ものづくりの国と批評の国
Posted at 18/10/22 PermaLink» Tweet
何かを書こうとして、自分の思考の永久迷路からなかなか抜け出せないときは、とりあえず何かを書きはじめればよいのだけど、そのとりあえずがなかなかつかまえられない。
自分の考えたことや発言したことについて振り返ってみると自分が本当に思っていること、感じていることを表現してはいなかったなと思うと自己嫌悪に陥ったりする。
こんなことを書くと文章が暗くなってしまう、と考えてしまうが、そのように考えてしまうのも自己検閲なので、物づくりの精神が弱くて批評の精神が強すぎることが問題なのだ、ということを思い出す。
日本という国はものづくりの国だ、と割合何の根拠もなく思っていた、というのはもちろん、優れた作り手、職人さんたちが多く、また日本の技術が世界的にも高く評価されてきた、ということを踏まえてのことなのだが、さて、本当の意味でものづくりの国なのか、と思ってみると、物が作られている国であるとは思っても、さて本当の意味で、というとよくわからない。あの人もこの人も、と顔が浮かんだりテレビで見た工場や工房の風景が浮かぶが、さてそれが本当の意味でものづくりの国ということなのか。
これはツイッターで読んだことで本当にそうだなと思ったのだけど、実際には日本はものづくりの精神が弱いのだと思う。何でもいいからどんどん作り、その中からとんでもないものが生まれる、という風土こそが、「ものづくりの国」ではないかという指摘だ。そういう意味ではなんにでもチャレンジし、多くの人が「自分で」ものをつくろうとする、また生活に必要なものを何でも「自分で」作ろうとする、アメリカ人の方が本当の意味でものづくりの精神がある、ものづくりの国だというべきだろう。
日本は、ものづくりの精神があるわけでなく、もともとアメリカ人などが作り出した大ざっぱなものを、「これをこうすればもっと良くなる」と批評し、改良し、改善する精神がある、つまりものづくりの精神ではなく、批評の精神が強いのだ。
だから、大ざっぱなもの、適当なもの、中途半端なものに対する風当たりがものすごく強い。日本は消費者の国、消費する側が手ぐすね引いてつくられたものに対して辛辣な批評を下す国なのだ。だから評価されるのは常に「完成度の高いもの」であり、「創造の精神」ではない。「こんな面白いことを思いついた」ということは評価されず、「こんなにうまくできた」ということが評価される。それはものづくりの国ではなく、批評精神の国だ、という評価は当たっていると思う。
もちろん、消費者としてはそれはとても嬉しいことではある。無意識に使い捨てるものが本当に無意識に使い捨てられる完成度だからだ。しかしどこか物足りなくもあるだろう。ごつごつした創造的な精神を感じる機会がきわめて少ないわけだから。
もし日本が本当の意味でものづくりの国になるためには、こうした批評の精神を少し黙らせる必要があるだろう。まず、「自分」が何か作ろうとするとき、そのつくろうとするもの、あるいは作りつつあるもの、あるいは出来上がったものに、まず「自分」が辛辣な評価を下すのをやめるべきだろう。先ず何かを作り出す。作ってみてから、それが意に沿わないものならもう一度やってみればよい。つくる前からやめてしまえば、もうそれは作られることなく終わる。つくられる前に終わってしまったものがおそらく「自分」自身の、そして日本という国の足を盛大に引っ張っているのではないかという気がする。
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