東村アキ子『かくかくしかじか』3巻は大学卒業後の東村さんの宮崎時代の葛藤が描かれていた。

Posted at 14/01/26

かくかくしかじか 3 (愛蔵版コミックス)
東村アキコ
集英社


昨日帰京。列車の中で東村アキコ『かくかくしかじか』3巻と小山田浩子『穴』を読んでいて、『かくかくしかじか』は昨夜寝る前に読み終えた。

この作品は読むたびに感動する。

東村アキコ自伝、と銘打っているけれども、趣旨はつまり宮崎時代の絵の恩師、日高先生との交流。1巻では受験時代が、2巻では金沢での美大時代が描かれていて、3巻では卒業して宮崎に帰り、日高先生の助手をしたり、お父さんの会社の電話オペレーターとして働いたりしていたことが描かれている。

電話オペレーターの仕事は『ひまわりっ!』でも描かれていたけれども、仕事について割合すぐにマンガを書きはじめて『ぶ~け』に投稿して入選した、ということは知らなかった。

余りに抜け出したい日常に全面的に晒されると、火事場の馬鹿力のように3日間で作品を書きあげる力が出た、という話は凄かった。

漫画の描き方の常識を知らず、つけペンでなく消せるボールペンで描いて応募し、普通ならデビューできる賞を取ったのにあまりに下手だから掲載されない、という前代未聞の話が出てきてそれでも入選させてしまうというところが、だれがどう考えてもこの人は天才だよなあとしか言いようがない。

なるほどと思ったのは、日高先生の絵画教室で死ぬほどデッサンを繰り返したのに、漫画に描いた絵はデッサンが狂ってる、と編集者に指摘されたこと。目の前のものを見て描く絵画のデッサンと、頭の中にあるイメージを描くマンガとでは全然違うんだ、という指摘はちょっと目から鱗が落ちる思い。

日高先生の教室の後輩の女の子が出てきて、それがモーニングに時々掲載されている『ZUCCA×ZUCCA』のはるな檸檬さんだった、というのは衝撃を受けた。

いずれにしても、ファインアートと漫画とは全くの別物、ということを嫌と言うほど自覚させられどちらを取るかという選択を迫られる。そして、好きな先生に逆らえない東村さんは、日高先生のもとを去る決断をする。

このあたり、本当に胸がいっぱいになってしまうのだが、教室時代からの親友であるいつもズバズバ言う二見さんから「かくかくしかじか読んだよ 泣いてもーたがな 先生に会いたいね」というメールが届くところは本当に泣く。

この作品は自伝であるとともに、東村さんのその時その時の流され方と決断とを描いていて、そして期待に沿えなかった日高先生への懺悔にもなっている。今東村さんと日高先生の間にどういう交流があるのか、それはこの作品が完結するまでわからないのだろうけど、知りたいけど我慢しておきたいことだよなあと思う。

小山田さんの本はまだ読み終えてない。またあとで書こうと思う。

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by Luke Peterson

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