『源実朝』『イオンを創った女』『文芸読本 永井荷風』『お金は愛』
Posted at 19/02/12 PermaLink» Tweet
『源実朝』。歌人としての側面と将軍・捌き役としての側面。鎌倉で独学で歌を詠んでいたため、京都におけるルール、現存の歌人の作品は本歌取りしないというルールを守らずに自由に作歌していたという話。確かに京においては実際に顔を合わせる人たちの歌を本歌取りするのははばかられるだろうけど、鎌倉で顔を見ないで歌を詠んでいたら現存者も過去の歌人も区別するのは難しいかもしれない。またそういう指摘を定家に受けることによって、京への憧れもまた強まったかもしれない。
また御家人の争いごとを裁く鎌倉殿としての役割も、努めて公平にしようとしていたというのがある意味のまじめさ、また「生まれながらの将軍」としての三代目の資質のようなものを感じる。自らの地位の重みを十分理解していたということなんだろう。82/265ページ。
『イオンを創った女』。小嶋千鶴子の評伝部分読了。1916年生まれ、100歳を超えて、60歳で役員を退任してから40年以上が過ぎて、こういう評伝が世に出るというのも何か時代に要請されたものがあるのかなと思った。謙虚に目標を持ち学び続けること、成功した状態を具体的に「見る」ことが経営者として重要だという指摘はこうしたビジネス書ではよく書かれていることだが、その状態をある種のイデアとして明確に想像する能力というのは確かに重要かもしれないと思う。
数学の問題を解いていても、途中でこれはこうしてこうすれば解けるはずだ、という道筋が見えることがある。ある意味解けた状態がありありと分るということで、実際に解いていく作業はまだ時間がかかってもそこでそれにかかる時間がどれくらいかだいたい見積もれたり、その先にどのように別の問題を解いたらいいかというところにまで頭を使う余裕が出てくる。おそらくは絵を描く人も描いているうちに全体像はこうなるはずだ、というのが見えてきて、そういう状態に至るにはどのように描いていけばいいか、ということに頭を使うようになるのではないだろうか。素晴らしいビジョンが描ければもちろんそれに越したことはないが、そうでなくてもある程度は皆そういうことはやっているのではないかと思った。より良い、より大きなビジョンを描くためには自分のありよう、ポテンシャルを向上させていくしかないわけで、それが文字通り未来への投資ということなのだろう。
昨日は午後遅くになってから神保町に出かけた。靖国通りに機動隊がたくさん出ていて何かと思ったら、建国記念日反対のデモが歩いていて、それに対して右翼方面の人らしき人たちが罵声を浴びせたりしていて騒然とした雰囲気だった。それも一過性のものと言えばそうなのだが。先ずコミック高岡に行って張り紙を見ると、やはり3月31日で閉店だという。神保町に通い始めて40年近くになるけれども、コミック高岡は必ずのぞく店の一つだったので、閉店はさびしい。コミックの専門店も書泉ブックマートの2階だけになってしまうし、成人向けの作品以外はビニールがかけてなくてある程度は吟味できるのもよかった。
古書店をいろいろまわり、一誠堂で美術書などをいろいろ見た後、一階で『文芸読本 永井荷風』を買った。これはツイッターで少しやり取りをしているうちに、そうだ私は永井荷風が好きだったんだ、ということを改めて自覚していたので、もうちょっと読んでみようと思ったからだった。好きな割にはあまり読んでいないということもあり。
作家というものは、人間とはこういうものだ、こういう人間を描きたいという意志のようなものがあり、それを描くために人間に接近するときに行動が奇矯になったりするのだと思うが、荷風の場合はストリップ劇場やカフェーや赤線青線などで見る人間の姿の中に人間を見ていたのだろうと思う。
東京堂へ行ってトイレを借りて出てきたところにあった小山昇『お金は愛』という本が目につき、いろいろ考えたが買った。基本的に給料を出しましょう、という話のように思うが、「給料はお客さんが出しているが、賞与は利益の中から社長が出しているもの」という考え方がなるほどと思うところがあり、作者の考え方に興味を持ったというところが大きい。ビジネス書は今年、『しょぼい起業で生きていく』『天才を殺す凡人』と二冊読み、『イオンを創った女』も読んでいるが、わりと今年は当たり年だなという印象。
行きと同じように千代田線新御茶ノ水駅まで歩いて帰った。
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