文化に関わろうとする人間が考えるべきこと
Posted at 14/11/06 PermaLink» Tweet
しばらくこちらのブログを書いてなかったのだけど、復活させようと思う。
書くことがなかったわけではないのだけど、まんがブログを書いていると何となく文章表現欲自体はある程度満足してしまい、また時間的体力的な余裕のなさも手伝って、なかなかこちらのブログは更新出来ないでいた。
ただ、やはり表現したいことはマンガのことだけではないし、そういうことは主にツイッターに断片的に描いていたりはするのだけど、最近ときどき長い文章を140字に区切って何度も更新してたりして、それならブログを書いても同じじゃないかと思ったのだった。
文章を書いていてもそうだけど、何というかなかなかオリジナルな、創作的なことが出て来ないのは、何というか私が世界に関心と期待を失ってるからではないかという気がして、それはあまり良くないなと思った。
人間は、あるいは世界は、実際にはどうであり、またどうあるのがいいのか。現状と理想、というかそういうもの。
よく理想を失う、と言うけれども、それはただ理想だけのことでなく、現実とか現状とか言うものを全体的にきちんと認識しなくなる、ということもあるのではないかと思う。
現実をきちんと見ていれば、これはどうなの?と思うようなことがいくらでもある。しかし、「目の前の現実」レベルで毎日その対処に追われていると、その背後にあるより大きな現実とか、あるいは今はとりあえず対処出来ないけどそのうち何とかした方がいい現実みたいなものがそのままになってたりして、だんだん現実そのものを見なくなって来るのだと思う。
理想を失う、というのはつまりは、現実をきちんと見られなくなっている、ということから発しているのではないか、と思ったのだった。
現実の世界はどうなっているのか。
世界規模、国家単位の世界規模なことで言えば、冷戦時代には冷戦構造というものがあって、そこからはみ出すものがあってもそう大きくはない、大体冷戦構造の枠組みの中で物事は起こる、というわりと単純な世界観があったし、まあいまでもそこから本当には抜け出せていない人は結構多い。
冷戦崩壊後はアメリカが「唯一の超大国」になったわけだけど、これは今から思えばアメリカという国にとっては分不相応なことだったのだろうなと思う。オバマ政権は世界におけるアメリカの役割を縮小しようとして、四苦八苦している。日本もそうだけど、地域の危機に対して「アメリカだのみ」の構造があちこちでできてしまっているからだ。
アメリカが分不相応だというのは、アメリカ自身がそういう国家や人々に対して自分を頼らせるようにしむけて行ったということがあるわけで、自立しようとする動きにはかなり冷淡な態度を取ることが多い。日本はアメリカに対して特に経済的なカードを沢山持っているからまだつなぎ止めてはいるけれども。
冷戦後の唯一の超大国であるアメリカとその価値観に対し、世界の諸々の民族、国家、宗教、まあ一概にそんな言葉でくくりきれない数々のアイデンティティが牙を剥いてきた。
その中で一番大きいのが中国アイデンティティとイスラムアイデンティティだ。
中国は急成長する経済力と、それによって増強を繰り返す軍事力、そして高圧的で術数的な政治力でアメリカに対抗する存在になって行き、地域において最も「反抗的」な日本に攻撃を繰り返すようになってきた。
アメリカは伝統的なアジア政策において日本派と中国派が繰り返し覇権を争っているけれども、今の国務長官のケリーはどうやら明確な中国派のようだ。2年後ヒラリー・クリントンが政権を取れば彼女の国務長官としての従来の政策からいえば日本の立場は強化されるし、また共産党嫌いの共和党が政権を取れば同じことが起こるのではないかと思う。
しかし、1840年のアヘン戦争以来の東アジアの近代170年間において、アメリカは本当の意味で「超大国」であった中国と対峙してきた期間はあまりないから、「中国の脅威」を「ソ連・ロシアの脅威」と同等に感じた経験は本当にはないから、日本はいざという時になるとアメリカが中国寄りになると言う危険を常に感じざるを得ない。
イスラムアイデンティティは、キリスト教的、西欧近代的な価値観と相容れない部分が本来的にある。もちろんあらゆる思想・宗教にはお互いに「相容れない」部分があるはずなのだけど、最近のイスラムのラディカリズムには特にその傾向が強くなっているように思われる。
イスラム教徒にとっては、現代は「歴史の終わり」などではないだろう。
911を頂点とするイスラム過激派のテロリズム、タリバン運動とアフガニスタンにおける仏教遺跡破壊などが以前は目についたが、本来は世界を一家とするイスラムの変形としての王政国家の伝統と西欧植民地主義、また近代主義や国家主義、社会主義の混合体として生まれたイラクやシリア、エジプトやリビアの独裁政権の崩壊によって、そこには西欧的な民主主義が生まれるのではなくて、より伝統的な部族主義と、よりイスラム教の原理に忠実であることを主張する「ISIS=イスラム国」が生まれ、勢力を伸長しつつあるということは、むしろういう超原理主義や超部族主義の復権や再生をアメリカ(と主にイギリス)がアシストした、と考えていいと思う。
アメリカは、これらの問題、つまり「世界を背負うこと」に耐えきれなくなってきている、のだろうと思う。
冷戦時代は2つの焦点があることによってわりと簡単に求心力を聞かせることができたが、今は遠心力の方が強い。ケリーは中国をもう一つの焦点とすることで冷戦構造の再現を狙っているのかもしれないが、ソ連のような「社会主義の正義」を中国は担っていない。中国はどんな正義も担ってはいないのだから、単なる強国・大国、つまりは21世紀にアナクロニズム的に出現した単なる帝国主義国に過ぎない。
アメリカの自由の夢、繁栄の夢も、ソ連の社会主義による平等の夢、幸福の夢も、中国は担っていない。
本来のイスラムの大義を実現する、と主張しているイスラム国の方がまだそういう夢を提示している部分でリードしているわけで、だからこそ多くの国々から人々が参加しようと集まって来るのだろう。
イスラム国はまだ勢力として弱体だから、これからどうなって行くかは分からない。あまりに西欧的価値観(人権思想や近代国家的な生活感みたいなもの)を否定しているので、例えば共和党が政権を取ればイラク戦争並みの戦力を送り込んで完膚なきまでに殲滅する可能性はゼロではないとは思う。それで何が解決するかと言えばイラクやシリアやアフガンの状態がさらに絶望的になるだけだとは思うが、そのあとにどんなものが出てくるかはもはや予想出来ない。
そういう世界の中で、日本がどう生きて行くか、というのが一つの課題。
一つには、「諸アイデンディティの勃興」の流れの中で、日本的なものを復活させて行くという流れ。
ただこれはなかなか文化的な方へ行かずに、アメリカよりも中国韓国に矛先を向けたネトウヨ的な方向に行っていていまのところあまり生産的ではない。
もう一つは中国に対抗しつつアメリカ的な資本主義の枠組みの中で生きていくことを目指す動きだけど、それは弱者、というか労働者切り捨ての方向へ振れ過ぎていて、このままでは国民的な一体感自体が損なわれるほどの階層分裂に発展して行く可能性があり、そこらへんのところは政治的に考えられて行かなければならないと思う。
こういう2つの流れの中で、文化的な意味での日本的なものを育んで行くことこそが「諸アイデンティティの勃興」の流れの中で日本を文化的に埋没させないことでもあり、また階層乖離・分裂方向にある日本人の求心性を確保する上でも重要なのだと思う。
実際には様々なカルチャーはもっと分裂傾向にあるとも言え、カルチャー自身が求心性を持つことはかなり困難だろうとは思うけれども、今日本に生きる、文化に関わろうとする人間が考えるべきことは、そういうことなのではないかな、と思った。
とりあえず今日は、そういう結論で。
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