トルコで軍によるクーデターが発生しました。とりあえずの情勢分析を。

Posted at 16/07/16

トルコで軍によるクーデターが起こりました。一時は権力を掌握したと宣言していた反乱側ですが、市民の反発は強く、エルドアン政権側に立って街頭に出た市民も多くいたようです。一時は、政権側が反乱の終息を宣言しましたが、その後も国会議事堂が爆破されるなど戦闘は継続しているようです。さきほど、エルドアン大統領が休暇先から戻り、国民に団結を呼びかけるスピーチをしているそうですが、いまのところ状況がどう落ち着くのか、先が見えません。

エルドアン政権はイスラム主義とポピュリズムを背景に権威主義的な支配を行って来て、それに対して建国の父・ケマル=アタテュルクいらい西欧化と世俗化を推進して来た軍は、政権に対して基本的に批判的であったわけです。もちろんエルドアン政権は軍内部の人事にも介入し、また反乱を防ぐ防諜も行っていたと思いますが、それでも防ぎきれなかった。アメリカ政府も反乱の予兆はなかったとコメントしていますので、本当に深く潜行して反乱は企画されていたと言うことなのでしょう。

しかし、強権的な姿勢のエルドアン政権を多くの市民が支持し、伝統的に一枚岩で行動して来た軍が割れているなど、トルコも今までにない状況に陥っていて、専門家でも先が見えないと言うのが正直なところのようです。シリアやイラクの難民の防波堤になり、NATO軍で大きな存在感をしめ、ボスポラス海峡をはさんでヨーロッパとアジアの重要な交通路を押さえているトルコの国内情勢が流動化して行くと言うことは、中東全体の安定化装置が機能不全に陥ることを意味しているでしょう。トルコはイラクやリビア・シリアのような独裁政権ではなく、イランのようなイスラム国家でもなく、エジプトのように植民地を経験したこともありません。

トルコは北アフリカ・バルカン半島・中東主要部・黒海沿岸を支配したオスマン・トルコ帝国の後継国家であり、第一次世界大戦後のトルコ革命によって樹立され、盤石な国家体制を築いて来た国です。軍事力も中東ではトップで、NATO加盟国でEU加盟申請国でもあります。

そのトルコで情勢が不安定化すると言うことは、世界の平和に取ってよいことでないことだけは確かです。

エルドアン政権は軍に介入もしていますが、トルコは南に内戦中のシリアを抱え、また多くの難民が押し寄せ、クルド人ゲリラとも戦っていますから、軍を無力化することは出来ません。ですから軍そのものを叩くのではなく、反体制派に強い影響力を持つギュレン派(ギュレン運動)を叩くことでバランスを取ろうとしているようです。

エルドアン大統領のイスタンブール到着後の会見でもギュレン運動を攻撃していましたが、ギュレン運動の側もクーデターを批判しているようです。これは表面的な類似かもしれませんが、2・26事件の時に思想家の北一輝が処刑されたのと同じような、精神的指導者としてスケープゴートにされている、と言うことなのかもしれません。

いずれにしてもまだ事態は流動中ですし、情勢分析も自分が把握できている範囲に過ぎないので、妥当でないところもあるかもしれません。

とりあえず、日本時間で朝4時半頃起きたクーデターを、10時半の時点でまとめてみた、と言うところです。

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by Luke Peterson

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