2013参議院選挙:この選挙で何が変わらず、何が変わったか
Posted at 13/07/22 PermaLink» Tweet
【2013参議院選挙:この選挙で何が変わらず、何が変わったか】
昨日は参議院議員選挙。開票速報などは見ていなかったのでリアルタイムでの自民党の勝利の印象はあまり強くないのだが、全体的な印象としては、安倍政権発足以後進められてきた政策が基本的に同じ方向で動いていくのだろうなということ。自民党は単独で過半数を取ったわけではないし、今まで通り公明党との連立を続ければ、公明党が一定の与党内バランス勢力として働くということもあまり大きな変化はもたらさないだろうとみられる。
今ざっとニューヨークタイムズとルモンドを眺めてみたが、両紙とも扱いは小さいしつまりはあまり大きな変化は起こらなかったという観測だ。東証の株価も小幅高で、つまりは「織り込み済み」、想定の範囲内の出来事しか起こらなかった、ということだろう。今回の低調な印象と、投票率の低さも、あまり大きな変化は起こらないだろうという国民の判断もまた、それならばわざわざ投票に行くほどのこともない、行くだけ無駄だ、と思った人が多かったということなのだろう。日本人はこの種の、「やっても無駄なこと」に対してそれを切り捨てる傾向がかなり強い国民だと思う。まあ気持ちは分かる。
今回変化が起こったと言えるのは、参議院で与党が過半数を取ったことで議会運営がより有利になった、ということが最大だろう。法案も通しやすくなったので、与党が推進したい政策、法案が議会を通過して成立する数は増加するだろうと思う。それがいいことかどうかはさておき、そちらの方面に舵を切ったことは間違いない。
二つ目は共産党が都議選以来の好調を維持し、自共対決の構図を国民に訴えて、一定の成果、つまり新勢力で11の議席を得、院内交渉団体となり、党首討論に参加できるなどの機会を得た。歯止めとしての力と、また赤旗という調査能力を持っていることで、共産党が一定の勢力を持つことは政治の透明化において意味のあることだと思う。
ほかの野党勢力が振るわなかったことも大きいが、その中ではみんなの党がある程度は健闘したと言えるかもしれない。特に末期症状なのが民主党で、衆議院で57、参議院で59という勢力は旧社会党よりも影響力が下がっている。民主党が本来目指すべき方向はおそらく都市リベラル・組織労働者の政党なのだろうけど、残念ながらその双方ともどちらかというと解体の方向へ向かっているのではないかという感じがするし、結局は日本人は分かりやすいストーリー性や構図がその党の核にないと支持したいという方向に動かないようだ。それがなければ結局は安定感のある方を取る。
今回そのストーリー性の創作に成功したのは「自共対決」という構図を打ち出した共産党と、「みんなの力で脱原発」という夢を語った山本太郎、「参院選は親の仇」と雪辱を訴えた政権担当者その人である安倍首相、というところで、みんなの党の官僚政治打破も新鮮味が失われたし、維新の会も橋下氏が近代史の再定義という手の付けにくい難問に安易に取り組んで幻滅を呼んだ。日本人はその語られる内容の当否よりも、その実行能力やヘゲモニー争いで主導権を取るしたたかさのようなものをより高く評価する傾向があるから、従軍慰安婦論争で結局は着地点を見いだせなかった橋下氏は見放されてしまった。
とはいえ、私は今回比例区は日本維新の会の候補に投票した。元拉致担当相の中山恭子氏だ。個人として評価されるべき人は政党勢力図に関係なく、国政に携わってもらいたいと思う。自民党の今回の比例区での得票数は1846万票余り。これは前回衆院選の比例区での得票数1662万票より増えている。「ブラック企業の経営者」(実態がどうかは見解の相違があるが)というレッテルでネットの一部で反感を買っていたワタミの渡辺美樹氏も当選者18名中16で当選を果たしている。私は彼の当選を避けるためという意識もあって他党の候補に投票したのだが、そういう意識で自民党を避けた人はどれくらいいるのだろうか。そういう自分では予定外のストーリーが独り歩きしてしまうこともある。
どうこう言っても、自民党はヤンキーからおたくまで幅広く味方にしてしまう老練な国民政党であることは間違いない。経済運営が政治のもっとも重要な機能であると思われている限り、老練さが最も評価されやすいことは間違いないだろう。特に民主党政権で「素人政治の失敗」をまざまざと見せつけられたことはとても大きいわけで、次の自民党に対抗する勢力は、膨れ上がってしまった自民党がまた分裂して飛び出した勢力が中小野党勢力を糾合させて新たな対抗軸をつくる、という新生党やみんなの党、それに準ずるものとしての民主党や維新の会のパターンを踏んで出てくるしかないのかなと思うが、それは党内の主導権争いが深刻化して初めて起こることだからそんなに近い将来ではないだろう。
そういう意味では今回一番大きいのは民主党の退場、とまではいかないが役割の大幅縮小だっただろう。55体制の時代の政治ネタというのはほとんど自民党の党内派閥対立を語ることだったが、これからの三年間は一体何が話題になっていくのだろうか。
もう一つ、特筆すべき変化は選挙運動のネット利用が可能になったことだろう。これに対する評価は、新聞などでは意図的に不当に低く判断されているように思う。まだその活動内容と当落と関係を深く調べた研究がないから全体的なことや数字的なことは言えないが、ツイッターのタイムラインを眺めていると明らかにツイッター上での動きが当落に関係したのではないかと思われるところがあるように思われた。少なくとも、私のタイムライン上ではツイッター上で活発に主張を述べている候補の当選の確率はかなり高い。ツイッター上で自分の言葉で語れる政治家は、自分と主張が違えどそれなりの評価はしやすくなる。私がそういう人をフォローしているということもあるだろうけど。しかし、今後はそういう傾向はもっと強まっていくだろうと思う。ネット選挙が失敗だったとみようとする人たちはどうもかなりいるような気がするが、ためにする議論でないならば、その判断はあまり当たっていないような気がする。
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