「ぼールルームへようこそ」第9巻を読みました。
Posted at 17/06/24 PermaLink» Tweet
竹内友さん「ボールルームへようこそ」9巻を読んだ。
今年(2017年)のはじめまで1年余り休載していた「ボールルームへようこそ」が、テレビアニメ化決定という驚きとともに連載を再開したのが2月号。それ以来、3、4、5月号と掲載されて6月は休みで7月号まで、順調に掲載されて、そこまでが第9巻に収録されているので、7月6日発売の8月号ではその続きが読めることになるし、その後すぐ8日にアニメ放送が始まるので、「ボールルームへようこそ」、かなり加速している感じがする。
色々なコラボも行われていて、その辺はフォローしきってはいないが、昨日(6月23日)にツタヤで9巻を買ったら進撃の巨人のリヴァイとのコラボのブックカバーがついてきた。
第8巻が出たのが2015年の10月で、8巻は2015年の8月号の途中までが収められているという変則的な収録になっている。だからその後の分、休載前の2015年8、9、12月号に掲載された分から9巻に収められていて、単行本では38話(Heat38と表現されているが、以下38話という表現で触れる)「千夏と明」が54ページと長大になっているが、その前半までが休載前に相当する。また、単行本では41話になっている9巻ラストの「着地点」が7月号では42話になっていて、とにかくこの作品は連載掲載後に単行本でいつも徹底的に修正されていて、そのあたりも通常と異なって興味深いものがある。
私は単行本8巻をたまたま買ってからこの作品を読み始めたので、その後既刊の7巻までを含めて読み切ったのだが、8巻の続き部分で連載誌(月刊少年マガジン)で読めないところがあったので、結局2015年の8月号と9月号はkindleで読んだ。(Kindleで読める雑誌ならバックナンバーももちろん見ることができるから)
8月号の15ページ目までは8巻に収録されていて、9巻の最初の章、37話「花瓶とビヤ樽」は16ページ目からになる。この部分は連載誌では40話になっていて、副題はない。最初の14ページ分が8月号(2015)収録分になる。この部分も細かい改変が多いが、単行本では読みやすくわかりやすくなっている。
例えば、賀寿に水をぶっかけられた清春が「嘘だろ」というところが「ガキかよ」になっていて、「嘘だろ」の方が清春の自問自答の天才ぽさが出るが「ガキかよ」の方が反応としてノーマルだし変な引っかかりを持たないで済む感じはする。そう、全体に改変はわかりやすく、違和感をなくす方向に行われているように思う。
だけどそのわかりやすくするための改変が新たな表現に結びつくことが多いのもこの作品の特徴、というか作者さんは意識してそのように描いているのだと思う。例えば、この単行本で最大の改変はラスト、41話「着地点」のラストに4ページ追加されているところだが、ここで「踊りにくさ」が「カップルとしての武器」に変貌したことがはっきりと理解できて、とても先を読みたくなる。ここに関してはひょっとしたら連載時に原稿が間に合わなかったからこうなったのかもしれない、とも思う(なんとなく終わりが中途半端な印象があったから)が、さすがにこの4ページがないと先がわからないので、8月号(2017)ではおそらく冒頭にこの場面が持ってこられるのではないかと思う。
このことは、連載では読んでない部分についてネットで調べた時にこの「描き換え」について触れてある記述がかなり出てきたので、そうなんだろうと思う。雑誌に掲載された時点ではまだ作品が完成していない、という作品は最近多いけれども、まあその善し悪しは別として単行本で完成度が上がること自体は悪くないとは思う。
ただその過程を見るのはとても面白いので、連載誌で追っかけてこそそれを楽しめるということがあるから、まあ本当に好きな作品には限られるが、比較していくのは楽しみだ。
9月号(2015)も41話とだけあって副題なし。「花瓶とビヤ樽」の表現はここで出てくるが、この章全体の表現としてまさにふさわしい。釘宮組を花瓶に、峰組(明たち)をビヤ樽にたとえているが、確かに千夏にそう言われるとビヤ樽にしか見えなくなってしまうから恐ろしい。(笑)回想場面でのマリサ先生のスウェイについての説明がかなり書き換えられていて、教科書的な表現が会話的な表現になっている。そしてその説明について回想する中で、多々良は千夏が、「おそらくこの子が会場で一番”美しい”」ということに気がつく場面が私は好きだ。
37話のラストの部分、明の思いが連載誌では言葉にされていたけれども、単行本では言葉がずっと少なくなっていて、ここは余韻がぐっと増したように思う。多々良と千夏のカップルの踊りを外側でみている小さな明の絵。決まった、という感じ。
12月号(2015)でも42話とだけあって副題なし。単行本では38話「千夏と明」になっている。「ビキニ跡」がモザイクになってたのが描写されてるが、これはなぜか。24ページ目までが連載中断前。話が明と千夏の過去の途中で途切れてしまっていたので、一体どうなることかと思っていた。
連載再開した今年の2月号は巻頭カラーで、扉は明と千夏のドレスアップしたカラー絵。単行本では38話の扉になってるが白黒なので、2月号は取っておいたほうがいいかな。2月号では連載中断前の最後の2ページがセリフは単行本と同じように変えらえて掲載され、甲本さん(明の父で多々良のバイト先の店主)のセリフに入っていっている。
連載時の副題は38話HomeComing。単行本では37話「千夏と明」が「お母さん友達できたよ」というセリフで終わっていて、そこから先の部分が39話HomeComingになっている。そして連載では釘宮のところに双子が現れた場面で終わっていて、なんだかよくわからなかった。
連載39話は「ゼロ和ゲーム」で扉が釘宮と双子。この絵はいい絵だと思うが、単行本ではラストのスペシャルサンクスのページに使われていた。このラストでは章分けが単行本と一致。清春による多々良の「肩甲骨はがし」が準決勝での異変に繋がる。単行本ではここまでがHomeComingで、千夏と明が悪口の言い合いのHomeに戻ったという感じなのだろう。
連載40話は単行本でも40話になり、ここで「ゼロ和ゲーム」が表題に。この言葉自体はその前に釘宮が言っているのだが。
連載41話と42話を合わせて単行本では41話「着地点」になっている。ここで富士田・緋山組の展望がようやく見える、「男役を通ってきたパートナー」の強さ。その1番の例が仙石のパートナーの本郷千鶴で、千夏は千鶴を見て憧れてダンスに本気になった経緯を持っている。連載42話の扉も好きなのだが、単行本では使われていないようだ。
今両方を見比べながら読んでみて、やはり単行本の方が圧倒的にわかりやすくなっている。極端な話、話の繋がらないところでその号が終わったりしているのは、描けたところまで掲載するという昔のマンガ家がやってたことの再現なのかもしれない。まあ読む方も連載1話の完結性を重んじるより話全体の流れを追うつもりで見た方が楽しめるということだろう。
それにしても多々良と千夏の凸凹コンビが、着地点において大化けするという展開はとてもよく、来月号以降がとても楽しみになった。
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