語るべき言葉

Posted at 16/02/21

最近、思っていることがあまり素直に言葉にならないし、言葉にしたいとも思わなくなっている。

言葉にしないと気が済まない時期もあったのだけど、言葉というものは元々多義性を持っているから、一つの思いを正確に言葉にしようとすると色々なことを考えなければいけなくなって、そうなると元々思っていたこととは違うニュアンスが生じて来て、自分の中に生じたときの思いとは別のものになってしまうので、どうも何だかがんばってまで言葉にしても仕方がない、という感じがしてしまう。

どうしても人に理解してもらいたい思いであれば、それはなんとか一番納得の行く言葉にしようと思うけれども、概してそこまでではないということが多いし、逆に「正確な言葉」にしない方がむしろ伝わるという場合もある。

「すべての人に伝えよう」として書いた、あるいは話した言葉というのは、それだけでフィクションになってしまう。すべての人に伝えるということ自体に、言葉が本来持つリアルさを損なうところがあるんだろうと思う。

思いとか、感情とか、ニュアンスが大切なのに、そのニュアンスが「誰にでも通じる言葉」にしようとする過程で消えてしまう、摩耗してしまう。映画なんかでも、ときどき、自分はそんな摩耗した言葉しか受け取っていない、受け取れない感じがするなあ、と思うときがある。作品の中の言葉ですらそうなら、自分が話す言葉は一体どうなのだろうと。

そんなふうに言葉が失われて行く、どこかに消えて行くのを感じるのだけれど、いまの自分はそうやって言葉に対する概念を自分の中で入れ替えているのではないかという感じがする。

語るべき言葉は、もうすぐ向こうからやって来る。やって来るといいなあと思っている。

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by Luke Peterson

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