天皇陛下が位を退かれる意思を示されたと報道がありました。

Posted at 16/07/13

天皇陛下が位を退かれる意思を示されたと報道がありました。

ご高齢で、天皇という激務をこなされてきたわけですから、このあたりでお休みいただくのもよいのではないか、というのが多くの国民の意見ではないかと思います。

後継になられる皇太子殿下ももう56歳ですし、頃合いではないかという意見もあるでしょう。

ただ、これがもし実現したら、明治維新以来初めてのことになります。

(ところで、報道では退位という言葉が使われていますが、これは不適切だと思います。くらいは皇太子殿下に譲られるので、譲位というべきでしょう。日本史上では退位という言葉は使われていないと思います。)

最後に譲位された天皇は、1817年の光格天皇。息子の仁孝天皇に譲位され、1830年に崩御されました。譲位前の年号は文化、譲位後は文政に改元されています。いわゆる化政文化の時代です。ほぼ200年前のことになります。

ただ、今の法律、皇位継承を定めた皇室典範では、譲位は認められていません。皇室典範第4条に、「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する。」とあります。崩御以外の皇位継承は想定されていないのです。これは明治以降、中世近世の院や女院の宮中制度を廃止し、近代化を図ったことによるものです。

ただ、近代化も十分に成し遂げられ、象徴として日本国憲法下で政治に携わらなくなった現在では、譲位して上皇になったところで権力が分裂する危険はほぼないと言っていいでしょう。であれば、天皇陛下のご健康を考慮して譲位されるということ自体には反対は少ないのではないかと思います。

もしそうなれば、憲法と並んで戦後一度も改正されていない皇室典範が改正されなければなりません。これは憲法改正と並ぶ、大きな事件と言っていいでしょう。

改正されるべきは、先にあげた第4条。ここに譲位の規定も入れることになると思います。

それから、皇室の構成員として「太政天皇」を入れなければなりませんから、第5条の改正も必要ですし、称号関係で第23条・第25条・第27条の改正も必要になります。

天皇陛下が退位の意志を示されたとして、それを内閣の姿勢として尊重するのだとしたら、速やかに改正案は国会に上程されることになるでしょう。

安倍内閣は、いろいろな意味で戦後政治に画期を為すことになりそうです。

皇太子殿下が即位されたら、それに伴って元号法に基づき元号も改められます。天皇の崩御を伴わない改元は孝明天皇の元治から慶応への改元以来。譲位による改元は先に述べた文化から文政の改元以来になります。タイムラインではそのことで盛り上がっていました。私達昭和生まれのものは、三つ目の元号になるわけですから。

皇太子殿下が天皇に即位されたら雅子妃殿下が皇后になり、秋篠宮殿下が皇太子になる。そうなると宮家が廃止されるのか、わかりませんが、天皇の弟が皇位継承者になるのはこれも明治以来初めてのことです。兄弟間の皇位継承は1762年の桃園天皇から後桜町天皇への譲位以来。しかし後桜町天皇は女帝だったので、兄から弟への皇位継承は1663年の後西天皇から霊元天皇への譲位以来ということになります。じつに350年以上なかったことなのです。

皇室の歴史を考えて行くと、参院選や都知事選のことなどごく最近の取るに足りないことに思えてきてしまうのが困るのですが、この機会にそうした歴史を振り返ってみるのもよいかと思います。

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