與那覇潤「知性は死なない ー平成の鬱をこえて」を読んで考えたことなど
Posted at 18/05/26 PermaLink» Tweet
たまたまぽっかりできた時間を利用して、少し何か書きたいと思うのだけど、いろいろ書く候補はたくさんあるのだが、どれも断片的というか頭や心の中でまとまったものがあってそれを書くというより書きながらまとめていかなければならないことばかりで、ちょっと時間的にも体力的にもきつい感じがする。
今週もやらなければならないことが多くて、あと例によって考えすぎて余計に疲れたりもしているので、本当は時間をとってじっくりと長いものをああでもないこうでもないと考えながら書いた方がいいんだろうなと思う。つまり自分の心の中がスッキリするくらい溜め込んだものを言葉にするということ。
その中には現時点であまり考えたくないこと、触れたくないことが最近いつもあって、昔だとそれはそれとして一応全部書いてたものが、最近は言葉にすることを避けることが増えたなと思う。これは多分あまり良くないことで、私のように基本的にあまり裏表がない性格だと心の裏側に何か変なものがべっとりついた感じになってしまう。これはおそらく、公開するかどうかは別にしても、一度書いてしまった方がいいことはたくさんあるんだろうなと思った。
今週買ったマンガは、雑誌は月曜日の少年ジャンプとヤングマガジン、水曜日には少年マガジン、木曜日は週刊モーニング(電子版)とヤングジャンプ、金曜日は週刊漫画Timesと月刊アフタヌーン。今日はこれから月刊少年シリウスを買う予定。単行本では23日(水)に「はじめアルゴリズム」3巻、25日(金)に「Landreaall」31巻、思ったより少ないな。今週は雑誌をたくさん買ったということか。
「はじめアルゴリズム」はとても面白いので、いずれ感想を書きたいと思う。
それより、今週じっくり読んでいたのは與那覇潤「知性は死なない ー平成の鬱をこえて」(文藝春秋、2018)だった。これは新刊時にツイッターでもある程度話題になっていたのだけど、私も興味があって書店で立ち読みなどしながら、実際に買ったのは少し前だった気がする。きちんと読み始めたのは日曜日くらいからだろうか。内容は多岐にわたっているのだけど、それぞれかなり自分が関心を引かれる内容で、しかしアプローチの仕方がかなり私とは違うところが、それぞれ興味深かった。著者は私より17歳下で私が修士課程に通っていた頃入学した人。その後大学改革が本格的に始まったので見てきたものもかなり違うと思うし、時代状況や流行の学問、また関心の持ち方も違うから自分が持っている世界認識の仕方に対する一つの違う角度からの見方の提案みたいなものを感じ、読んでいて色々面白いのだ。
ものすごく説得力があって巻き込まれ、引き摺り込まれていく、というような本ではない。著者は一度アカデミズムの世界に地歩を得ながら躁鬱病の発病によって退職し、その寛解によってこれだけの著作が書けるところまで回復した、そしてその経験を通しての世界の見え方、病の捉え方、アカデミズム、反知性主義などについての「自分の現在」を書かれているのがとても興味深いと思った。
だからある意味「ツッコミどころ」はたくさんあるし、Twitterで読んだ学者さんたちの反応も著者のナイーブな面に同情はするけどどうなの、という反応が多い。それこそロゴスの世界で生きている、ノエシスの世界で生きている人たちにとっては身体の逆襲みたいなところがある病の発症とそれを通して見た世界の見方、その考察はちょっと腫れ物に触る感じがなきにもあらずというように感じた。大学改革の荒波の中で、明日は我が身という気分も感じなくはなかった。
私自身にとっては、一章一章をちゃんと読み、それを読んで感じたことを自分なりにまとめながら他の人と意見を交換できたらきっとすごく得るものがあるだろうと感じるような内容だったと思う。つまり、この本は問題の「解答」を示した著作なのではなく、「問題そのもの」を提示した本であると思ったのだ。数学においてはどういう解答を出すか以前にどういう問いを立てるかが最重要だ、という話を読んだことがあるが、恐らくは数学だけでなく学問全体にそれは言えるのだろうと思う。
もちろん処方箋も必要だが、それは現時点での科学や社会情勢という「限界」を前提としたものだし、問題そのものはもっと広く深いものだよなと思う。この本の意義は私はそういうところにあると思った。
今は第3章「躁うつ病とはどんな病気か」を読み終えて、第4章「反知性主義とのつきあいかた」にはいったところ。こういう様々な問題も、内田樹さんのように自分の持ってる種子袋の中からいい具合に漬かった味噌を取り出して切り売りするような対応ではなく、一つ一つを自分の知性と身体で引き受けて呻くように解答を書いていく姿勢は誠実だなと思う。それがある意味痛々しさを感じさせなくもないところが読む人をためらわせる面なのだと思うが、しかし逆に言えばそういう状況の時にしか書けないことかもしれず、それが世界の深淵をあらわにするという面もあると思うから、そういう感じで評価できると良いのではないかと思う。
少しずつ考えたことを書いていきたい。
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