コミックリュウ9月号で、ふみふみこさんの『ぼくらのへんたい』第26話「二人の告白」を読みました!
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コミックリュウ9月号で、ふみふみこさんの『ぼくらのへんたい』第26話「二人の告白」を読みました!
この内容は、まんがブログ『個人的な感想です』からの転載です。(アメブロ版 FC2版)
「ぼくらのへんたい」、先月は感想を書きませんでした。なんというか、書けなかったんですよね。ちょっとなんというか、どう書いていいか分からなくて。でもその書けなかった感じも、今月号の26話を読んで、少し分かったというか、整理がついたというか、まあその感じも、今月の感想を書きながら少しずつ書ければいいかなと思います。
まずはまりか=裕太。先々話で性同一性障害の病院にかかり、お母さんにも納得してもらい、そして学校でも話がついたのでしょう、まりかは「晴れて」女生徒としてセーラー服を着て登校することになりました。そしてその初日、2年生になって同じクラスになっていたともちが、ぴったりとガードしています。ともち、1年生の時はセーラー服で通ってたくせに、まりかと一緒にいると本当にナイトみたいで、口うるさいくらいです。まりかのことが本当に好きで、手を出しちゃいたいくらいなのに出せない、ともちも可愛いです。
「今日から青木は女子生徒として登校することになりました。みんなに協力してもらうこともあるかもしれない。何か質問等あれば先生に何でも聞いてください。」
うーん、一昔前では考えられませんが、今では可能になったのでしょうか。多分先生方、学校現場でもいろいろあっただろうと思うのですが、このあたりはすんなりと担任の先生から紹介されています。サイは投げられたと言う感じですね。
女子生徒が集まって来て「青木くん凄いねー!」と言っています。「そっちの方が似合ってるよ」と言われてまりかも「ありがとう。うれしい」と言っています。「青木くんじゃないのか」と言っているところに「まりか、って読んでるよボクは」と割り込んで来たのがともち。周りの女子生徒もその素敵なナイトぶりに「な、夏目くん!」と思っています。ふみさん、ともちのこと好きなんだろうな、と思います。(笑)でも好きなだけに、きっとともちはまりかとは幸せになれないんだろうな、とか余計なことを考えてしまいますが。(笑)
一方、その他の生徒たちからは「まじかよ」「トイレとかどうすんだろ」と言ってる声が聞こえ、ともちは「ちょっと!聞きたいことがあるなら」と声を荒げますが、まりかは「大丈夫ともち。だいじょうぶだから」となだめます。ほおづえをついて見ている色シャツを着た男子生徒。この子は、まりかを「女みたい」といじめた生徒でしょうか。
放課後の家庭科部。あかねが「もーほんとびっくりだよ!」と言っています。幼なじみの仲のいいあかねにも、今日まで明らかにしていなかったんですね。「学校ずっと休んでると思ったらいきなり女装して来るんだもん」と言うあかねにともちは「女装っていうのやめなよね」と注意しますが、謝るあかねにまりかは「ううんいいよ気にしなくて。てかともちが気にし過ぎ」といってともちは「ええ〜ひっどーい」とか言っています。「心配かけてごめんね」というまりかに、あかねは「ほんとだよ〜も〜」とヒジでつつきます。このあかねの明るさは、まりかもずっと救いだったわけですよね。
そして1年生のポニーテールの子。(今手元に単行本がないので名前が分からない!)ずっと「青木裕太」に憧れて来たのですが、セーラー服姿を見て「と、とっても素敵です!」と思わず拳を握りしめて叫んでいます。(笑)「やっぱり素敵…!どうしよう。私このまま危ない道に行っちゃうのかな…」と思ってます。何て言うか可愛いんですが、これも深刻になり始めるときりがない思いではありますよね。いまのところ、幸せそうだからいいんですが。(笑)
帰り道、「今度田村さんと会おうと思ってるの」というまりか。「多分また傷つけたから」というまりかに、「なーんだ。二人とも勝手にそう思ってるだけじゃん。タムリンもそう言ってたよ」と言うあかね。「でも一番苦しいのは田村さんじゃないかな」と言うまりかに、あかねは「仲直りできるといいね」と言うのでした。
そして予備校の帰りにあかねとあった田村(パロウ)は、今度の日曜にまりかと会うよ、としれっとした顔でいいます。「どうして裕太くんと僕が仲良くするとキミが嬉しいのか」と言うパロウ(タムリン)に、「え〜なんで?好きな人同士は仲良い方がいいじゃん」と言うあかね。
人ごみの中でタムリンの後ろ姿をみてあかねは、「わたしたぶん、タムリンのことが好きなんだと思う」といいます。「あ、友達としてじゃないから!」と叫ぶあかね。周りの人はみな心の中で「告白した」「告白した」と思ってるのが可笑しいです。「こないだ裕太と話してて気づいてさ。いろいろ考えたんだけど気づいてるのにこのまま黙っておくのも気持ち悪いなーと思ってて」と言いながら顔にボッと火がつき、走り去るあかね。本当にあかねのキャラはこのマンガの救いだなと思います。
「……また逃げられた」と微苦笑するパロウ。フッと悪そうな顔をして笑い、すぐに落ち込み、「ユイに会いたい」と思うのでした。でも家でユイに迫って拒絶されて、それっきり会えていないパロウは、ただその思いを胸に押し込みます。
一方のユイ(亮介)。姉のユイを失って気が狂ってしまった母を支えて、ずっと家で姉の格好をして過ごして来た亮介ですが、結局そのことがつきあっている(ユイは本当はまりかのことが好きなのですが)はっちにバレてしまい、はっちの両親がユイのお母さんを病院に連れて行き、入院させてしまいました。
私は正直言って、この展開がどうしても納得がいかなくて、先月は感想が書けなかったんですね。確かに、ユイのお母さんは素人の、しかも中学生の子供の手に負える状態ではないのは確かです。そして、そんな母親を見限った父親は外に愛人(それもなくなったユイのバレエ(だったっけ)の先生)を作り、それを亮介に紹介して、それに反発した亮介は父とも完全に音信を絶っていたのでした。だから、そのことについて誰にも救いを求められない、孤立した、本当に詰んだ状態であったことは確かで、そういう「大人」や「医療」が介入しなければ、この状態は解消できなかっただろうな、と言うことはもちろん理屈の上では分かります。
それはまりかがずっと「自分は本当は女の子だ」と思って来た中で、あかねと言う味方を作り、そしてパロウやユイという悩みを共有できる友達、仲間を作って頑張って来たことが、結局は「性同一性障害」と言うより大きな一般性に解消されて病院に行ってその協力で生き方を変えることが出来た、と言う展開に、よかったねと思う一方やはり引っかかりを感じざるを得なかったことと同じなんだと思います。
まりかは今のところ、そのことについてはおそらく、よかったとしか思っていないような感じの描写ですが、ユイもまた、病院で呼ばれるのを待っている時、はっちに「ありがとう」と言っているのをみて、まあそう言うしかないんですけど大人なら、でも中学生である亮介にどうしてそう言うことを言わせなければいけないのかと、なんというかいたたまれないものを感じたのでした。
今回、まずユイはいろいろあったお父さんが家にやって来て(これもはっちの両親の協力でしょうね)、お父さんの住まいに引き取られることになります。とりあえず学校に行けるだけの荷物を持って、寝床と新聞とビールとテレビとパソコンとティシュペーパーしかない父親の部屋に行きます。「すまなかった」と言う父親に、亮介は、「オレが今までやってきたことはなんだったんだろう」と、暗い涙の海の中で思います。なんだったのかな、姉ちゃん、と尋ねても、ユイは「SA-NE」と言うだけでした。
でも、正直言って、このコマで、というか見開きで、私はとても救われた気持ちになりました。やっぱりそう思ってたんだよね、と。出来ないながらも一生懸命、とにかく自分が一番いいと思うことをやっていた亮介。確かに大人の介入によって、普通の意味で「いい方向」に行ったことは多分間違いないんでしょう。でも、亮介の心はどこに行くのか。「亮介は自分をごまかすのが上手だね」でしたか、これも正確な表現が書けないのが残念ですが、そう言われながら、傷つきながら、でも自分が信じたようにお母さんのために、そして自分のために走ってきた亮介。なんだったんだろう、と涙を流せて、でもそれが本当に一つの救いになったような気がします。明日、亮介がどちらの方向に向かって走って行くことになるのか、それは全然見当がつかないのですが。
そして再び、お洒落な店で会うまりかとパロウ。パロウはユイのことを尋ねます。「あれから連絡取ってません」というまりか。「学校では?」と聞かれても、「わ、私ずっと学校休んでたから」としか答えられませんでした。「そうよね」と言って下を向くパロウ。まりかは、何を思っているのでしょう。
「病院行ったって後藤さん(あかね)から聞いたから」と言うパロウに、まりかは「そう言う専門の先生に見てもらってただけでからだは元気なんです」というまりか。「夏休みあけても学校行けてなかったからこのタイミングでって話になって」と。
パロウは、「正直驚いたわ。強いのねあなたって」と言います。そうですね、うん。分かりました。まりかは、大人の介入によって自分が変化させられたと言うよりはむしろ、大人の介入、医療の存在と言うものをむしろ「利用」して、自分の「女の子として生きる」と言う思いを実現させたんですね。
自分の意に反して大人の介入を呼び込んでしまった亮介と、むしろ大人を介入させてでも自分の意を通したまりか。だからまりかに、迷いはないわけなんですね。そうか、ようやく分かりました。
「強いわけじゃないです。ただもう、いつまでも泣いてばかりじゃいられないから。それにこうすることでしか、生きていけそうになかったから」と言うまりかは、むしろ一点の曇りもない笑顔を見せています。
でもそのまりかが、言い直します。「でも、やっぱ強いかも」と。
え、という顔をしてまりかを見るパロウに、まりかは「私、相当打たれ強いみたいなんです。嫌がられても、馬鹿馬鹿しいっていわれても、他にもパロウさんはいろいろ言ってたけど、最初からずっとこの気持ちは変わらないみたい。わたしやっぱり、パロウさんが好きなんです」と言うのでした。
うーん。
ここまで来るとまりかめんどくさい、と思ってしまうところもないわけではありませんが(笑)、まあ一途な子というのはそう言うものですよね。実際、この物語の三人の中で、本当に一番強いのはまりかだと思います。そして、一番男の子で、そう言う男の子の中途半端さが一番現れている(結局男というのは挫折しないと成長できないんだなと思いますが)のがユイで、そして一番暗いものを抱えているパロウ、暗いものに引かれてしまう、暗い淵に引きずり込まれてしまうパロウはどうなるのか、どうするのか。
んまあ、なんというか、やはり私は亮介に一番思い入れてしまうところがあるので、なんか前話は手が止まってしまって書けなかったのですが、今話はだいぶ心が動きだした感じがあります。でも、物語が始まった頃に比べるとこの三人も彼らを取り巻く世界もだいぶ変わってきましたし、本当に「現実」というものの中で彼らがどう懸命に生きてるか、という感じになってきました。
私はどちらかと言うと、ある種のファンタジーとしてこのストーリーを読んでいたところがあったんだなと思います。だからあまりにリアルな「母を精神病院に入院させる」という展開は、どうしても受け入れられなかったんだなと。これは、宮部みゆきさんの「ブレイブ・ストーリー」を読んでいて、前半部分のどうしようもない現実世界の展開を吐き気を催しながら読んでいたことに近いなと思います。幻想世界に行ってからの話はわりと好きなんですけどね。
まあそう言う意味で、このストーリーは徐々に現実世界に舞い降りてきている感じがしますし、新しく行き直すことが出来たまりかが、ユイやパロウにとっても一つの方向性を指し示す灯台のようなものになるかもしれないとも思います。
ユイはどうなっていくのかな、とやっぱりそれが一番気になるんですけどね。(笑)
次回も楽しみにしたいと思います!
月刊 COMIC (コミック) リュウ 2014年 09月号 [雑誌] (2014/07/19) 不明 商品詳細を見る |
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