柴田ヨクサル・蒼木雅彦「プリマックス」5巻を読みました。「プリマックス」最高です。(笑)
Posted at 16/06/21 PermaLink» Tweet
柴田ヨクサルさん・蒼木雅彦さんの「プリマックス」5巻を読みました。
「プリマックス」、最高です。(笑)
ストーリーは、幼馴染みの男子高校生3人組が女装して3人組アイドル「プリマックス」となり、歌って踊って「カワイイ」の頂点を目指す、というストーリー。設定自体突っ込みどころはいくらでもあるわけですが、これが面白い。
この作品が面白い第一の理由は、まずこの3人組がとにかくカワイイ、ということにあります。毎回のサブタイトルに必ず「カワイイ」が入る。この巻の収録話数は38話から47話ですが、「暴発カワイイ」「スゴ過ぎるカワイイ」「カワイイMyself」「カワイイ舞台」とカワイイが続きます。原作の柴田ヨクサルさんもマンガ家ですが、この作品に関しては原作に回り、蒼木雅彦さんの絵がまた作品にぴたっとはまっている。
二つめは、もちろんキャラクターの魅力ですね。センターのモン太は小柄ながら元体操選手で身軽。忍者のように度肝をぬく動きを見せますし、気がついた時にはもう女装していて二人をぐいぐい引っ張ります。で、カワイイ。
茶髪?のツバメはとにかく女の子にモテたい。モテたいのになぜか、相手が自分よりカワイイと対抗心を燃やしてしまい、「君に勝つ」とか言ってしまう。間違ってます。でもカワイイ。
黒髪の竹雄は家が貧乏。ギャンブラーの父に四つ子の弟妹。毎食もやしの生活ですが、普段はかっこいいのに、ストレートな自分好き。理想の女性は女装した自分、というこれもまた突っ込みどころが満載なのですが、カワイイんですね。
それに加えて、いきなり現れて彼らをプロデュース?しようとしているワルコ。これは正真正銘の女子高生なのですが、とにかく性格が悪い。それが顔に表れています。でも巨乳。ぼろいアパートでひとりぐらしをしていたり、普通のマンガでは一番その謎がストーリーの核になりそう名キャラクターなのですが、この3人のカワイさにこのキャラが霞んで見えるところがこのストーリーの一つの仕掛けがある気がします。
三つめは、彼らのステージ。オリジナル楽曲ばかりですが、学園祭で歌って踊ったり、YouTubeでPVを作ったり、そのステージ描写がいい。最高なのはこの5巻に収録された「24時間アイドル大戦」で、地下アイドル?「アイサキアオ」に3分だけ時間をもらって歌い踊る場面。最初にワルコの「毒の海」で滑りますが、改めて竹雄の「もやしの詞」を歌ったときの緊張感の高さ。そしてなにより、「でも!でも!でもでもでもでも!」の場面のカワイさ。そしてラストで「ドン!」と来る超反応。この43話、ヤンジャンに掲載された時にはもう何回も読んで、これをきっかけに全巻揃えることになったのですね。
そしてこの作品が面白い最大の理由は、とにかくこの3人がカワイイに向かって「まっすぐ」なところです。そのあまりのまっすぐぶりは、「男子ってバカ」の世界です。どれだけ女子っぽく、可愛いを極められるか、をあくまであまりに男の子っぽく少年マンガ的にまっすぐに目指してるところが最高に面白いわけです。
モン太はとにかくカワイイが好きで、カワイイのためなら何でもやる。それが行き過ぎて誤爆して周りから引かれることもしょっちゅう。ツバメはとにかく女の子にモテたい、彼女が欲しいのに女の子が可愛いとつい対抗心を燃やして「君に勝つ」、と言ってしまう間違いぶり。竹雄は夢の中で女装した自分と逃避行に出掛け、昭和映画みたいな顛末を辿った結果女装した自分が死んでしまうと「俺—!!」と寝ぼけて叫んでしまう間違いぶり。
そう、この三人の可笑しさは、「間違った方向の努力にまっすぐ」なところなのです。
この面白さ、昔もどこかで読んだことがある、と思って思い当たったのは、小林よしのりさんの「東大一直線」でした。この作品も、バカで0点しかとったことがなく、成績表の1も1番だと勘違いするレベルの主人公・東大通(とうだい・とおる)がただひたすらに間違った受験勉強をして東大を目指すと言う物語。しかし、結局このキャラクターの熱意は作者の小林さんをも動かし、ついには東大に合格させてしまうのですね。バカの一念恐るべし。そしてそこに壮大なカタストロフが起こる。「まっすぐはコワい」ということを実感させる物語です。
「プリマックス」もそのコワさは120%発揮されてるわけですが、それは主人公だけではない。
5巻から登場した松野月子。私はこのキャラクターがスゴく好きなのですが、小学生のころからツバメが好き好きで仕方がなくて、でも告白できない。で、「自分に特典をつけよう」と決意して、「中学3年間を1年で一生分、3年で人生を3回繰り返すほどの日々を過ごし」、何と日本一のアイドルグループ「クレッセントムーン」のセンターになったのです。
・・・間違ってる(笑)
これをカラオケボックスで月子がツバメに告白するシーン、これはヤンジャンでは見てなかったので単行本で初めて読んだのですが、鳥肌が立ちました。39話「スゴ過ぎるカワイイ」ですが、スクリーンに自分が映ってるその前で、同じポーズで歌う月子の絵は、これはツバメでなくても戦慄する。そして告白。「ツバメ君がずっと好きでした!つきあってください!!!!」
・・・・
「無理」
・・・
タマシイが抜けた顔をする月子。
・・・
「スゴいよ君・・スゴ過ぎ。だから頑張るよ。君はスゴすぎるから、君に勝つ」
間違ってる。
間違った努力。
しかしそれでトップアイドルに上り詰めてしまった。
しかしモテたいくせにそこで「カワイイでは絶対負けたくない!」という負けじ魂に火がついてしまうツバメ。これもバカと言うか、間違ってますね。(笑)
このへんの月子の間違いぶりはスゴいのですが、それがあまりに暴走と言うかアイドルとしてはその「恋の力」が最大の原動力になって、「24時間アイドル大戦」でそこにツバメがいることに気づいた月子がアカペラで歌う「パワートゥーザ・恋」のステージのスゴさ。
この、どんどん間違って行くのにどんどんカワイさに磨きがかかって行くストーリーが最高に可笑しいわけです。
物語のリズムも凄くいい、というか、普通だったら一コマ置く、みたいな展開で一歩早く展開する疾走感もいいです。
このマンガの面白さ、どうやって語ったらいいのか、今までずっと見当もつかなかったのですが、「東大一直線」との共通性を感じて、とにかく書いてみました。
でも、まだまだ語り尽くせていない気がします。
これからの展開が楽しみです!
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