四月に読んだ本、続き。吉本隆明論とかヴィレヴァンとか。
Posted at 17/04/17 PermaLink» Tweet
4月に読んだ本続き。
4月13日までに読んだ本については前回書いたので、その続きを書こうと思う。
14日から16日までに買った本は4冊。うち3冊はマンガ。あとマンガ雑誌2冊。
15日。吟鳥子「君を死なせないための物語」1巻(秋田書店ボニータコミックス)。「アンの世界地図」の吟鳥子さんの新作、同じ「ミステリーボニータ」での連載。今回はSFで、近未来のニュータイプもの。詩的、物語的展開。設定が複雑でわかりにくい部分があるけど、大筋は難しくないし、「地球をただ一目見るために」結婚した短命の不治の病「ダフネー症」の患者、という、なんというかきらびやかな話。恋とか愛とか願いとか望みとかが提示されて行く華やかさが少女マンガの本道という感じ。絵柄は、萩尾望都さんの影響が強いように思う。
16日。呉智英「吉本隆明という「共同幻想」」(ちくま文庫、2016)。まだ読みかけているけれども、私はほとんどの著作を読んでいる呉智英さんの吉本隆明論。小林秀雄や花田清輝と同じく、吉本の文体は難解で韜晦しているからとても読みにくいのだが、作者はそれをすごくわかりやすく解読してくれ、目から鱗が落ちるよう。ああ、こういう読む喜びがあるということが、呉智英さんの著書を読みたくさせる魅力なんだなと再確認。韜晦した晦渋な文体でそんなに難しくない、あるいはそんなに新しくないことをさも超高度な議論のように見せる衒学的な手法を呉智英さんは一貫して批判しているが、それは日本において評論や哲学、詩論などが輸入学問として始まり、初期の生硬な訳の難解さが学の高度さと誤解され、その分野の学者たちも無駄に難しい文章を書いて来たと言う悪しき伝統があるからだと思う。私もその辺りは呉智英さんと同じスタンスだし、例えばおそらくはその延長線上で出て来た「光文社古典新訳文庫」などの試みはとてもいいことだと思っている。古事記を無駄に今っぽく訳そうとするような試みはどうかと思う部分もあるが、変な色気を出さずにただわかりやすく訳して行く試みは重要だと思う。
ちなみに、吉本隆明は私もあまり面白いと思わないのだけど、小林秀雄は今でも好きで、わかりにくい表現がだんだん理解出来て行く過程そのものが面白いなと思っている。で、理解したら結構納得するので、小林秀雄の場合は。その辺は呉智英さんとは評価が違っている。
安田弘之「ちひろさん」6巻(秋田書店)。元風俗嬢でいまは海の近くの街で弁当屋で働いているちひろさん。自分のいいと思うこと、好きなこと、に忠実に生きていて、すごく人に関わると思えば完全に人との交わりをシャットアウトしているときもある。それが自由ということなのか、ある種の壊れた部分なのか、それすらもちょっとそっとしておきたい感じ。でもある種の自由さ、風が吹き抜ける感じがこの作品のかけがえのない魅力だと思う。
ちなみに「ちひろさん」は全巻神保町のヴィレッジヴァンガードで買った。「吉本隆明という・・・」も一緒に買った。ヴィレヴァンは神保町に行く時は、最近必ず行くようになってる。行くたびに色々発見がある。
昨日は、ヴィレヴァンの魅力というものは、安定しているけれどもつまらない日常から、危険に見えるけれども魅力的な世界に誘われる、そのいざないと、そこから帰って来なければ危険だというためらいと、そのバランスの絶妙なところにあるのではないかと思った。そこにあるものは、あまり穏健なものがなくて、例えば暴力的だったり淫靡だったり背徳的だったりするものが多くて、70年代サブカルチャー的な感じがしなくもないのだけど、やはりそこにエッジの立ったものがある感じはするし、そこに行くことは自分にとってある種の今、現在に触れることなんだなと思う。
Cuvie「ひとはけの虹」1巻(講談社シリウスコミックス)。美術マンガ。登場するのはクラナッハ、17世紀オランダの肖像画家、カラヴァッジョ、ベラスケス、エヴァレット・ミレイ、などなど。物語の狂言回しに永遠の生命を持ったかと思われるラファエロが永遠の輝きを生む顔料・オリハルコンを画家たちに渡しているのだが、まだシリーズ全体の結構がよくわからない。女性美がテーマの作品なのだけど、色気的な部分がやや生硬というかあっさりしているように思った。男性の方は魅力的に描かれているのだけど。そういう意味ではBLの方に向いた画風なのかもしれない。ラファエロの活躍はもう少し読みたい。
17日。少年ジャンプ買った。「ハイキュー!」と「OnePiece」が特によかった。
*すべて購入したのは紙の本ですが、 Kindle版にリンクが貼ってあります。
*すべて購入したのは紙の本ですが、 Kindle版にリンクが貼ってあります。
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