お筆先を見た。

Posted at 15/06/29

今日は久々に充実した散歩が出来た。

「シドニアの騎士 第九惑星戦役」最終回の感想を書き終えたのがもう2時前になっていて、とにかく何か食べようと簡単に支度してから出かけて、家の裏の藍屋でネギトロ丼定食。と言っても午前中に郵便局に行って公金を支払ったり定額小為替を買ったり送金したりはしたのだけど。

ダントツになりたいなら、「たったひとつの確実な技術」を教えよう――あなたの実力を全開にするレッスン
ラーセン
飛鳥新社

散歩のお供に持って行ったのがエリック・ベルトランド・ラーセン『ダントツになりたいなら、「たった一つ確実な技術」を教えよう <あなたの実力を全開にするレッスン>』(飛鳥新社、2015)。この本は昨日日本橋の丸善で買ったいわゆる自己啓発本の一種だけれども、これは何というか飛び抜けて良かった。訳者の山口真由さんも書いているがいわゆる自己啓発本というのはスピリチュアルな方向に流れているものが多いわけだけれど、この本にはそういう部分がなく、「精神的なフィットネスは単なるスキルだ」という姿勢で書かれていて、本当に目から鱗が落ちる部分が多い。

特に、自分自身の深層にある価値観と合わない目標を持ってもなかなか達成出来ない、という指摘は目から鱗だった。この本に出ている例でいえば、最も重要だと考える価値が「安定」である人が、目標として持っているものが「起業」だったりする例が、往々にしてあるのだという。そのあたりは、何だかすごくよくわかった。つまり、目標というものを考える前に、自分が大事にする価値が何かということを徹底的に考えて見定めなければならないということで、その辺りのところは自分ではわかっているつもりだったのだけど結構いい加減になっていることに気がつかされて、すごく深く納得した。

また、「価値観」とは別に「欲望」というものがあるわけで、(価値観は長期的なもの、欲望は短期的なものという見方)「優先したい価値観」と「譲れない欲求」を知ると「人生の核心」が見えてくる」という話は本当に納得出来た。まだ読みかけなので全部は言えないけれども、61/246だけ読んだだけでも、買ってよかったと思う。

ネギトロ丼と白玉ぜんざいを食べたあと駅まで歩き、どこに行くかを考える。自分の本当の望みは何か、ということを考えているうちに、自分は実は「真ん中」に行きたいと思っている、という感じがしてきたので、思いついて六本木一丁目の書原に行ってみることにした。東西線から銀座線に乗り換え、溜池山王で南北線に乗って六本木一丁目で降りて行ってみると、書原だったところが大戸屋になっていた。まあ苦笑いだが、今日は動じない。というのも、今日の運勢と行動の心構えを問うために立てた易の卦が「坎為水の上六」といういわば大凶の卦だったからだ。まあつまり、どうせろくでもない運勢なので、こういうちょっとしたところで「ついてない」方が、「凶を消費する」だろうという感じがするからだ。しかしそれにしてもいくところがないので、とりあえず六本木まで歩いて、青山ブックセンターに行くことにした。

六本木という街は地下鉄で降りてすぐ何かの施設に入るというパターンが多いのであまり気がついていなかったのだが、実はとても坂の多い町だ。新しい複合施設のビルがいくつもあるが、裏道に入ると結構背の低い民家もあって、そのギャップが面白い。青山ブックセンターで本をいろいろ見て、面白いなと思った本はいろいろあったのだけど買わなかったり買えなかったりした。

買えなかった本がチャールズ・バーンズ「ブラックホール」という本なのだが、今Amazonで見たら注文出来たので買うことにした。アメリカのオルタナティブコミックの「帝王」だそうだが、ちょっと面白そうだ。

ブラック・ホール (ShoPro Books)
バーンズ
小学館集英社プロダクション

で、結局何も買わずどの店にも入らなかったのだけど、さてどうしようと考えて地図を見てみたら、国学院大学まであまり距離がないことがわかったので、歩くことにした。

というのは、国学院大学博物館で「教派神道の教祖と儀礼」という企画展をやっていて、これに興味があったからだ。それに、期日を確かめてみると6月30日までだから、今日しか行く日がない。タクシーで行こうかとも思ったが歩けそうだったので歩くことにした。

六本木から渋谷に向かって歩くと、途中ものすごい下り坂になり、西麻布の交差点で底を打って、また南青山七丁目に向かって上がって行く。西麻布が谷底だということを、バスではしょっちゅう通っていたはずなのに気がつかずにいたが、歩いてみると本当によくわかって面白かった。港区から渋谷区にかけて、本当はすごく起伏に富んだ街なのだ。

依然行ったことがあるイタリアレストランアントニオの角を左に曲がり、さらに二つ目の信号を右折して国学院へ。場所が分からなくて結局本館で案内の人に場所をきいて、博物館へ行く。

これがすごく良かった。

教派神道というのは神道十三派と言って明治初年に宗教として認定された神道大教、黒住教、神道修成派、出雲大社教、枎桑教、實行教、神道大成教、神習教、御嶽教、神理教、禊教、金光教、天理教を指すのだが、今日では天理教・金光教は抜けて大本が入ったりして、当初とはかなり違っているようだ。

私は天理教の中山みきとかの関係の遺物が見られるかと思っていたのだけどそういうことでそれはなくて、でも例えば富士講が扶桑教と實行教になったというのは初めて知ったし、御嶽教ももともとは御嶽講だったというのも初めて知って、自分の中の知識が色々とつながった部分があった。

とはいえ、一番今回よかった、衝撃的だったのは、大本の教祖・出口なおの「お筆先」の実物が見られたことだ。お筆先というのは「艮の金神」が文盲の彼女に憑いて彼女に自動書記をさせて書き続けさせたというもので、それを女婿の出口王仁三郎が整理し「大本神論」として発表したものだ。今まで色々な聖遺物のようなものは見たことがあるけれども、これはモノホンと言うかまあ出口なおが書いたということ自体は少なくとも本当だと思うし、何というか「いいものを見た」という強い感想を持った。

その後、渋谷駅に向かう学生の群れと一緒に歩いて行くうち、金王八幡宮に出た。長年渋谷をのたくっていたのにこの神社に来るのは初めてで、ゆっくり参拝して、渋谷との縁ももう一度結べるように祈ってみたりした。さらに渋谷駅まで歩いて、さてどうしようかと思う。本来、池袋のジュンク堂か神保町かどちらかに行くつもりがあったのだが、実際渋谷まで来てしまったので込む時間にわざわざ渋谷から池袋まで移動するのも馬鹿げてるなと思い、卦を立ててみたら天沢履の九四という卦。天は北西だし沢は西だから池袋(北)は指してない。それにこの爻は虎の尾を踏むがついには志を得られる、といういい卦なので、渋谷の西側に行くと良いということで、いくつかの書店に行ってみた。

最初にハチ公前の大盛堂。昔は公園通りにあったが縮小されてセンター街の入り口に来た。昔は渋谷で一番大きな書店だったのだが。それからBEAMSの地下のまんだらけに行ってみたが、どうも理解不能の空間で可笑しかった。さらにその3回のアニメイトにも行ってみたが、腐った感じの女性が多くてここもどうも違う感じがして早々と退散。まあでも面白かった。

それから東急本店のジュンク堂へ。今はここが渋谷最大の書店らしい。書籍を見ているうちに疲れてきて8階の喫茶店へ。そこでしばらくラーセンの本を読んでまた目から鱗。チェリータルトもおいしかった。

煌く易経―未来に生きる東洋の神秘的精神
遠山尚
明徳出版社

それからジュンク堂へ戻ってじっくり本を見たのだが、面白そうな本を探せば探すほど出て来る感じ。とくに、日本文化論や民俗学関係の本が立ち読みしてもどれも面白く、また改めてそれを目的に来てみようかと思った。それから易関係の本を調べているうちに遠山尚「煌めく易経」(明徳出版社、2015)という本を見つけ、各卦の解釈がとても面白かったので買った。そのあと絵の技法関係の本をいろいろ見たのだが、荷物になるなと思って結局買わなかった。しかし、結局8時過ぎまで本をいろいろ見ていたのでかなり充実した。これだけ本をじっくりと品定めしたのはすごく久しぶりな気がした。

ジュンク堂は池袋も良かったが、ジャンルによっては渋谷店の充実ぶりは驚異的だと言えるのではないかと思った。もちろん、池袋店ではそこまでこのジャンルをじっくり探したわけではないので単純に比較は出来ないのだけど、渋谷という街は大学に出てきてから20年近くうろうろしていた街だし、最近はご無沙汰だったが歩いているうちに何だか懐かしさが復活してきて、また通ってみてもいいかなとさえ思えた。

さて夕食はどうしようか、と東急本店どおりを歩いているうちにふと横道にそれ、ああそうだ百軒店の喜楽にタンメンを食べに行こう、と思いついた。以前は喜楽のタンメンは渋谷の散歩の定番だったのだった。満席でちょっと待ったが久々のタンメンはやはりおいしく、充実した締めになった。

途中までは凶を引き摺っていたけれども、どうも出口なおの「お筆先」を見てから、何か流れが変わった気がする。そういう意味でも、本当にいいものを見たという感じだった。

帰りに井の頭線の駅の前を通ったのが何ともいえず懐かしく感じた。駒場にいた時期が長かったし、何か井の頭線渋谷駅というのは自分に取って一つの「起点」なんだなと思った。啓文堂書店を少し見て、半蔵門線に乗る。

帰宅したらもう10時前。本当に久々に充実した散歩だった。

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by Luke Peterson

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