『進撃の巨人 Before the fall』第1巻/角川いつか『成功する男は、みな非情である』
Posted at 13/06/04 PermaLink» Tweet
【『進撃の巨人 Before the fall』第1巻】
進撃の巨人 Before the fall (講談社ラノベ文庫) | |
涼風涼 | |
講談社 |
諌山創原作・涼風涼作『進撃の巨人 Before the fall』(講談社ラノベ文庫、2012)第1巻読了。マンガ・アニメの『進撃の巨人』の前日譚ということで、シガンシナ区における770年ごろの「正門開門事件」とそれをきっかけにした立体機動装置・超硬質スチールの制作という出来事を語っている。ちなみにシガンシナ区に超大型巨人が現れ壁が破壊されて人類の活動領域がウォール・マリアからウォール・ローゼに後退した事件は845年となっている。つまりエレンやミカサたちの物語が始まる75年ほど前の話ということになる。
設定上当然だが、まだ立体機動装置がなく、巨人の弱点も把握されていないため、巨人は殺すことができない存在だとされているが、職人のアンヘルたちの手によって黒金竹・氷爆石といったこの世界の資源を用いて巨人に立ち向かう武器が発明されていく、その過程を描いている。アクションシーンはマンガやとりわけアニメで実現した立体機動装置による兵士と巨人の戦いの超立体的な描写に比べれば物足りないのはやむを得ない。物語の構造も本編がエレン(主人公・巨人に変身)、ミカサ(超人的な能力を持つ女性兵士)、アルミン(正解を出す能力を持った智謀の存在)の三人が中心になるのと同じく、アンヘル(立体機動装置を作り出した職人)、ソルム(調査兵団所属、アンヘルを守って戦死)、マリア(二人と一緒に育った女性、ソルムと婚約、駐屯兵団所属)が中心になっていて、ある意味お供を連れた桃太郎的な構造になっているのは同行者を伴って旅をするファンタジーRPGの影響を受けているのかもしれない。私にはなんか不思議な構造なのだが、おそらくゲームで育った世代には自然なんじゃないかなという気はする。
まあ結論から言うとものすごく面白い話というわけではないが、『進撃の巨人』が好きで関連するものも読みたいという人なら楽しめるものではあると思う。まあノベライズというものはこのくらいのつつましやかさを持っているべきなのかもしれないなと思う。
【角川いつか『成功する男は、みな非情である』】
進撃の巨人 Before the fall2 (講談社ラノベ文庫) | |
涼風涼 | |
講談社 |
ということで、昨日買ったのは『進撃の巨人 Before the fall』第2巻(講談社ラノベ文庫、2012)と角川いつか『成功する男はみな、非情である』(だいわ文庫、2007)の二冊。Before the fall の第二巻は巨人の死体から生まれたキュクロが主人公になる話のようだが、まだ少ししか読んでいない。
成功する男はみな、非情である。 (だいわ文庫) | |
角川いつか | |
大和書房 |
『成功する男はみな、非情である』は成功者へのインタビューなどを通して「成功する男は、ここが違う」みたいなことを書いている系統の本なのだが、私は割と面白く読んでいる。こちらのブログでは割とけちょんけちょんなのだが、それほどではないと思う。角川春樹と結婚していたことがあるという情報はこれで読んでそうなんだなるほど、と思ったけれども。
何というか、男社会で成功する男について女性が書くと、この人ちょっと頭が悪いんじゃないのかなあと思うことが多いのだけど、この人はそんなことがない。書かれているエピソードもへえと思うようなことだし、取り上げている言葉もふんふんなるほどと思うようなことが多い。
しかしまあ理屈というよりは直感で書かれていることは確かで、こういうものを読みにくい人には読みにくいだろうなあとは思う。ただ、読んでいていろいろそうだよねえと思うことも多く、そういう言葉の表面で同意できるような内容が事実にこういう根を下ろしているんだということを感じられるから、わりと説得力があると思う。
また、こういうことについて男が書くと相当な部分自慢話が入るのだけど、おそらくは自身が「出版プロデューサー」であるからだろう、そういう読みにくい自慢話的な部分が注意深く排除されているように思う。そして成功者の孤独やむなしさについても、さりげなく釘が刺されていて、そういうところは面白いと思う。
しかしまあ、これを読んで成功できるかと言えば、まあこれを読んで成功できる人ならば読まなくても成功できるんじゃないかなという気はしなくもない。まあそれはこの手の本は皆そうなのだけど、でもこういう本からそういうことのヒントのなにがしかは得られる人には得られるだろうと思う。
まあなんというか、成功者の非情というものにはある種のさわやかさというか稚気というか、ある種憎めないところがあるわけで(いや、自分が酷い目に合う側になったらどう思うかはわからないけど)、そんなところがうまく描写されていると思うし、成功したければやりたいことをスピード感を持ってがんがんやっていくだけなんだということが分かる人にはわかる本なんだと思う。
そういう意味では、自分の中でモラルと成功を天秤にかけてぐじぐじしている人の中には、読んで吹っ切れて成功に向かって邁進する人がいないとは限らないだろうなと思う。
きのう書いた情念というものをポジティブに転換すると、逆に非情というものになるのかもしれないなとは思った。85/232ページ。
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