気分が晴れないと思ったら疲れていたのだった/「陰謀論」の「楽しさ、面白さ」と、「何が陰謀論で、何が陰謀論でないか」について

Posted at 14/03/07

【気分が晴れないと思ったら疲れていたのだった】

今朝はマイナス8度まで冷え込んだ。3月のこの時期としては、例外的に寒かったと言っていい。朝からいろいろと気になることが多かったせいか、どうも気分がふさぎがちで、なかなか気合が入らなかった。6時過ぎに目が覚めて少しモーニングページを書き、7時過ぎに出かけて職場のごみを捨て、サークルKに回って週刊漫画Timesを買う。部屋に戻って少しマンガを読み、灯油用のポリタンクを持って自宅へ。雪はだいたい消えていたので畑の様子などを見にうちのまわりを回ったら、プレハブの書庫の庇が雪の重みで落ちていた。これは工務店に連絡して見に来てもらうように頼んだのだが。

朝食後いろいろチェックしたり、ゴミを捨てに行ったり、灯油を運んだり、税理士事務所に電話したりと雑務的なことがわらわらと。済ませてもなんか意気が上がらないので週刊漫画Timesを読む。

『ピアノのムシ』とか『バレーの神様』とかが面白かったが、一番おもしろかったのは『10歳からの家族計画』で、一番印象に残ったのは『東京カウンセラー』だったな。「超自我抵抗」という言葉をはじめて知ったが、超自我が自己を罰しようという傾向を持って治療に対し抵抗する、という意味だろうか。基本的にフロイディアンの用語のようだ。また今週は『かわうその自転車屋さん』が掲載されていたが、何となくぱっとしなかったな。何というか最後のページが上手く面白い感じになってなかった感じがする。あ、そうだ、『信長のシェフ』も面白かったし、『重機甲乙女豆だけど』も面白かった。他の作品も面白くないと思ったのがなかったし、今週の週刊漫画Timesはお勧めだな。

しかしまあ、読んでも何か意気が上がらず、時間ばかりが過ぎたので、とりあえずひとつだけでも更新しようと思って「Eyes and Wind」のいわさきちひろの記事をアップし、車に乗って出かけた。ひとつ確かめなければならないことがあったので職場により、ガソリンが減ってるのに気づいてスタンドに寄って給油し、そのまま飛ばして平安堂に本を見に行った。

どうも気分が晴れないし、車に乗ろうとしたときに不用意に身体を動かして頭をぶつけて、何となく変な感じだったせいか、どうも読みたい本が見つからない感じで困ったのだけど、ぐるぐる回っているうちに目に入ったのが内海聡『99%の人が知らないこの世界の秘密 <彼ら>にだまされるな!』(イーストプレス、2014)だった。立ち読みしている間に面白くなってしまい、なんか変な本だなと思いながら、今の精神状態には合ってるんじゃないかという気がして、買ってみた。

うちに帰ってきて昼食をとり、ストーブに給油して自室に戻り、頭が痛いなと思いながら横になって手を頭に当てていたら、そうか、この調子の悪さは「疲れ」だったのか、とようやく気付く。最近考えていることに対しても集中してかなりやっているし、また時期的に仕事上もいろいろ用事が出てきて忙しく、また気を使うことも多い。そんなこんなでかなり疲れていたのだ、ということをようやく自覚した。


【「陰謀論」の「楽しさ、面白さ」と、「何が陰謀論で、何が陰謀論でないか」について】

『この世界の秘密』を読みだしたが、なんだかよくわからない。ロスチャイルドだのロックフェラーだのフリーメーソンだのがいろいろ出てきて、なんだこういう本だったのかと思ったが、あの有名な『シオンの議定書』についていろいろその内容について書いていて、その部分自体は読む気がしなかったのだけど、そのことについてあとで考えているうちに、なんだか可笑しくなってきてしまった。

とにかくこの本の著者は、一生懸命なのだ。その情熱はすごいなと思う。論理的には滅茶苦茶だと思われる部分もあるが、「統計学(の論理)」を否定したり「(現状の)医学」について否定的な見解を取ったり(彼自身は筑波大卒の医者なのだが)私にも共感できる部分もある。基本的に頭の悪い人ではないなとは思う。

ただやはり、この本はいわゆる「陰謀論」だ。まず「<彼ら>(この世界の「真の支配者」をさす)にだまされるな!」という題自体、こういうのを陰謀論と言うんだよな、というものだ。彼自身は、自分の言説を「陰謀論」と呼ぶ人自身が「グーミン」(著者の名付けによる愚民の婉曲表現)であり、それを読みとれる人こそが真の人間になれる、と言っている一方で、「この本に書いてあることを私自身も全部信じているわけではない」と言っている。

要するに、「この世界の真実を「書く」こと、「知ろうとすること」自体が<彼ら>にとっては目障りであり、また「一般人である自分」は「真の支配者」にはとてもアクセスできないから実態はわかるはずがないし、知ろうとする気もない」と言っていて、なんだか支離滅裂な気がするが、つまり「これ以上知ろうとしたら危ない」から「今まで<知った>
ことだけで十分と考え、書いている」ということらしい。

つまり、この本は陰謀論だと思うが(そう書くと私もグーミンと言われるが・泣・笑)、「かなり頭のいい人」が「本気」で「一生懸命」書いた陰謀論なのだ。ということで、正直読んでいるうちに盛りあがってきた。そういう意味で、この精神状態には大変マッチした選択だったのだ。

陰謀論というのは面白い。面白いというのは、興味深いという意味でだが。「彼らにだまされるな」というのが陰謀論の基本的主張だが、その主張はとっても情熱的で、その情熱によって人々を魅了する。それに巻き込まれたら自分も陰謀論のお先棒担ぎになる、つまりいわゆる洗脳状態になるが、そのくめども尽きぬ情熱そのものは見ていて大変興味深い。ある種の預言者であり、迫害にも屈しない強さを持ち、戦い続ける。主張する内容はともかく、そんな人間が魅力的でないはずがない。

陰謀論とはかくも魅力的なものなのだなと思う。読んでて楽しくなってくる。というのもどうかという気はするが。

私はけっこうダンテの『神曲』が好きで、特に永井豪が描いたマンガの『地獄篇』が好きなんだけど、あれを読んでるのと似た種類のカタルシスが、陰謀論に突き動かされた人の書いているものに感じられる。それは、そういうものすべてをある意味フィクションとして楽しんでしまうという面があるからだろう。フィクションであると割り切れば、荒唐無稽なのはそれはそれで面白いわけだから。また、逆にたとえば人は実話であっても「小説みたい」と面白がることはできる。だから彼らの主張が正しかろうと可笑しかろうと、面白がることはできるのだ。

まあとにかく、陰謀論を読むのはある種のストレス解消にはなるなと思った。

しかしこの本を読んで面白いと思ったのはそういうことだけではなくて、自分が陰謀論を信じるか信じないかというような次元よりも、世の中にはけっこう陰謀論に振り回される人も、陰謀論をしかけようとしている人も私が思った以上にいっぱいいるんじゃないかな、という実感を感じたということだ。それは、この著者が相当頭がいいと感じられる部分があったからで、陰謀論をつくりだす人はともかく、陰謀論にはまる人も、これは頭の良し悪しの問題ではないなと感じたのだ。

たとえばナチスの理論なども壮大な陰謀論だったし、またオウム真理教の教義というか地下鉄サリン事件の実行についても「やられる前にやる」と彼ら自身の陰謀論に自分ではまってしまった部分が感じられる。

どこかに絶対悪がいて、彼らの陰謀でわれわれは痛めつけられている、という考えは、基本的に陰謀論の枠組みを持ってしまう。中国や韓国の論理がわれわれ日本人にとって荒唐無稽に感じるのは、あるはずのない「戦前の軍国主義」の亡霊が今でも日本には息づいていて、ちょっと自分たちが油断すればすぐ日本全体を覆って自分たちを攻撃して来る、という理屈を本気で主張して来るからだ。

世の中に敵と味方がいるのは仕方のないことだけど、味方は常に善意で無防備で、敵は常に悪意に満ちていて陰謀をたくらんでいる、と考えるのはいろいろな意味で妥当ではないだろう。敵の主張が間違っていると感じられるのは仕方ないとしても、敵も味方も自分たちと同じ程度に悪くて自分たちと同じ程度に無防備だったりする、という程度には考えておいた方がいい。

ただ、ひとつ言えるのは、それは「いわゆる常識に安住していていい」ということとは違う。彼らも私たちと同じようにアイデンティティを必要としているし、私たちと同じように食べるものも住むところも必要だという当たり前の認識が必要だということだ。常識のレベルになれば、彼らは戦闘をも厭わないとか、われわれ普通の市民生活をしている人間とは違う認識があるというのはあってもおかしくないけれども、自分たちが彼らのような世界認識をしていて彼らのような要求を持っていたらどう考え、どう行動するだろうか、というようなことを考えられなければならないと思う。

実際のところ、世の中には枠組みとかシステムというものが、はっきりとした形がないものも含めてあるのは確かで、それを知っているのと知らないのとでは得られるものが全然違って来るということも確かなのだ。その仕組み自体を誰かの陰謀だと言えばそうかもしれないが、ある種の摂理に適っていなければ存在し続けること自体も難しいということも考えておいた方がいい。

だから何が陰謀で何が陰謀でないかというのはわりと微妙、というか立場によってその主張が変わってきたりはする。プルードンは「財産とは窃盗である」と言ったわけだし、私有財産制自体を否定する勢力は、私有財産制度そのものをブルジョアの陰謀だと感じたって不思議なことではない。

っていうか、一昔前、つまり冷戦時代までは本気でそう思ってる人だってたくさんいたのだ。今ではすっかりはやらなくなってしまったけど。

まあとにかく、そういうような意味でこの本は大変面白い。ただ面白いからと言って、皆に勧めていいものかどうかは迷う。普段なら読んだ本には画像を載せてリンクを張るのだけど、ちょっと今回は遠慮しておこうかと思う。

ただ、こんな書き方をしているけれども、前に述べたようにこの本の内容を全否定しているわけではない。その辺のニュアンスは分かる人にしか分かってもらえないかもしれないけど、一つ一つの事象については著者と似たようなことを感じている部分が私にもあるのは確かなのだ。

まだ全部読んではいないので、こういうことは学んだ、ということが出てきたらまた書いてみたいと思う。

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