ふみふみこ『めめんと森』は闇の中まで続く愛の底知れぬ深さの一端を表現した作品だった/ちきりん『「Chikirin日記」の育て方』の柔軟な考え方に強い刺激を受けた
Posted at 13/12/10 PermaLink» Tweet
知らないうちにすごい勢いで本を読んでいる。自分としてはそんなつもりはなかったのだが、ここ数日でどれだけ読んだかと考えてみるとずいぶん多い。Kindleの使い方もだいぶわかってきたので、そちらで読んでる本もある。文章を書くためにはまず読むことが大事ということはある。書く方向性がはっきりしてきたので遠慮なく吸収できるようになってきたということだろうか。方向性がはっきりしてきたから何を吸収するかの的が絞れてきたということだろうか。
【ふみふみこ『めめんと森』は闇の中まで続く愛の底知れぬ深さの一端を表現した作品だった】
めめんと森 (フィールコミックス) (Feelコミックス) | |
ふみふみこ | |
祥伝社 |
ふみふみこ『めめんと森』。ふみふみこさんの作品はどれも面白いが、文体というか作風はどんどん読みやすく、受け入れやすくなっている。この作品も一気に読めた。
ふみさんは性的マイノリティを作品に登場させることが多いのだが、それぞれが全然「普通の人」としてその場に生きてる様を描いている。偏見との戦い、というのがこういう作品のテーマになりやすいわけだけど、その部分は極力少なくして、人間としてどう感じどう生きているのか、セクシュアリティが類型的でない分、すごく新鮮ですごくどきどきする。「作家性のある作品」というのはすごく好きなのだけど、それはつまり「トラウマに残るような」作品なのかな、と思う。ふみさんの作品にはそういうものを書こうとする意志がある。
いちいち書くのもなんだけど、以下はネタバレなので気になる方はご注意を。
主人公の「めめ」が首を締められたり支配されたりすることで喜ぶ性癖を持っていて、それが原因で男とうまくいかないのだが、相手の黒川は『進撃の巨人』のリヴァイ兵長を思い起こさせるような言葉の暴力の男なのだけど、「殺すぞ」と言われたり首を締められたりして胸がきゅんとする。そこで黒川が本来持っていた性癖が華を開かせる、というそういう話なのだけど、こういう話は昔なら『SMスナイパー』などでそういう御同好の士の皆様方の間で読まれるような話だったわけだが、そうなると必然的にハードなものにならざるを得ないし、類型化もされてしまう。全然そういうところに陥らず、「ハートフルな胸きゅんストーリー」(と言っては言いすぎか)で展開していくところが、すごく新しい。
人間というものは、性的な事象がすごく大切な人とそうでもない人がいると思うのだけど、でもそうでもないと思っていても、意識ではそうでも無意識的にとか肉体的にとかでそういうことが実は大切だったりすることがある。そうなるためには気づきが必要なわけで、この物語はめめによる黒川の気づきの物語であった、といえる。
「殺すぞ」という言葉が愛の言葉になるという秘密の関係があるということが、愛というものの底知れぬ深さの一端を現しているんだなあと思う。読後感を含めて、とてもよかった。
【ちきりん『「Chikirin日記」の育て方』の柔軟な考え方に強い刺激を受けた】
「Chikirinの日記」の育て方 | |
ちきりん | |
ちきりんブックス |
上に書いたようにブログをどう書くか、というか文章全体をどう考えて書くか、ということを考えていて、fujiponさんのサイトでちきりんさんの電子書籍の紹介があり、980円と少し高いなとは思いつつ、どの紹介を見ても面白そうなので思い切って買ってみることにした。
読みかけなので途中経過報告になるが、「一つのエントリで一つのメッセージだけを伝える」とか「ブログを書くときは何を書くかではなく何を伝えようかが最初に決まる」とか、書く上でなるほどと思うことがいろいろある。ブログ作法というのはあちこちで語られているけれども、結局は自分でスタイルをつくっていくしかないというのが現状なのだけど、一日一メッセージということを考えると私はたくさん書きすぎなんだなというふうにも思うし、「伝えたい」ことより「かきたい」ことが優先しがちで、そこが焦点をぶらせているところがあるのだろうとか、改めて自分の文章を考えさせられる。
またブログを踏み台にして紙の本を書くことがゴールではなく、紙の本を書くことで今まで伝えられなかった層に伝えることができたことが重要で、そういう人たちにブログを読みに来てもらうことがゴールなのだ、という考え方は大変考えさせられた。こういう柔軟な考え方に触れていくことで、自分の中で気づいていないさまざまな無意識の縛りが解けていくことが大事なんだと思う。
【何かが伝わることは、嬉しいこと】
ツイッターできちんとエゴサーチをしていなかったので昨日の夜気がついたのだが、何人かの方にこのブログへの言及をいただいていて、それを読んでいるうちに、ああ、思ったよりもずっと伝わっているなあと思った。ちょっとじんとしてしまう。読んでもらって、その内容が伝わっていることを感じることは、たぶん何よりもうれしいことだ。そのことに気を付けて行かないといけないと改めて思った。いつも読んでいただいてありがとうございます。
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