月刊フラワーズ8月号でさいとうちほさんの「とりかえ・ばや」48話「闇に挑む」を読みました。
Posted at 16/07/01 PermaLink» Tweet
月刊フラワーズ8月号でさいとうちほさんの「とりかえ・ばや」48話「闇に挑む」を読みました。
さいとうちほさんの「とりかえ・ばや」ももう48話。現在単行本は9巻まで出ていて、45話まで収録されています。
男に戻り、沙羅双樹の右大将として宮廷に出仕していた睡蓮は、女に戻り、睡蓮として女東宮のもとに内侍として仕えていた沙羅双樹の手引きにより女東宮の元に忍んで行こうとしますが、それが露見し、自ら公職を辞し、都を去って自らの領地でしょう、荘園らしきところに蟄居します。一方、女東宮は健康が優れず、東宮を排して別の皇族を皇太子に立てようと言う動きが起こり、その背後に陰謀を感じて、睡蓮に連座して里に下がっていた沙羅双樹は、帝の内侍として再び宮中に戻ることになりました。
沙羅双樹は、弓弦王という少年を東宮に推薦された影に陰謀を見、その陰謀の主が銀覚という僧侶と男色家で陰謀家の式部卿宮であると知って、頼りにしている吉野の宮に文を送りますが、表立って動けない吉野の宮は蟄居している睡蓮にこのことを伝えようと睡蓮を訪ねる。するとそこには見違えるように逞しくなった睡蓮がいた、というところまでが前号でした。
48話、扉は逞しくなった睡蓮の裸の後ろ姿。ムキムキです。本編は、再会を喜ぶ睡蓮と吉野の宮の場面から。海に飛び込み、やっていたことは雀の子を救うためだったと知り「間違いなく睡蓮殿だ」という吉野の宮のセリフも可笑しいです。
吉野の宮は沙羅双樹が送って来た文を睡蓮に読ませますが、実は吉野の宮が失脚させられたのもこの銀覚という僧侶の仕業だったと語ります。
吉野の宮が「銀覚は門跡寺院の跡取りとして生まれた」とありますが、もちろん当時は僧侶の妻帯は許されませんのでちょっと表現が違うように思います。ただ、ある程度の高位の貴族の家に生まれ、跡取りでない男子は出家させられて門跡寺院に入るケースが多かったわけで、その辺の事情の説明が難しいと考えてそのように書いたのかもしれません。
銀覚は、今の帝と上皇(朱雀院)の父である安楽帝のあとを朱雀院が継ぐのか吉野の宮が継ぐのかという争いが起こった際、銀覚は吉野の宮の朱雀院の后に対する敬慕の念をことさらに広め、その結果吉野の宮は失脚し、銀覚は寺を追放されたものの鞍馬で呪術の修行をしていたというのです。
そしてその後朱雀院の后は女東宮を生んで落命した。今回も銀覚は不幸を巻き起こす、と吉野の宮は言います。睡蓮はかたじけない、と宮に礼を言いますが、東宮の名誉を守るために今は宮中には戻れないと言います。しかし、都に帰らなくても出来ることをなさねばならぬと思っている、と言います。その表情は、きりっとしたとても男らしいものでした。
一方、「睡蓮の内侍」として宮中にいる沙羅ですが、帝の覚えがめでたいこと、また親王となった弓弦親王の世話係として働いていることを他の女房たちにやっかまれています。実際、帝はさりげなく沙羅を口説き続けていて、つい身をまかせそうになっているのですが、睡蓮からの手紙で銀覚の悪事のしっぽをつかまなければと思っています。
弓弦親王の元へ行くと、親王は目を開けたまま寝ています。これは異様ですが、なにか銀覚に操作されているということを意味しているのかな、という気がしました。親王は帝から帝になる者の心得の書を貸し出されて読んでいたのですが、子どもには難しかったのですね。そこに式部卿の宮が来て親王は蹴鞠を始め、その最中に沙羅は式部卿の宮に銀覚と親王と宮の関係を尋ねたのですが、菩提寺の霊林寺の別当が銀覚だったという関係しかない、と言います。一方、親王は宮と沙羅を父母のように感ずる、と親しみを述べますが、式部卿の宮は沙羅に、親王は尚侍が帝の御子を生むことを恐れている、と告げます。自分と親王が敵対する関係にあるということに気づいた沙羅は悲しいと思いますが、そこではっと、銀覚が最も恐れているのが自分であり、自分が帝の御子を生むことを恐れているのだということに気づきます。
そこで、沙羅はそこにやって来た十良子に沙羅は「内侍が身籠っている」という噂を流させることにしたのです。女御やその母たちはショックを受けるわけですが、一番驚いたのはやはり銀覚。「あまりにまずい」と焦ります。そこできっとアクションを起こすことになるのでしょう。沙羅は、そこで銀覚が動くことを狙い、そのしっぽをつかもうとしたのですね。
しかし、その噂を帝自身が聞いたらどう思うでしょうか。ちょっとそこまで考えてなさそうなところが沙羅っぽいなと思うのですが。(笑)
一方睡蓮は鞍馬山に向かいます。そこに銀覚がなした呪術の証拠があるに違いない、と睡蓮は思ったのですね。山深い道の奥に僧侶に扮したと思われる睡蓮たちが向かいます。というところで今月はここまででした。
今月はとても面白かったです。どうも私は、こういう陰謀とそれを打ち破る主人公たちのバトルみたいなものみたいなのが好きらしくて、感想を書きたくなるのですね。沙羅もいきなり生き生きしているのはいいのですが、帝がそれを聞いてどう出るのか、ちょっと心配です。
この物語、最後に入れ替わって(おかげで感想を書いていても沙羅双樹(女)の話なのか睡蓮(男)の話なのかわかりにくくなってしまっていると思うのですが^^;;)めでたしめでたしで終わりだと思っていたら、そのめでたしに至るまでが結構波瀾万丈で、いろいろ楽しませてもらえます。次回も楽しみにしたいと思います。
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