逃れられないテーマ
Posted at 13/06/14 PermaLink» Tweet
【逃れられないテーマ】
梅雨らしく雨が降ったり上がったりしている。外に出てから降っていることに気づいたり、車に載ってみたらフロントガラスに雨粒がついたりしてようやく雨を知ったりしている。今日は朝から気温が高い。真夏の朝の気温と変わらないくらいなのだが、湿度が高い分だけ妙に暑い。でも私は、暑いのはそんなに嫌いじゃない。暑いと身体が動きやすいし、冬に比べて疲れが溜まらない感じがする。私の疲れは、熱で溶けるようなタイプの疲れなのかもしれない。イメージ的には。夏生まれは夏に強いというけれど、私は8月の一番暑いときに生まれたから、本当にそうなのかもしれないと思う。
今日は活元の会があったのだが、いろいろ考えて結局参加しなかった。たぶん行った方が身体のためにはいいのだけど、どうも忙しくて時間がなく、会に参加すること自体はいいが片道50分運転して行く時間と労力を考えるとその時間を有効に使った方がいいという感じにどうもなりがちだ。頭の痛みだとか、そういうことを考えるとこういう会に参加した方がいいことは確かなのだが。
体調のことを考えるとあまり頭を使わない方がいいとは思うのだが、仕事では時間中フルに使わざるを得ない状況にあり、自分自身の取り組みの方針についてもいろいろと考えていかなければならないところがあってなかなか思うようには頭を休められない。10時過ぎに用事で外出した時に足を伸ばして書店に行き、書棚の本のタイトルをいろいろ見ながら本を物色していたのだが、いろいろ小説を手に取って中身を読んだりした。音楽と少年、というテーマがはっきりしてきたこともあって、さまざまな本に手が伸びるようになったのだけど、いくつも本を立ち読みしながら気づいたのは、実は日本の小説というもののかなり多くの部分が「少年」あるいは「少年期」をテーマにし、あるいは取り扱っているということだった。簡単な読みものにしても本格的な小説にしても、その取扱い方はともかく、少年や少女はかなりの割合で出て来るし、大きな役割を演じている。そんなことは考えてみれば当たり前と言えば当たり前なのだが、つまりはどうもその部分を見落としていたということに気づいた。
昨日ツタヤで本を見ていて思ったのは、子供向けの本がすごく懇切丁寧で上質な紙やきらきらする装丁によって作られているというのにどうも違和感を持ったのだが、考えてみるとこういう本で育った子どもたちが大人になって欲する本というのは私たちのような読書体験をしてきた人たちの本とは違うだろうなということだったし、今の出版界に対して私が持っている違和感とかも、たぶんそういうことと関係があるんだろうなと思った。
日本というのは子どもの国、つまり大人として成長しきれない大人子供の国だというのはよく言われることだけど、出版においてそういう部分が甚だしく現れているのではないかと感じさせられるものがあった。
今日手に取ってみた小説は海外の子供向けのものなどもあり、それらは子供向けであってもものすごくシビアであったり、「処女を奪うことを強要する」みたいな記述すらあったりする。そういう意味で子どもであっても現実から目をそらさせないようなところが、まあそれはフランスの本だったからかもしれないが、そういうものを見ると、これは日本で書かれていたら発行できただろうかと思ったりした。
まあ私なども必ずしもそういうスタンスが正しいとは思わないけれども、いわばフランスっぽい合理主義、もっといえば合理主義的神秘主義とでもいうべきメンタリティの現れなんじゃないかと思った。
私が面白いと思い、また魅力的だと思う子供向けの作品は、どうもイギリスの作品が多いようで、いま読んでいるティム・ボウラー『川の少年』なども典型的にそうだ。私の好きな作品というのは基本的にある種の神秘性が書かれていることが多いのだけど、イギリスの作品にはそういうものが多くあるような気がする。イギリスではもともと神秘主義とかスピリチュアリズムみたいなものが強く社会に影響力を持っていると言われているけれども、彼らの根幹にあるのは神秘主義そのものではなく、神秘現象そのものもまた経験の一つとして受け入れる、言わば神秘主義的経験主義みたいなものではないかと思うし、たぶん私が持っているメンタリティというのもそういうものに向って開かれている部分があるのだろうと思う。
読んでいて思ったのは、私は今までそういう少年が描かれているものが実は小説にはたくさんあるということを無意識のうちに気づかないように自分を仕向けていたんだなあということで、これは昨日も書いたけれども「少年」とか「音楽」というテーマから「卒業」して、もっとおとなのテーマに取り組んでいかなければならないという意識が、無意識全般を支配してそんなふうにさせたんじゃないかという気がする。
改めてそのことを自覚してみると、私にとって必要なのはそれらを卒業することでなく展開させ進化させていくことだと思うし、少年のころに見えていた少年や青年期に見えていた少年とはまた違うものが今では見えるはずだから、むしろもっとその部分に集中して取り組んで行けばいいのだということだった。
結局人には逃れられないテーマというようなものがあるとしたら、自分にとってはたぶんこれらがそれに当たるのであって、そういうことを避けて通ろうとするよりは、きちんと取り組むことでより自分自身の人生が深められるのだろうと思うし、今まで積んできた経験の多くがそういうことに関わることだから、そういう意味ではそんなに人生の無駄をして来ているわけではないので、どういう形でか自分が取り組んできたものを生かせるものを作ったり開いたり残したり語ったりしたいものだと思った。
くすんでしまった世界に輝きを取り戻すこと。そんなことの一環として。
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