何となく沈んでいる/大今良時『聲の形』3巻をようやく読めた。
Posted at 14/03/22 PermaLink» Tweet
聲の形(3) (少年マガジンコミックス) (2014/03/17) 大今 良時 商品詳細を見る |
昨夜から何となく沈んでいて、気合いが入らない状態が続いていた。仕事は早めにあがれるように時間設定をしたので、早めにご飯を食べて早めに寝た。久しぶりに12時前に寝て、起きたら7時だったから、結果的には7時間も寝たことになる。最近では5時間前後の睡眠が続いていたから、だいぶ寝不足感があったのだけど、今朝は久しぶりにゆっくり寝た感。まあそういう意味ではたまには気分が沈むのも悪くない。
何となく食欲がなくて、朝もあまり食べず、部屋に戻ってからもちょっとごろごろしていて、何をするでもなく時間が過ぎてしまい、過去ログを使ってブログを二つ更新はしたけど、新しい文章は書けていなかった。
出かける準備をしないといけない時間になってとりあえず動き始めたら何となく元気が出てきて、荷物を運び、家に戻って昼食を食べたとき、ポークチョップの付け合わせにつけてくれた獅子唐が、なんだかすごくさわやかで美味しかった。今が季節なのだそうだ。春の、さわやかな感じがする。
大今良時『聲の形』3巻。ようやく読めた。このマンガは、私にはとてもハードで、読むには気合いが必要だ。発売日(3/17)に買ったのに、読めたのがようやく今日(3/22)だから、5日間も読もうか読むまいか悶々としたことになる。ハードだというのは、本当に1ページ1ページが自分の中に入ってきすぎるからで、自分の心のどこにそれがこんなに響くのかわからないのだが、今日読んだときにわかったのは、主人公の将也が持っている『贖罪意識』だということがわかった。
主人公・石田将也は、小学6年生のとき、耳のきこえない転校生の少女、西宮硝子を子供の馬鹿な純粋さで徹底的にいじめてしまう。そして硝子の転校をきっかけに、今度は将也自身が激しいいじめに遭い、将也は周りの人間をひとりひとり無視して行くうちに、ついに自分も生きていても仕方ないと思い詰め、アルバイトして得た金を母に残して自殺しようとする。
しかし、最後に一度だけ、西宮硝子にあって謝ろうと決意して、手話を覚え、会いに行ったのをきっかけに、将也の「生」がまた動き始める。
2巻でついに硝子に謝りたいという意志を伝え、火曜日に橋のところに行くと硝子に会える、ということがわかる。また永束と言う友達も出来て、ストーリーは動き始め、硝子の妹の結弦と、その母親にも曲がりなりにも受け入れられたのだけど、この過程の中で将也は硝子に対し、過酷なまでの贖罪意識を持つことになる。
誰もが、あのときこうしなかったらよかったのに、という後悔の気持ちと、それに対して償いたい、という思いに囚われることがあるだろう。しかし多くの場合、もうそれは取り返しのつかないことだ。
そして、それに対して向き合うときには、贖罪意識を持つとともに、それに付随する様々なものとも向き合わなければならなくなる。
将也はもともと純粋な少年で、その純粋さ故の暴走で硝子を傷つけてしまったのだけど、その辛さを乗り切ろうとするときに、自分が納得できないすべての相手を無視することによって、それを乗り切ろうとしてきた。
それを象徴的に描いているのが、将也が見た相手の顔に大きな×がついていることだ。相手を人間と認識したときに、その×は外れる。だから、母親や一部の人間をのぞいて1巻の終わりではすべての人間に×がついていたのが、だんだん外れてくるのだけど、その過程の中で将也の苦しみも増して行くことになる。もちろんそれは自殺しようとしていたときの後ろ向きの苦しみではなく、再生の苦しみなのだけど。
3巻では、硝子と親しくしたためにいじめられそうになり、不登校になった小学校のときの友達、佐原に、硝子が会いたいと言っていることから、将也は佐原の消息を探し始める。小学校のときのクラスメイトの川井がたまたま同じクラスにいたことから、佐原の学校がわかり、将也は佐原に会いに行く。
それをきっかけに、佐原と硝子の友情が復活し、将也はよかったと思う。しかし硝子に「将也が会いたい人はいないの?」と聞かれて将也は答えられない。それらはみな、自分の忌まわしい過去につながって行く人たちだからだ。将也はいかに自分が自分の過去を無視して生きていたかということに気がつかざるを得ない。
そんなところに現れたのが植野直花だった。直花は小学校時代に将也が一番口をきいた女子だったのだが、硝子が転校してきたことをきっかけに疎遠になって行った子だった。しかし実は、直花はずっと将也のことが好きだったと言うことがわかる。
直花は小学校のときの不良っぽい口のきき方のまま、ヤンキー系の路線で成長していた。硝子が現れたことで将也と疎遠になったと思っていて、硝子のことを激しく嫌っている。しかし直花の方は将也と再開し、また将也が硝子と親しくしていることを知って、激しく自分の気持ちをかき立てられ、将也につきまとうようになる。
将也は直花と話しているうち、硝子との関係を「友達ごっこだ」と指摘されて、激しく動揺する。そんな直花に将也は嫌いだと言うが、直花が「ハゲ」と言うとむかっとした将也が「ブス」と言い返し、直花は昔に戻ったような嬉しさを感じる。
しかし、一生懸命硝子の過去を取り戻そうとしてくれる将也のことを、硝子も好きになる。いや、小学校のときから本当はそうだったのかもしれないのだが、その辺りはまだわからない。硝子は思い切って、将也に自分の声で自分の思いを伝えようとする。しかし、そんなこと思っても見ない将也は、「ちゅき」という言葉が「月」なのだと勘違いをしてしまうのだった。
ストーリーを、真摯に追いかけるだけで、覆い被さってくる罪意識に必死で抵抗して前に向こうしている将也の気持ちがよくわかるし、またそんな将也を好きな直花と硝子の気持ちも、理解する余裕がゼロであることもよくわかる。
しかしそのことが、きっと彼らの関係を暗転させて行くだろうことは、まざまざと感じられるわけで、その苦しさを今から感じてしまう。
この話は本当に、単に楽しみだとは言えない、でも読まずにはいられない、そしていつ読んでも自分に突き刺さる話しだなといつも思う。
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