大塚ひかり「女系図でみる驚きの日本史」続き。
Posted at 17/09/20 PermaLink» Tweet
大塚ひかり「女系図でみる驚きの日本史」読了。感想続き。
第5講は母親の地位による子供たちの処遇の違いについて。同じ天皇の子供でも、誰の子供かによって(中宮腹、女御腹、更衣腹)その後の境遇が違って来ると。それはある程度常識にはなっていると思うけど、光源氏ですら更衣腹であったことで天皇になれなかったと作中で指摘されている、というのはそういえばそうだったなと思ったし、考えてみればエグい話なんだなと思った。
それからこちらも認識を新たにしたのが藤原道長の二人の正妻とその子たちのこと。あまりはっきり認識していなかったが藤原道長のふたりの正妻のうち、倫子腹の子供が男子は正五位下から始まり摂関になり女子は中宮になっていて、明子腹の子どもが男子は従五位上から始まり出世も遅く、女子は小一条院や源氏の室になっている、ということ。これは、特に女子の方はあまり明確に意識していなかった。道長は倫子と同居しているから倫子が正妻で明子は別宅という感じだろうけど、そんなに差がついているのだなあと。御子左家も家祖の長家も決して悪い生まれではないということは改めて思ったが、摂関家との差はそうやってついたのだなと。
また、平安時代のモテ男といえば在原業平な訳だけど、摂関期にもおそるべきモテ男がいたこと。小式部内侍の「大江山」の歌のエピソードに出て来る藤原定頼という男が当時の才女を総なめにしたイケメンだったと初めて知った。一番すごいと思ったのは「宇治拾遺物語」のエピソードで、関白教通が小式部内侍のもとに通っていたとき、鉢合わせした定頼がお経を誦しながら帰ったところ、その美声を聞いた小式部が感動して泣いてしまい、教通が面目丸つぶれになった、という話。
定頼といえば(名前も認識していなかったが)大江山のエピソードから単なる軽薄なバカ男としか認識していなかったのだけど、このように改めて示されると舌を巻くような、というかむしろマンガのようなモテ方で、これは是非誰かがマンガ化して欲しいなと思った。絶対面白いし、また平安時代に対する関心が高まるのではないか。
そのほか斎宮との密通のこと、また院政期の男色のこと、鎌倉期の貴族の性的退廃が最高権力者=天皇の父という構造(いわば父性原理か)に由来することを手塚治虫「奇子」の例を引いて解いていて、なるほどと思った。この辺私も「増鏡」を読んでなんだかすごい時代だなと思ったことがある。学校で教えられる武士の歴史とは全然違うのだよね。この辺りの描写(補講3〜第8講あたり)を読んでいると、本当に男も女も権力の道具にされていて、それをまた従容と受け入れているというか、また逆に自分が権力を握るとすごいことになるというか、フランスやイタリアでもヴァロワ朝末期とか結構すごいのだけど、ある種の退廃の相にある人間集団の一つの姿のようなものを見せられた感じがした。
それと対照的なのが武士の権力構造で、後家に強い権力が集中していたと。武家における後家の権力については以前、講談社現代新書で(今本が手元にないので書名がわからない)読んだことがあったが、それを授けるために自分の妻を息子に(もちろん母は違う)与えるというのを読んでなるほどと思った。また、源義経の母の常盤御前は一般に身分が低いとされていたが、実は事実上義朝の「唯一の後家」として厚遇された、という主張も目からウロコだった。何れにしても、徳川政権が成立するまで、武家において女性の力はかなり強かったことは間違いない。
また徳川家の徹底して外戚を作らない政策も指摘されてなるほどと思うところがあった。
男色や院政期の軽んじられた貴婦人の性の描写のあたりはやや苦手ではあったが、まあそれもまた人間の相の一つだなということもまた、逆説的だが歴史から学べることの一つかもしれない。
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