自我について考えながら/「謎の独立国家ソマリランド」の面白さ
Posted at 13/04/20 PermaLink» Tweet
【自我について考えながら】
二千年紀の社会と思想 (atプラス叢書01) | |
見田宗介・大澤真幸 | |
太田出版 |
自我について考えていて、何か考えるよすがになる本はないかと本棚を見てみたら、見田宗介・大澤真幸『二千年紀の社会と思想』(太田出版、2012)があったのでぱらぱらと読んでみる。すると第3章の対談が「『自我』の自己裂開的な構造」という題で自我のことについて書いてあった。もともと見田先生の授業に興味を持ったのは自我論・関係論に取り組んでいるということもあったので、ぱらぱらと読んでみると見田先生が『自我の起原』という本を書いていて2008年に岩波現代文庫に入ったということが書いてあり、この対談自体が単行本が出た翌年の1993年に行われたものだということがわかったのだが、この中でいわゆる「利己的な遺伝子」論とかについても書かれていることが分かり、ちょっと興味を持った。この対談自体は古いので、見田先生の自我論・関係の論の今後の展開について述べている部分が、その20年後の今どれだけ実現したのか、ちょっと社会学から離れていた私には分からないのだけど、『自我の起原』については一度読んでみたいと思った。自分がいろいろ迷っていることの答えがそこにあるという気はしないけれども、でも学問的に自我というものについて語るとこうなる、ということは読んでみてもいいと思った。そのほか桜井章一の本を何冊か東京に持って行こうと思う。
自我の起原―愛とエゴイズムの動物社会学 (岩波現代文庫) | |
見田宗介 | |
岩波書店 |
【「謎の独立国家ソマリランド」の面白さ】
高野秀行『謎の独立国家ソマリランド』、現在417/509ページ。この本はやはりめっぽう面白い。今週は何冊かマンガ雑誌も出て読んだのだが、何となく満たされないというか不満なところがあったのだけど、この本にずいぶん癒されたような気がする。そういう意味でいえばマンガを読んでいるようなものだとも言える。無法地帯に平然と入って行く20歳そこそこの敏腕女性ジャーナリストとか、魅力的な登場人物が多いということもあるが、何しろ著者の高野自身がカート(チャットとも言うらしい)という依存性薬物(日本では麻薬指定はされているが規制対象にはなってないという)でラリりながら取材を進めるという何というかあけっぴろげな記述で、死に直面しそうな大変な場面がどんどん語られて行く一方、とにかく何かというとカネというソマリ人社会のある意味で異様に冷静な対処の仕方が大変興味深かった。取材予算150万がプントランドと南部ソマリアの旅で羽が生えたように消えていく展開が読んでいてハラハラするが、南部の首都モガディシュで出て来た敏腕女性ジャーナリストの気づかいや、丁々発止でお金の交渉をしてきたソマリランドの首都ハルゲイサの通訳が最後にもう友だちだからお金は出せるだけでいいというところなど、なかなか芸が細かいところを読ませてくれるものだと思った。
ソマリ人社会の中で、おそらくはかなり上層部と思われる人たちとの交流がメインで、それはあまりに危険だから、あるいはそう言う名目で護衛の軍人たちに監禁状態に置かれたためにプントランドや南部ソマリアでは街を自由に取材することができなかったということもあるのだろう、というところがまあ残念と言えば残念だが、しかしソマリ人社会がこんな感じだというだいたいの雰囲気がこれだけリアルに表現されているということはやるなあという感じだ。あまりこの手の本は読まないのだけど、ちょっと認識を新たにしたものがあった。
謎の独立国家ソマリランド | |
高野秀行 | |
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