう物語と関係ないところでメスキータの作品はとてもいい。20世紀芸術の先駆けみたいなところもとてもあるし、ポップなところもあり(画家だけでなくデザイナーの仕事もしていたようだ)、独特の世界が静かに、しかしかなり強烈にある。なんというかいろいろと不思議だし、妙に演劇的な感じもする。これは写楽とかの浮世絵の影響もあるのだろうか。図録も買ったのでまたゆっくり鑑賞しながら分析等も読んでみたいと思う。
昨日は八重洲ブックセンターに出かけ、ご飯を食べるついでに本を見ていたら3冊も買ってしまった。『エクストラート』21号、『芸術新潮』7月号、これは萩尾望都の特集号なのだが、ステーションギャラリー館長の冨田章氏がメスキータについての一文を寄せていて、それを読もうと思って買った。
それから鈴木敏夫『天才の思考 高畑勲と宮崎駿』(文春新書)。鈴木さんの本は何冊か読んでいるが、これはジブリ作品としては最新の『思い出のマーニー』まで言及されているので買った。私はこの作品は好きだったけど、鈴木さんはちょっと不満があるだろうなと思っていたが、まあそんな感じだった。ジブリのアニメ製作態勢を整理にかかるときに最後の作品として作った、という感があるようだけど、いろいろと過渡期なんだ、ということも一つにはあったのだなと思った。

どれもぱらぱらとめくりながら少しずつ読んでいる。

月別アーカイブ

Powered by Movable Type

Template by MTテンプレートDB

Supported by Movable Type入門

Title background photography
by Luke Peterson

スポンサードリンク













ブログパーツ
total
since 13/04/2009
today
yesterday