未熟な熱さ
Posted at 13/09/19 PermaLink» Tweet
【未熟な熱さ】
忙しい時には忙しいことが重なるということは良くあることだが、読みたいものが多い時には読みたいものが重なる、ということも良くある。読みたいものがなかなか見つからないときは全然ないのにそのあたりは不思議なものだ。今並行してfinalvent『考える生き方』、木原武一『天才の勉強術』を読んでいるのだが、昨夜帰ってみたら『進撃の巨人』DVD3巻が届いていた。今日は19日で木曜日なので朝『モーニング』を買いに行き、昼前には書店に急ぎ車を走らせて『コミックリュウ』11月号を買ってきた。これだけで5つ並行して読んでいることになる。さすがにいちいちものを考えながら読むにはきつい。
まあ考えてみれば全部一度に読んだり見たりしようとしなくたっていいのだが、昨日は仕事が忙しかったこともあり、忙しい時にはそういう楽しみみたいなものも一度に全部こなしてしまおうという変なところがあって、どうにもこうにもにっちもさっちも、みたいになってしまった。
今日、『考える生き方』について考えて自分の人生といろいろ比較していて思い当ったのだけど、どうも自分には「未熟な熱さ」とでも言うべきものが昔からずっとあって、何だかすぐ暴走したり押さえがきかなくなってしまったりするところがある。finalventさんが冷静にこんなふうに考えてこういうふうにした、と書いているのをうんうんと頷きながら読んでいたのだけど、同じ時期を自分が自分について書こうとしたら、なんだか訳が分からなくなってしまうなと思った。それはつまり冷静ではないからで、何かいつも変なわけのわからない熱みたいなものに浮かされている部分があったんだなと思う。
今はずいぶん冷静になって自分自身を制御できるようになってきたとは思うのだけど、でもまだ全然制御しきれない部分があって、冷静に考えれば焦って全部一度に読むことはないと思うのだが、今読まないと飽きてしまうんじゃないか、読む気をなくしてしまうんじゃないかという焦りというか不安というかそういうものがあって、飽きたら読まなきゃいいじゃんとはなんだか思えないから、その『読みたい』という気持ちにこだわってしまってコントロールが利かなくなる。
『進撃の巨人』DVD3巻は嬉しいことに5~7話の3話収録なのだけど、それを一気にみたいと思ってしまって、結局昨夜は1時半までかかってノートPCで全部見た。かなり修正が入っていたなあとは思っていたのだけど、リーフレットを見ると各話100か所以上直しが入っているのだという。さすがにそこまで細かくは見られてないし、どこが直されたのか気になるのだがそれを確認する気力はさすがになかった。
朝6時半過ぎに起きて古雑誌を資源ごみに出しに行き、戻ってきてモーニングページを書いていたが、どうも最初のうちは愚痴みたいなことばかり出てきて、まあ落ち込むのも肩と頭からよけいな力を抜くための自然におこる反応なんだと今では思うが、ぶつぶつ言いながら書いているうちに結構冷静に自分が見えてきたところがあった。
結局、何を書きたいのかというと、自分が思ったことをそのまま書きたいのかもしれない。今の感じで言うと。ただそれが読む価値のあるもの、読んでもらう価値のあるものなのかどうかはわからない。
ただ、自分がものを書くということの意味、つまり自分でない誰かではなく自分が書くことの意味というのは、自分が読んだこと、感じたこと、考えたこと、そういうことすべてを「自分の自我というフィルターを通して書く」ことなんじゃないかと思った。
思った、というかそう思って書いているということに気がついた。
ただ、それが面白いのかどうか、読んでもらう価値があるのかどうかは分からない。自分が一生懸命書いてぜひ読んでほしいと思ったものが必ずしも読まれなくて、時間がないなどの理由であまり掘り下げずに事実だけを書いたものが異様にアクセスがあったりすることも良くあることなので、読み手の側から見た価値というものがどういうものなのかはとりあえずは良くわからない。
コミックナタリーの人が言っていたように「自我というフィルターを通さず事実だけを書く」、という形で記事を量産することでひとつのポータルとしての地位を築く、というやり方も確かにありではある。情報の供給に徹するという立場。
自分が何を読みたいかと言えば、確かにそういう情報だけの記事の場合もないわけではない。客観的な、あるいは学問的な考察を読みたいこともある。物語を読みたいこともある。しかし、このことについてこの人はどう考えたのか、自分が感じたこの感じを誰か説明してくれる人がいないものか、みたいな感じでものを読むこともある。いや、そういうことは読みながら自分の中にそういうものがあったと気がつくのが最近のパターンで、読むことによって自分の中を掘り起こすことになるからそのことを自分の中にいちいち落ち着けるのに時間がかかったり、場合によってはこんなふうに文章にしてみないと理解が落ち着かなかったりすることも多いので、読むのにすごく時間がかかったりする。
先に書いたように、finalventさんの『考える生き方』はすごく自分自身の生きてきた過程を振り返るのにすごく刺激になるところが多くて、またある意味興奮してしまった。そういうところにいちいち意味不明の「未熟な熱さ」が発生するところが我ながらうざったくはあるのだが、それが発生しないと生きている実感というものもまた良くわからなくなってしまうところもあり、まあこのあたりの自分の本体みたいなところを自分がもっと理解しないといけないなと思った。
感想とか書評というものはすべて、その本を通して自分を語るものなのだ、ということを誰かが言っていたが、まあつまりそういうことなんだろう。その語り方はいろいろあるにしても。上手い下手や、商品として成立しているかどうかとか、いろいろなところはあるにしても、自我というフィルターを通っていなければそれは批評(評論と言うべきか)としては成立していない。ただその表現にどこまで自分が賭けられているかによって、その表現の深さが変わって来ることは他の表現と変わりはないわけで、無難な評価や通り一遍の批判で終わっていればその人の底の浅さみたいなものが露わになるだけだし、二度と読みたいとは思わないだろう。かと言っておそらくは私が陥りがちなあまりに個人的な部分だけを語ったり自分が考えたある種妄想っぽい謎ときばかりを書いてもあまり多くの人に共感をしてもらうことは難しいだろう。
その辺の中庸みたいなところはたぶん感想をもらうことによってしか修正できない部分があるのだろう。まあ極端なことを書いていると感想をもらうこと自体が難しいのだけど。
いつも迷うのは、読みながら感じたことを読んでいる途中でも書く方がいいのか、すべて読み終えてから書く方がいいのかということ。読んでいるときにヴィヴィッドに感じたことをその日に書く、というふうに基本的にはしているのだけど、たとえば『考える生き方』はそれをするにはかなり危険なところがある。つまり、それだけ自我の薄くなってる殻みたいなところが危機に晒される感じがあって、あまり正直には書けない、書くとやばいと思ってしまうところがあるので、まあそういうところは抑え目に触れようと思うと、読み終わってから書けばいいかということになり、そうなるとすでにその時の感触が薄れて、みたいな感じが起こりがちだ。いや、たぶんこの本はそんなことはないな。
まあ色々自分のことを考えはするのだけど、やはり著者のことを考えもする。先日ツイッターでやりとりしたことは書いたが、その時この方の言っていることを理解するにはこの方がどう言う人なのかもっと知る必要があると感じた。それでこの本を買って見たのだが、この方の言葉はこの方の人生が強く反映されているということが良くわかり、やはり読んでみて良かったと思った。
まだ途中なのでどこかに書いてあるのかもしれないのだけど、自分がこの本を読んで知りたいと思ったことで、今まで読んで来て出て来なかったことを少し覚書的にでも書いておこうと思う。というのは、finalventさんはとても『市民』とか「個の自立」というものを重視する人だと先日のやり取りで感じたのだけど、どう言う過程でそういう考え、信念のようなものに至ったのか、ということを知りたかったのだ。
ただ、今まで読んできた感じでは、それはわりあいデフォルトでそうだったんじゃないかという印象を受けている。私はまず第一になぜ民主主義というものが正しいのか、ということに相当悩んだ経験があるので、今でもかなり「市民」とか「民主主義」とか「個の自立」というような問題は突き放して客観的に見ているところがある。他に代わるべき概念がとりあえずないから現状ではこれにせざるを得ないなみたいな。また感覚的にもそういう概念に立った方が生きやすい、考えやすいというところはある。ただそれは自分がそれが許される環境にけっこう長くいたからだと思うし、何と言うか子どものころの環境に居続けたらそういう感覚になったかどうかは分からない。もっと人間関係の濃い人のホンネみたいなものがストレートに出て来る環境に居続けたらどうなっていたかと思う。私は若いころは「市民より庶民」みたいな主張の方により馴染んでいたし、白虎隊の自決に感動したり、天皇というものの存在を素朴に嬉しいものに感じていた(まあこれは今でもそうだけど)ところがあるから、そういうものを含めると市民とか民主主義というものもそう簡単に原則を徹底は出来ない。
だから特にアメリカ系の考え方をする人と議論の焦点をどこに合わせたらいいのか困ることが多いのだけど、どうして「市民」や「民主主義」を肯定するに至ったのかを知りたいという疑問に関しては、なかなかそれを満たしてくれる人がいない。というか最近はそういう「市民原理」や「民主主義原理」さえスルーするような言説が多くなってきているからますます困ってしまうのだが、自分としてはそこを確かめたいと思っているのだけど、何かどの人もデフォルトでそれを肯定しているか無頓着であるかどちらなので、どうにも困る。
というかつまりもともと私は、あまり人の気にしないようなことが気になるタイプなんだということなんだろう。そこを突っ込んで行ってもあまり得るものがあるのかどうかも良くわからないし、得られるのも自分の納得、いや納得まで行かずにある種の妥協がえられるだけのような気もする。
まあ結局そういうものは信仰告白というか、「アッラーは唯一の神であり、ムハンマドはその最後の預言者である」みたいなものなのかもしれない。「民主主義はもっとも進んだ最も正しい社会制度であり、それは自立した個である市民によって構成されている」と宣言することによってしか何事も始まらないのかもしれない。しかしまあ、私はイスラム教を信じられないのと同じように民主主義も正しいと「信じる」ことは出来ない、というだけのことなのかもしれない。いや、もちろんそれ以上にましな原理は私にはよくわからないのではあるけれども、ないわけではないのではないかという気もしなくはない。
ただ、実際に民主主義というものを採用するのであれば、やはり自立した個である市民によってこの社会は構成されるべきだと私も思うし、そのためには社畜的な人間のあり方はあまり望ましくないわけで、自営業者やフリーランスとしての生き方が推奨されると私も思う。古典的な民主主義の原理はまだ資本主義が独占段階になる前に出来たものだから、大衆化というもの、大企業に従属した形で働く人が多い社会というのは民主主義原理には逆行するものだと思う。そのあたりは原則的にfinalventさんに賛同するところが多い。ただそんなことを言ったところで現実はなかなかそうはならないわけだし、また信仰しているわけでもない民主主義に沿った主張をするものなんだかどうなんだというところもあるので、そこらへんのところがめんどくさくはある。
まあ人として生まれてもう51年も生きてきたし、今更セカンドベストの方に振れても意味はないかもしれないから、自分がベストだと思うことについて考えて書いていくべきなのかもしれないなとまた書きながら思ったのだった。
まあそのあたりの整理のつかなさが熱くても未熟になってしまう部分なんだろう。熱さを成熟させたいものだと思う。
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