アニメ「僕のヒーローアカデミア」第3期第7話「転転転!」を見て感動しました。
Posted at 18/05/20 PermaLink» Tweet
アニメ「僕のヒーローアカデミア」第3期第7話(通算45話・5月19日放送分)「転転転!」を見て感動しました。この回は単行本だと10巻82話「転転転!」から83話「敗け」にあたる部分です。原作でもとてもよかったのですが、アニメになるとよりはっきりした部分が多く、見ごたえがありました。
ストーリーとしては、ヒーロー養成のエリート高校・雄英高校の1年生の夏の合宿(個性の強化が目的)で、リクリエーションの「肝試し」の最中に「ヴィラン連合開闢行動隊」の襲撃を受けてしまう場面です。主人公・緑谷出久(デク)はヒーローたちの親戚の子どもである洸太を空くことには成功します。しかしヴィラン連合の最大の狙いは違いました。
デクの中学からの同級生であり才能は人並み優れているものの体育祭で明らかにされた粗暴な性格からヴィラン連合の死柄木弔(しがらき・とむら)爆豪勝己(かっちゃん)を「スカウト」しようとしたのです。「かっちゃん」が「Mr.コンプレス」にさらわれそうになったところ、一度は取り返したはずだったのですが、デクはクラスメートの1年A組の生徒たちの目の前で、あと一歩のところで奪還することがかなわず、合宿は最悪の結果で終わる、という展開になっています。
原作の段階からストーリー的にとても面白い部分で、アニメでもほぼ原作通りに(ヴィラン一人ひとりの反応を後の展開のためにより詳しく描写しているところはあったものの)描写していて、初めから最後までテンションが途切れることなく一気にアヴァンからEDまでなだれ込んだ感じでした。
今回感じたことは、爆豪をさらわれるという最悪の失敗・挫折の中で、A組の生徒たちの連帯・友情がより深まったということです。ヴィラン連合とのかかわりでは、最初のUSJ(雄英高校構内))の襲撃事件、東京都下「保須市」でのヒーロー殺し事件、死柄木とデクとのモールでの邂逅と、今まではさまざまな危機にも何とか乗り切ることができ、その中で少しずつ生徒間の理解が深まってきていていましたが、「仲間がさらわれる」という「ヒーロー志望」の生徒たちにとってその存在をえぐられるような事態の中で、どんな行動を選択するか、というより本質に迫られていて、そののっぴきならない中での選択が、彼らの関係を動かすわけです。
この作品のストーリーの一つの柱は主人公のデクとライバルでもあり割り切れない関係でもある「かっちゃん」との関係であるわけです。デクにとっては幼いころから「かっちゃん」との関係は一筋縄では行きません。しかしデクはナンバーワンヒーロー・オールマイトに見込まれスーパーパワーを手に入れる。爆豪は「無個性」だとバカにしてきたデクがいきなり強力な個性を手に入れたことへの疑問と不信と苛立ちがあり、また自分がピンチの時に常にデクが「無個性のくせに」救いの手を差し伸べてきた(結局デクに救われたわけではないが)ことに、言いようのない感情を覚えているわけです。
その感情が今回、重傷を押して「かっちゃん」を助けようとしたデクに、さらわれる際に爆豪が言い残した「来んな…デク」という言葉に表されているわけですね。
デクは、「かっちゃん」がどんな感情を持っているか、わかっていてもとにかく「かっちゃん」を助けたい。そんなデクに、補習のため肝試しに参加できず、爆豪がさらわれる際にその場に居合わせることができなかった、爆豪に強い友情を感じている切島鋭二郎が、その悔しさを訴えます。そして「行動」を起こすように持ちかけることで緊張感が一気に高まります。出久たちヒーロー科の生徒たちが戦えるのは構内で教師の許可を得たときだけであり、その外で自由に戦うことは禁止されているからです。
その時、さまざまなことが生徒たち一人一人に迫ります。この切島の思いをどう受け止めるか。プロに任せるべきという意見。切島の思いに動かされるデク。保須事件での自分の暴走への後悔から激昂してデクたちを止めようとする飯田。誰に何と言われようと行動しようとするイケメンの轟焦凍(とどろき・しょうと)。ヒーロー候補生であるということはどういうことなのか。夢と理想は大きいがまだ何もすることを許されていない存在。「手を伸ばしたら届くかもしれない」のに「手を伸ばすこと」が許されない存在。その中で出した答えは一人一人違う。しかし行動はそれとは必ずしも一致しない。
しかし、そういう中でこそ一人一人の関係がより深まっていくわけですね。自分自身を振り返り、自分の出した答えに忠実に、あるいは友人のために自分の考えを曲げてでも行動しようとする生徒たち一人一人の思いを考えると、私の心にも来るものがたくさんありました。
私はジャンプでの連載を読んでいるのでもちろんどうなっていくかは知っているわけですが、この場面はやはりアニメで見ると連載以上に緊迫感が高く、感動もより深いものがあったと思いました。
ヒーローものというとヒーローの「使命感」が描かれてきたわけです。この作品でも出久の憧れのナンバーワンヒーロー・オールマイトは使命感のかたまりとして描かれていますし、雄英高校の教師たちもまた生徒たちを守る強いプロ意識と使命感を持っているものとして描かれています。
しかし生徒たちはまだそんな使命感というよりも、純粋な友達を思う気持ちや仲間への思い、自分が正しいと思うことをストレートにやろうとする、ある意味未熟だけど大人にはない、あるいは許されない魂に近い部分に突き動かされて行動するところが描かれているのが単なるヒーローものではない面白さであり、また自分の信念の身に忠実に行動しようとする「One Piece」などの「アウトロー」を描いた作品とは違うわけです。
大人と子供とのはざまの中で友情のあり方もまた複雑になっているわけで、これからの展開の中でちょっと割り切れないところも出てくるわけですが、そこがこの作品の特徴なんだと思います。マンガよりも伝統的な少年小説に近いところがあるのかもしれません。
ヒーローというのはある意味理想化された人間ですが、その理想化された姿になるための過程を描くことで人間というものの持つ素晴らしさやいやらしさを描いていくという作品のテーマは、より普遍的なものがあるだけでなく、現代的なものもあるのだと思いました。
次回の放映にもさらに期待したいと思います。いや、知っている範囲でもより凄い展開になっていくことは十分すぎるくらいに期待できるわけですが。
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