「ビジネス・フォー・パンクス」を読み始めた。
Posted at 18/11/14 PermaLink» Tweet
しばらく前に買ったジェームズ・ワット「ビジネス・フォー・パンクス」(日経BP、2016)を読み始めたのだが、これはかなり面白い。どこでこの本を知ったのか、ツイッターか店頭で見て買ったのかも思い出せないのだけど、「面白そう」な感じはとてもあったのだけど読み始めてなかったのだが、昨日信州への移動の特急の中で読み始めて、「今読みたい本はこれだ!」と快哉を叫びたい感じになった。
著者のジェームズ・ワット(実用的蒸気機関発明者と同じ名前)はスコットランドでクラフトビールの会社を共同で作った人で、2007年に24歳でクラフトビールの会社・ブリュードッグを立ち上げ、破天荒な経営で会社を急拡大させた人であるらしい。逆算すると1983年生まれ、現在35歳ということになる。
起業論の1行目から、「圧倒的な確率で、起業は失敗に終わる。状況は最初から不利だ。」というフレーズで始まる。「恐ろしい逆説だが、何もかもが難しく、自分が一番未熟な時期に決断を迫られ、その結果が将来について回るのだ。まず生存権を獲得し、自分の存在意義をわずかでも見出さなければならない。この数年間を、人生で最も勇敢に、打たれ強く、全力で生き抜く覚悟が必要だ。」「否定に次ぐ否定をうまくやり過ごす方法を身につけ、絶えず期待を裏切られることを喜んで受け入れる術を学び、最悪の逆境でチャンスを探すことを楽しめるようになる必要がある。」
このあたりのところ、起業論を説く筆致ないし口調としてはそう珍しいものではないかもしれないが、文章にキレが良く、思い切りがよく、なるほどと思わせる。訳者の高取芳彦氏が上手いということもあるのだと思うが、元々の文がそうしたリズミカルな強さを持っていなければこうした説得力は生まれないだろう。
だから「会社は失敗する。だが革命が死ぬことはない。だったら会社ではなく革命を始めればいい」というわけだ。「今はもう、ただ会社を始めるだけでは成功しない時代になっている。明確な目的と使命、存在理由が求められるのだ」と。「僕とマーティンはただ醸造所を始めたのではない。自分たちと同じくらい、世の人々をうまいビールに夢中にさせるという使命の旅に踏み出したのだ。この誓いが前提となり、あらゆる行動を裏付け、あらゆる決断で立ち返るべき根源になる。」と。
事業というものをただ始めただけではうまくいかない、使命を持って革命を起こすつもりでやらなければほとんどの起業と同じく潰れてしまう、と。これもまた必ずしも彼ら独自の見解ではないが、そのミッションの語り口がやはり整理された、頭の良さを感じさせる。
そしてここが大事だと思ったのは、「使命に求められるのは、唯一無二であることと、魅力的であることだ。自分のチームと、潜在顧客たちに、そのを認めさせるだけの使命が必要なのだ。使命こそ、他との違いを生む。世の人々の目をどうやって自分たちに向けさせるかこそ、最初の一歩を踏み出した瞬間から抱える最大の課題であり、目を向ける理由になるのが使命なのだ。」というところ。最初にそこの部分を最もブラッシュアップさせる必要があるというのは、なるほどなあと思った。「自分が情熱を注げることをしよう。明確な使命を持とう。やること全てが自分の存在意義としっかり密着していれば、その分だけ商品やサービスが顧客の共感を呼び、顧客がファンになってくれる」
使命は唯一無二であり、魅力的であり、自分が情熱を注げることであり、明確であり、自分の存在意義と密着しているものである必要があると。「使命が自分の存在意義と密着している」という表現がなるほどと思ったが、確かに色々考えても魅力的な、ないしは注目に値する仕事をしている人は、そう表現できる人が多いように思った。「会社が世の中に影響を及ぼせるようになるところまで生き延びたければ、まずは心揺さぶるような革命の戦いをビジネスの核に据えることだ」と。
そのあとは人のアドバイスを聞くな、長期計画なんか無駄だ、営業のことは忘れろ、嫌われ者になれ、と彼自身の主張が続くが、確かに「パンクスのためのビジネス」という感じだが、要は最初のミッションをいかにやり抜くか、というためのフォローであるから、それぞれ説得力のある話になっている。
まだ1章の途中なので、まずは読みながら色々考えたりやったりしていきたい。とても元気が出る本だ。
カテゴリ
- Bookstore Review (17)
- からだ (237)
- ご報告 (2)
- アニメーション (211)
- アンジェラ・アキ (15)
- アート (431)
- イベント (7)
- コミュニケーション (2)
- テレビ番組など (70)
- ネット、ウェブ (139)
- ファッション (55)
- マンガ (840)
- 創作ノート (669)
- 大人 (53)
- 女性 (23)
- 小説習作 (4)
- 少年 (29)
- 散歩・街歩き (297)
- 文学 (262)
- 映画 (105)
- 時事・国内 (365)
- 時事・海外 (218)
- 歴史諸々 (254)
- 民話・神話・伝説 (31)
- 生け花 (27)
- 男性 (32)
- 私の考えていること (1052)
- 舞台・ステージ (54)
- 詩 (82)
- 読みたい言葉、書きたい言葉 (6)
- 読書ノート (1582)
- 野球 (36)
- 雑記 (2225)
- 音楽 (205)
月別アーカイブ
- 2023年09月 (19)
- 2023年08月 (31)
- 2023年07月 (32)
- 2023年06月 (31)
- 2023年05月 (31)
- 2023年04月 (29)
- 2023年03月 (30)
- 2023年02月 (28)
- 2023年01月 (31)
- 2022年12月 (32)
- 2022年11月 (30)
- 2022年10月 (32)
- 2022年09月 (31)
- 2022年08月 (32)
- 2022年07月 (31)
- 2022年06月 (30)
- 2022年05月 (31)
- 2022年04月 (31)
- 2022年03月 (31)
- 2022年02月 (27)
- 2022年01月 (30)
- 2021年12月 (30)
- 2021年11月 (29)
- 2021年10月 (15)
- 2021年09月 (12)
- 2021年08月 (9)
- 2021年07月 (18)
- 2021年06月 (18)
- 2021年05月 (20)
- 2021年04月 (16)
- 2021年03月 (25)
- 2021年02月 (24)
- 2021年01月 (23)
- 2020年12月 (20)
- 2020年11月 (12)
- 2020年10月 (13)
- 2020年09月 (17)
- 2020年08月 (15)
- 2020年07月 (27)
- 2020年06月 (31)
- 2020年05月 (22)
- 2020年03月 (4)
- 2020年02月 (1)
- 2020年01月 (1)
- 2019年12月 (3)
- 2019年11月 (24)
- 2019年10月 (28)
- 2019年09月 (24)
- 2019年08月 (17)
- 2019年07月 (18)
- 2019年06月 (27)
- 2019年05月 (32)
- 2019年04月 (33)
- 2019年03月 (32)
- 2019年02月 (29)
- 2019年01月 (18)
- 2018年12月 (12)
- 2018年11月 (13)
- 2018年10月 (13)
- 2018年07月 (27)
- 2018年06月 (8)
- 2018年05月 (12)
- 2018年04月 (7)
- 2018年03月 (3)
- 2018年02月 (6)
- 2018年01月 (12)
- 2017年12月 (26)
- 2017年11月 (1)
- 2017年10月 (5)
- 2017年09月 (14)
- 2017年08月 (9)
- 2017年07月 (6)
- 2017年06月 (15)
- 2017年05月 (12)
- 2017年04月 (10)
- 2017年03月 (2)
- 2017年01月 (3)
- 2016年12月 (2)
- 2016年11月 (1)
- 2016年08月 (9)
- 2016年07月 (25)
- 2016年06月 (17)
- 2016年04月 (4)
- 2016年03月 (2)
- 2016年02月 (5)
- 2016年01月 (2)
- 2015年10月 (1)
- 2015年08月 (1)
- 2015年06月 (3)
- 2015年05月 (2)
- 2015年04月 (2)
- 2015年03月 (5)
- 2014年12月 (5)
- 2014年11月 (1)
- 2014年10月 (1)
- 2014年09月 (6)
- 2014年08月 (2)
- 2014年07月 (9)
- 2014年06月 (3)
- 2014年05月 (11)
- 2014年04月 (12)
- 2014年03月 (34)
- 2014年02月 (35)
- 2014年01月 (36)
- 2013年12月 (28)
- 2013年11月 (25)
- 2013年10月 (28)
- 2013年09月 (23)
- 2013年08月 (21)
- 2013年07月 (29)
- 2013年06月 (18)
- 2013年05月 (10)
- 2013年04月 (16)
- 2013年03月 (21)
- 2013年02月 (21)
- 2013年01月 (21)
- 2012年12月 (17)
- 2012年11月 (21)
- 2012年10月 (23)
- 2012年09月 (16)
- 2012年08月 (26)
- 2012年07月 (26)
- 2012年06月 (19)
- 2012年05月 (13)
- 2012年04月 (19)
- 2012年03月 (28)
- 2012年02月 (25)
- 2012年01月 (21)
- 2011年12月 (31)
- 2011年11月 (28)
- 2011年10月 (29)
- 2011年09月 (25)
- 2011年08月 (30)
- 2011年07月 (31)
- 2011年06月 (29)
- 2011年05月 (32)
- 2011年04月 (27)
- 2011年03月 (22)
- 2011年02月 (25)
- 2011年01月 (32)
- 2010年12月 (33)
- 2010年11月 (29)
- 2010年10月 (30)
- 2010年09月 (30)
- 2010年08月 (28)
- 2010年07月 (24)
- 2010年06月 (26)
- 2010年05月 (30)
- 2010年04月 (30)
- 2010年03月 (30)
- 2010年02月 (29)
- 2010年01月 (30)
- 2009年12月 (27)
- 2009年11月 (28)
- 2009年10月 (31)
- 2009年09月 (31)
- 2009年08月 (31)
- 2009年07月 (28)
- 2009年06月 (28)
- 2009年05月 (32)
- 2009年04月 (28)
- 2009年03月 (31)
- 2009年02月 (28)
- 2009年01月 (32)
- 2008年12月 (31)
- 2008年11月 (29)
- 2008年10月 (30)
- 2008年09月 (31)
- 2008年08月 (27)
- 2008年07月 (33)
- 2008年06月 (30)
- 2008年05月 (32)
- 2008年04月 (29)
- 2008年03月 (30)
- 2008年02月 (26)
- 2008年01月 (24)
- 2007年12月 (23)
- 2007年11月 (25)
- 2007年10月 (30)
- 2007年09月 (35)
- 2007年08月 (37)
- 2007年07月 (42)
- 2007年06月 (36)
- 2007年05月 (45)
- 2007年04月 (40)
- 2007年03月 (41)
- 2007年02月 (37)
- 2007年01月 (32)
- 2006年12月 (43)
- 2006年11月 (36)
- 2006年10月 (43)
- 2006年09月 (42)
- 2006年08月 (32)
- 2006年07月 (40)
- 2006年06月 (43)
- 2006年05月 (30)
- 2006年04月 (32)
- 2006年03月 (40)
- 2006年02月 (33)
- 2006年01月 (40)
- 2005年12月 (37)
- 2005年11月 (40)
- 2005年10月 (34)
- 2005年09月 (39)
- 2005年08月 (46)
- 2005年07月 (49)
- 2005年06月 (21)
フィード
Powered by Movable Type
Template by MTテンプレートDB
Supported by Movable Type入門