今年初めて読んだ漫画作品のベスト10を考えてみた。まずは1位から5位まで。
Posted at 17/12/31 PermaLink» Tweet
今年読んだマンガは膨大なものになるが、今年「初めて」読んだ作品でベスト10をつけてみた。もちろん従来から読んでる「進撃の巨人」をはじめとても面白い作品はほかにもあるのだが、私自身が今年初めて読んだ作品、今年出た本だけでなく過去に出ていたが今まで読んでなかった作品を含め、ベスト10をつけてみることにした。
今日はまず1位から5位。カウントダウンになってないな。
1.「シオリ・エクスペリエンス」1~9巻 長田悠幸・町田一八
この作品を初めて見たのはどこだったのかはっきりとは覚えていないのだが、神保町のヴィレッジバンガードだったかな。
地味な27歳の英語教師・紫織にひょんなことからジミ・ヘンドリクスの霊が憑き、27歳のうちに伝説にならないと死んでしまうという無理やりな展開から学校や部活ではみだしたロックが好きな生徒たちを集めてバンドを結成し、成長して行くという話。一人一人メンバーが増えて行く時の過程、紫織をはじめメンバーが成長して行く過程がとてもよく描けていると思う。「Purple Haze」「Smells like teen spirit」「Day dream believer」といったロックの定番の楽曲がエピソードに効果的に使われていて、ロックの魂というかブルースというか、そういうものを作品からも音楽からも伝えられる感じがした。絵もセリフも魅力的で引き込まれる。未熟なキャラたちが成長して行く様子が弱さでもあり強さでもある。まあジミヘン出すのは反則かもしれないけど。(笑)
読んでてじんわり泣けてくることもあるし、元気が出てきたりもするし、笑えるし、気合いも入ります。
2.「BECK」1~34巻 ハロルド作石
これもバンドマンガだが、登場人物は全てフィクション。普通の中学生・コユキがギターの天才竜介と出会ったことをきっかけにバンドにのめりこみ、数々の障害を乗り越えながらフェスやツアーを成功させ、メジャーに駆け上がっていくストーリー。「シオリ」もそうだけど、ちょっと精神的というかスピリチュアルというかオカルト的な風味を持っている。というかハロルド作石さんはどの作品もそういう要素があり、最初に読んだ「RIN」でもその部分に強く惹かれるところがあった。
とにかく面白くてどんどん引きずり込まれ、あっという間にKindleで全34巻読破した。そういう意味ではこの作品が今年の1位でもいいのだけど、やはり旧作なので1位はどうかなという思いもあって2位にした。でも1位でも良かったかな。ドキリとさせられる展開は何度もあった。
人生、自分の生きたいように生きることに限界を感じた時に読むと、しみじみと自分の方向性を確認できる、そんなところがある。
3.「ちひろさん」1~7巻、「ちひろ」上下 安田弘之
これも凄くひかれた作品。これもヴィレバンで見つけた。
「ちひろさん」では、元風俗嬢のちひろ(源氏名)が海に近い町の弁当屋で働いて、その自由な振る舞いに周りが感化されて行くのだけど、ちひろの中には底知れぬくらい広がりのようなものがあり、ときどきそれに襲われる。巻が下るにつれちひろの自由さがちょっとした軋轢を生みそうな危うさが出てきていて、その痛さが人生そのものの痛さに近い感じがする。
「ちひろ」は旧作で、風俗嬢だった時の彼女が主人公。ここでも彼女は自由なのだけど、やはりそういう業界そのものの持つ不自由さのようなものがあり、ここでの生き方の方がより苦しそうに感じさせられる。
弁当屋の店員である今は「風俗嬢」としての生き難さはなくても、「普通の女性」としての生き難さみたいなものはよりのしかかってくる部分もあって、でも逆に元風俗嬢と後ろ指を指されることで自由になる、みたいな技ももっていて、でもこれからの展開はちょっと心配だったりする。
ずっと昔、『紺野さんと遊ぼう』という作品を描いてた人だということにだいぶ後になって気付いたのだが、絵は変わらないが作風はかなり違って、でも本質はきっとそんなに変わらないんだろうなと思う。世の中は本当にいろんな人がいるけど、本当にその人その人の傷ついた部分、その人がその人でしかない部分に思いを寄せてそれを表現できる人なんだろうと思う。
和み、とか癒し、とか、たぶんそんなキーワードで語られる作品なのだけど、その裏にいかに地獄を抱えているか、だからこその癒しであり和みなんだ、というところに人間の悲しさと愛しさが見えるというか、まあそんな感じで。
4.「狭い世界のアイデンティティー」1巻 押切蓮介
「ハイスコア・ガール」が「このマンガがすごい!2013」で2位になった時から押切さんの存在は知っていたのだが、独特の絵柄に抵抗があって読んではいなかった。この「狭い世界のアイデンティティー」は確か書泉グランデで見かけたときに題名に惹かれるものがあって買って読んでみたのだが、実はすごく私の好みに合う作品なんだということが分かった。
扱われているのはマンガの世界で、編集者との暗闘とか作家同士の足の引っ張り合い、働かないアシスタントが作家を食い物にしたり、といった展開がこれでもか、これでもかと続いて、むしろ爽快感さえあるという稀有な作品。
「ハイスコア・ガール」は登場人物の心の描写が魅力的なのだが、「狭い世界のアイデンティティー」では登場人物たちが思ってることをすべて口にするというある種の地獄のような世界で、それがまた主人公によって天誅?を加えられるというダンテ地獄編みたいな爽快さと言っていいんだろう。
現在「ビッグガンガン」で「ハイスコア・ガール」の連載が再開していて、この作品を読んでから「ハイスコア・ガール」も読むようになったのだが、最初はむしろ抵抗があった押切さんの絵がだんだん病み付きになってきていて、奈良美智さんの絵みたいだなと思ったりした。
デフォルメの極端さが生み出す異様なポップ感とでもいえばいいんだろうか。私はまだ押切さんの作品の魅力を語るには語彙が足りないなと思う。
5.「絢爛たるグランドセーヌ」1~9巻 Cuvie
Cuvieさんの作品をはじめてみたのは書泉グランデで「ひとはけの虹」を見かけて買って読んだときだった。画家のラファエロが時空を超えてさまざまな創作の現場を見聞するという設定で西洋美術史の魅力を描く、という感じの作品で、何と言えばいいのか絵は少し固い印象があるしストーリーも洗練というより骨格がはっきりした角ばった感じでなんか不思議な印象があった。
ネットで調べてみるとR18的な作品も発表していることを知り、それも少し読んでみたが確かに線は「ひとはけの虹」より柔らかいし、そういう描写は読む側を納得させるものがあって、いろいろなものを持っている人なんだなと思った。
「絢爛たるグランドセーヌ」は丸善日本橋店で平積みになってた9巻を見て読む気になり、でもせっかくなら1巻からと思って読み始めたら止まらなくなって、二三日で9巻まで一気読みし、連載のチャンピオンREDもKindleで読んで最後まで読み切った。
主人公はバレエが好きな少女、奏(かなで)。とにかく前向きにひたすら努力して出来ないことを出来るようにしていくさまが小学校入学前の段階から描かれていて面白かった。今までバレエマンガと言えば印象に残っているのは「舞姫 テレプシコーラ」なのだが、こちらは主人公の六花(ゆき)が股関節が開かないという弱点を持っているのだが、奏の方は前向きで、いつも考えていて、言われたことをどんどん吸収し、しかもコミュ力最強というすごいキャラクターなのだが、こういうある意味弱点のないキャラクターだからこそバレエでやっていけるのだなと思えるところがすごい。
絵柄は「ひとはけの虹」の硬い線ではなくR18系の柔らかい線で中学生のダンサーを描くところに現れる微妙な色気がなんともいえないが、ストーリー上はつゆともそういう隙を見せず、どんどん進んでいくところがいい。「テレプシコーラ」の六花は今時にしたら珍しい感じのお嬢さんというところにやや古風でリアリティに欠ける部分を感じていたけど、奏は現代の明るい少女という感じがとてもあり、スポ根的な要素もあって純粋にエンタテイメントとして楽しめる感じがする。とにかく読んでいて元気が出てくる、そういう意味でのオススメの漫画。
こうやってみてみると、バンドマンガが2本、漫画家マンガとバレエマンガと表現系を扱った作品が多いなと思う。風俗や弁当屋は表現とは言えないだろうけど。そういうところに私の好みが現れてるんだろうなと思う。
とりあえず今の所はそんな感じで。
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