社会問題の難しさ/リーダーシップと意思決定
Posted at 18/11/09 PermaLink» Tweet
阿部彩・鈴木大介「貧困を救えない国 日本」読んでる。読んでるのだが、第3章に入って迷走しているというか、二人の意見もあまり合わないしそれぞれが言いたいことを言ってる感じになってきて、また二人ともよく知らないことについて話していたりする部分もあり、そういう意味では貧困という問題の幅広さ、そして関係するところの多さ(特に教育・労働)において実践家でも研究者でも記者でもフォローし切れていないところがかなり多いということが逆によくわかるという感じはあるのだが、しかし読む方としてはもっと手際よくまとまってこれが貧困問題だ!みたいになってるのを読みたい、というのが忙しい読み手にはあると思う。しかしそうはいかないのが貧困問題だ、ということなのだとは思うが。
ガチで議論をぶつけているという臨場感はないわけではないけど、もう少し一致点を短いペースで見出しながらまとめてもらえた方が、読んでいる方としてはありがたい。貧困問題は重要だとは思うけどそのことばかり考えていられる人ばかりではない。まあ逆に言えば社会問題というもののはそういう面倒くささみたいなものがそれに関心を持つ人たちにとっても障壁になりやすいということなのだなということが、読んでいても伝わってはくるのだが。
鈴木大介さん原作のマンガ「ギャングース」では、様々な問題・実態がそこにリアルに描かれていて、その世界でどういうやり取りがあるかとかがとても興味深いのだが、それを例えば行政や法制、あるいは学校教育のベースに乗せて解決していくためにはどうしたらいいかというのは相当な困難が伴うのだなと逆に思う。特に読んでいて思ったのは、今の日本の社会で働きづらい人、支援を必要としている人が大勢いて、またその必要と仕方がみな様々だから支援に動くべき人の供給もなかなか難しいということを読みながら、これで大量に外国人労働者とかが入ってきたらまた解決すべき問題のベースが根本的にひっくり返されてしまうわけで、今議論しても仕方ないという気すらしてきてしまう。実際、欧米先進国の手厚い社会保障にひかれて多くの移民や難民がやってきているわけで、そうなると手厚ければ手厚いだけ大きな依存してくる人たちを抱え困らざるを得なくなるわけだし、そこの困難さは行政的な支援だけで解決できる問題ではないと考えざるを得ない。
専門学校や大学、ないしはブラック企業がキラキラの夢を描いて見せてそれに集まってくる子どもたちにそこで頑張っても卒業後の職がない、将来がない、みたいな形で食い物にしている、という話が言われているところで、それならばそういうのに引っかからない、普通の頭の良い子はどういう職業選択をしているかというと、地方公務員か医療関連職なのだという。国家公務員と医者ではなく。これは実感として理解できる部分と一致している。
貧困問題に限らないけど、最終的にこういう社会問題は「リーダーのあり方」という問題に帰結していくのかなと思う。今の日本の中堅から上層の下の方のリーダーは事なかれ主義というか自分が職にある間はなんとか逃げ切りたいと感がている人が比較的多いと思うが、世界ではトランプ・プーチン・習近平・エルドアンといったどちらかというと独裁的な、敵を作りながら叩いていくことで自分の勢力を伸ばすようなタイプが力を得ているように思う。
また日本でも昔に比べると西郷隆盛的な器の大きさで人がついてくるというタイプのリーダーはいなくなってきていて、聞く耳を持った民主的リーダーも増えつつある(でないと人がついてこない)いるが、あるいは人を盛り上げて洗脳して大変な仕事でもやらせてしまうというあまり良くない意味でのカリスマ的リーダーみたいな人が増えつつある感じがする。ただ民主的リーダーはなかなか力を持ちにくいとは思う。
私も最近は自分自身を巡って問題解決の糸口を探ろうとしている間に新しい問題が次々に起こって何をどれから解決すればいいのかいつも考えているという状況になっているのだけど、日本それ自体も本当にそういう感じで、世論が動くまで問題解決が動かないという今までの状況では間に合わないことも多いし、逆に変なブローカー的なものに騙されてるように見える政策課題ばかりが進んでいたりして、それを捌けるリーダーがいないことが大きな問題なのではないかと思っている。
中国人が今の日本を見て日本は中国に勝てないと思うのは意思決定が遅いことだ、とよく言われるが、実際のところ日本での意思決定は本当に大変な仕事になってきている感じがある。日本全体の動脈硬化的な現象なんだろうか。貧困などの社会問題も結局はそういう意思決定の狭間で起こっていることが多いのだろうと思う。
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