2017年に出会ったマンガ作品ベスト10。今回は後半の6位から10位。
Posted at 17/12/31 PermaLink» Tweet
2017年に出会ったマンガ作品ベスト10。今回は後半の6位から10位。
6.「七人のシェイクスピア NON SANZ DROICT」1〜3卷 「七人のシェイクスピア 新装版」1〜3巻 ハロルド作石
「RIN」の不思議な雰囲気に惹かれ、月刊少年マガジンでの連載を追っていたのが終わった後、そういえば今は何を描いているのだろうと探して見つけたのが「七人のシェイクスピア NON SANZ DROICT」。ロンドンに出てきた二人組・ランスとワースと不思議な仲間たち。実は16世紀末に現れた大劇作家・シェイクスピアは七人の合作によって生まれていた、という奇抜なアイディアにとても惹かれた。
これは実は続編で、その前に「七人のシェイクスピア」という題の作品があることを知ったのは新装版を店頭で見たから。これは丸善丸の内本店だったように思う。分厚い新装版を買って読んで、「NON SANZ DROICT」以前にこんなシリアスなドラマがあったのだと初めて知った。ランス(ウィル)とワース(ジョン)の二人と、特に詩やセリフを書く担当の中国人の少女・リーの魅力がすごい。そして最近になって現れた七人目のシェイクスピア、ロビンは父親が日本人という驚愕の設定で16世紀イングランドを舞台にどういう物語を展開させるのか、とても楽しみだ。
この話の魅力は史実に基づいて、史実の謎な部分、つまり大学も出ていない田舎者の劇作家・シェイクスピアがどうしてあのように素晴らしい戯曲や詩を残すことができたのか、という謎に一つの回答を与えようとしていることだろう。なるほど、七人で力を合わせて芝居を創作していたと考えると、ちょっとなるほどと思う。これは東村アキコさんの「雪花の虎」で上杉謙信が実は女だったという設定なのと同じく、まあそんなことないだろうけどそうだったら面白いな、と思わせるところがうまいと思う。
7.「宝石の国」1〜8巻 市川春子
この作品は月刊アフタヌーンで連載されているので「シドニアの騎士」を読んでいる頃から知っていたし、また市川春子さんの名は「虫と歌」の頃から知っていた。少し読んだことはあるのだが、その当時は面白さを発見できなかった。2014年の「このマンガがすごい!!」でオトコ編10位に入っていたのだが。
しかし、2017年の秋アニメとして10月から始まった3DCGアニメのオレンジの作品はとても美しく、最初は恐る恐る見ていたのがやがて一番楽しみなアニメになり、途中からは原作もアニメ放映分を超えないように読むようになった。そして最終的にはアニメの放送が終わってから、現在出ている最後まで読むことになった。
人間が滅び、その子孫は宝石に姿を変えて生き残った。その宝石たちが自分たちの「学校」を守るために自分たちを連れ去ろうとする「月人」と戦う。しかし主人公のフォスフォフィライトが海に連れ去れられ、海に住むアドミラビリス族と会話ができるようになったことから、滅びた「人間」から宝石たち、アドミラビリス族、月人が分かれたという話が明らかにされて、少しずつこの世界の構造が明らかになっていく。
月人との戦い以外は宝石たちは幸福に暮らしているように見えるが、その裏にある葛藤が、宝石たちの世界に崩壊をもたらしていく可能性が見える。人間とは何か、肉体とは何か、魂とは何か。そんなことにも考えが及んでいく。
アニメと総合順位をつけたら今年後半のベスト作品という感じなのだけど、マンガ単体だともうすでに評価がしにくい。今年は割と豊作だったので、こんな順位だけど、今一番先が読みたい漫画の一つであることは確か。
アニメと総合順位をつけたら今年後半のベスト作品という感じなのだけど、マンガ単体だともうすでに評価がしにくい。今年は割と豊作だったので、こんな順位だけど、今一番先が読みたい漫画の一つであることは確か。
8.「早乙女選手、ひたかくす」1〜4巻 水口尚樹
これもどこで見たのかは忘れたが、元々はジャケ買いだった気がする。最強のクールビューティーである主人公早乙女八重が、ボクシング部だがさえない男子のサトルに告白するところから始まるこの物語は、独特の間合いが面白く、また八重の純情ぶりとアスリート的に開き直っているところのギャップが面白い。最初は天界に苦労している印象があったが途中から伏線を含めてストーリーが見えてきて、最近は割と安心して読めている。何が好きって、その間合いとその絵が好きなんだろうなと思う。
2017年に第1巻が出版された作品としては、私の中ではベスト3に入るかな。
2017年に第1巻が出版された作品としては、私の中ではベスト3に入るかな。
押切蓮介さんの原作で忌木一郎さんが作画だが、基本的に押切さんのカラーがとても出ている。ただ、忌木さんの絵は押切さんよりとぼけた味が強く、その辺りが和みの性格を押し出しているように思う。妖怪のコリをほぐすマッサージ師という設定に負けないキャラの立ち方が魅力的で、この作品を読んでて逆に押切さんの独特の絵が病みつきになってきた感じがある。
1月19日に第2巻が出るようなので今から楽しみ。
1月19日に第2巻が出るようなので今から楽しみ。
10.「彼女の腕は掴めない」1〜2巻 理央
年末になってであった作品。コミックゼロサムをパラパラ見ていたら主人公の遼が浴衣を着ている場面があり、その絵に惹かれてなんとなく読み始めた。遼は生まれつき両腕がない女子高生で、腕のない身体に惹かれるアポテムノフィリアの男・白鷺に誘拐されて彼のタワマンのような広い部屋に軟禁されるのだが、腕のない自分に同情するでもなくその存在を自然に見てくれる白鷺にだんだん惹かれていく、という話。出会いはともかく、だんだんお互いに惹かれていく関係と、それぞれの持つ心の底に沈んだ何かがそれぞれを苦しめる様が自分の中にも反響している感じがする。
というわけで、今年の「自分の中での新しい作品ベスト10」。順位を意識して読んでるわけではないのでなかなか順位づけは難しいけどこういうのも面白い。
自分の中に鮮烈な印象を残したものを中心に選んだので、そのほかしっとりと自分の中で昇華され浮上して来るような作品はまた別に書けるといいかなと思う。
自分の中に鮮烈な印象を残したものを中心に選んだので、そのほかしっとりと自分の中で昇華され浮上して来るような作品はまた別に書けるといいかなと思う。
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